第6話 家の灯り

「家の灯り」


小さな町の

無人のバスが走る

県道沿いの

家だった


ある日誰もいなくなった

夜になっても帰ってこなかった

家の灯りは消えたままだった

月明かりで瓦が光っていた


家の中は整然としていた

家具も布団も静かに眠っていた

冷蔵庫だけが唸っていた

主の帰りを待っていた


いつものように

引き戸が開いて

静かな足音がして

灯りがついて

テレビの声がして

そんなことを待っていた

朝も昼も待っていた

何時間も何日も何年も何年も待っていた


「今日こそお帰りかい」

「明日こそお帰りだろう」

















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る