懐かしい癖に出逢えて
アオヤ
第1話 Dongurimichiko
「翔、病院にお見舞いに行くの?ミッチャンによろしくね。」
「分かったよ母さん!伝えとく。」
俺は青木翔、遊びたい盛りの小4。
これから病院に入院している、お隣さんで小3の斉藤美智子に会いに行く。
「母さんがミッチャンによろしくって言ってたよ。」
「お兄ちゃん、おばさんにありがとうって言っておいて!」
「あぁ〜分かったよ。 じゃ〜今日もやるか? 師匠よろしくおねがいします。」
俺は棋盤と石を台にセットした。
俺とミッチャンは毎回五目並べをして遊んでいた。
遊んでいた?
というと、きこえは良いが対戦成績は130対0でミッチャンに毎回フルボッコにされていた。
「師匠、今日もおてやわらかに。」
ミッチャンは先手黒の時、中心から一つ右斜下にいつも石を置く。
そんな置き方をするのはミッチャンだけなのを後に知る事になる。
「おっ?お兄ちゃん今日は強いじゃない!」
「俺だって、いつまでもヘッポコなままで居るわけないだろ?」
俺も負けまいとして研究している。
そして黒の石の時、四目を正方形に置く攻撃を編みだした。
まるで円を描く様に石を置くから、俺はグルグル攻撃と命名した。
ミッチャンには
「お兄ちゃんって名前つけるセンス無いね。」
とか笑いながら言われた。
その攻撃はミッチャンでも初めてだったみたいで、俺は初めての勝利を手に入れた。
「あ〜 悔しい。お兄ちゃんにまけるなんて。」
俺はミッチャンを見てニヤリとする。
俺は初勝利に奢る事なく、黒石の時はグルグル攻撃で攻め続けた。
そのおかげで黒石で3勝した。
流石に3勝もすると俺は最強と勘違いしはじめた。
しかし、ミッチャンにはそれすら長続きしない。
ミッチャンはウンウンと何か分かったかの様に頷く素振りを見せる。
黒石の時もう一度、グルグル攻撃を使った。
すると、ミッチャンに禁じ手に誘導されあっさり負けた。
そんな手があったのか・・・
俺が師匠と対等になるにはまだまだかかりそうだ。
・・・ところでなんで五目並べか?
それは対局時間が短いから。
一局、5分から10分位で勝負が着く。
病室でやるには短時間が望ましいと言う事だ。
ある日、病室に行くとミッチャンの両親も来ていて、俺に話し始めた。
「今度美智子がね、遠い病院に行く事になったんだ。翔君今までありがとうね。」
「ミッチャンとお別れなんですね?」
俺は何かミッチャンに記念をと思いポケットを探った。
ドングリで作ったコマが出てきた。
「ミッチャンこれ! こんなモノだけど・・・ これ見て俺思い出して・・・」
俺は涙をこらえて精一杯の笑顔をつくった。
また、すぐ会えるさ!
その時はそんな事考えてた。
あれから25年の時間がながれた。
俺はネット対戦の五目並べにハマっている。
ついこの間、俺が対戦していたら・・・
鬼嫁と娘がさっきまでツムツムしていると思ったのに俺の処に来て
「運転手さん!ほら、買い物行くよ!」
「いつまでやってるの?負けろ!負けろ!」
あと5分位なのに・・・
俺を煽る。
俺のレベルは三段でランキングは4000位。
始めた頃は20万だったから・・・
今日も韓国、中国の人?と対戦する。
対戦ボタンを押すと、今回は日本人!
ハンドルネームDongurimichiko 5段
ドングリミチコ?
初手黒石は相手!
初手をセンターでは無くて一つ右斜下に置く。
えっ?美智子師匠?
「今日は絶対に負けねえからな!」
懐かしい癖に出逢えて アオヤ @aoyashou
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