初夏の残照

詩川貴彦

第1話 初夏の残照(南風)

「初夏の残照(南風)」


ちょうど今頃のこと

梅雨の気配が訪れ

初夏の陽射しが陰り始めた頃

海辺のドライブインに立ち寄ったこと

君の笑顔が眩しかったこと


僕が悲しいのは

君と別れたことじゃあない

あの頃が美しすぎたこと

毎日がキラキラと輝いていたこと


ちょうど今頃のこと

薄い雲が広がり

初夏の陽射しを優しく遮った頃

どこまでも続く長い橋を渡ったこと

君と螺旋階段を歩いたこと


僕が悲しいのは

君と会えなくなったことじゃあない

あの頃が幸せ過ぎたこと

もう二度と戻ってこないこと


どんな夏が来ても

君を大切にしようと思ったこと

君のことが

愛しくてたまらなかったこと

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