前半
○夢ノ家の住宅・霞の部屋(夏/早朝/曇り)
灯りは点いておらず、薄暗い。
机の上や棚の物は整理され、清潔である。
玄関のチャイム音が響くが、起き上がらない。
○同・玄関前(夏/早朝/曇り)
をやめて、その場から出ていく。
鈴木、少し進んで振り返る。
鈴木「(心配そうに)どうして出てこないんだ……」
○同・霞の部屋(夏/夕方/曇り)
霞、俯いた状態でベッドの上に座っている。
霞の母の声「霞、晩ご飯できてるからね……」
霞、ドアの方を
霞「(弱った声で)うん……」
霞、小棚の上にあった写真を取り、見つめる。
霞のM「(悲しそうに)あの頃までは、私が真を引っ張っていたのに……」
○第一中学校・校庭(春/昼/晴れ)(回想)
入学式を終えた新入生と保護者で溢れている。
霞(12)と鈴木(12)、校舎を見上げている。
霞「中学校からは今までより難しいんだって」
鈴木「それが何なのさ……」
霞、鈴木の方を見て笑顔で、
霞「だから私が勉強、助けてあげるよ」
鈴木「(怒って)はぁ!」
霞「なんでも聞いてね」
鈴木、拳を震わせながら、
鈴木「(悔しそうに)くそぉ、いつか必ず追い抜くからな!」
霞、鈴木の肩を小突き、嬉しそうな表情で、
霞「出来るものならね」
霞の母の声「二人とも!」
霞と鈴木、声がした方に振り向く。
霞の母、カメラを構えて、
霞の母「(明るい声で)撮るわよ」
霞、鈴木の肩を掴んでピースをする。
鈴木、恥ずかしそうな顔をする。
霞の母の声「はい、チーズ」
霞の母、霞と鈴木の写真を撮る。
霞のN「でも、高校受験を切っ掛けに私は真に追い抜かれ……」
○輿水高等学校・昇降口前(春/昼/曇り)(回想)
合格者の番号が載った掲示板に集まる多くの
受験生たち。
鈴木(14)「(嬉しそうに)よっしゃぁ!」
霞のN「彼は特進クラスに合格したが……」
霞(15)、自分の番号が記されている箇所を暗
い顔で見つめている。
霞のN「私は無理だった……」
霞、拳を震わせながら、
霞「(悔しそうに)どうして……」
鈴木「(明るく)霞!」
鈴木、霞の背後から近寄り、肩に手を軽く乗
せるが、
霞、鈴木の手をはらう。
鈴木「霞……?」
鈴木、掲示板を見て、気まずそうな顔をする。
鈴木「俺、先に帰ってるわ……」
鈴木、その場を立ち去る。
霞、呆然と立ち続けている。
○同・廊下(春/夕方/晴れ)(回想)
下校をする生徒たちが歩いている。
鈴木、目の前から歩いてくる霞を見て、
鈴木「(明るく)霞!久々に一緒に帰ろ……」
霞、鈴木を避けて歩き続ける。
鈴木、霞を呆然と見つめる。
鈴木「……トイレかな?」
男子生徒の声「鈴木!コンビニ寄らね?」
鈴木、声がした方に振り向き、
鈴木「わかった!」
○同・昇降口前(春/夕方/晴れ)(回想)
下校中の生徒がまばらにいる。
霞、暗い顔で歩いている。
高田の声「夢ノさんと鈴木君ってさ、前はお似合いだと思って
たけどさ……最近ダメっぽそうだよね」
霞、後ろから聞こえてきた声に気付き、立ち
止まる。
高田、浅井と一緒に霞の後ろを歩いている。
浅井「そ、そうかな……」
高田「そうだよ、だって夢ノさん今じゃ完全にお荷物だもん」
高田と浅井、俯いている霞の横を通り過ぎる。
浅井「そ、そんな言い方しなくて……あっ」
浅井、立ち止まる。
高田「浅井ちゃんどうした……の……」
高田、振り向いて固まる。
高田と浅井、霞を見て慌てる。
高田「(震えながら)ゆ、夢ノさん!これは……」
霞の声「(悲しそうに)わかってるよ……」
霞、勢いよくその場を走り去る。
高田と浅井、慌てた様子で立ち尽くす。
霞、涙を流しながら走り続ける。
○夢ノ家の住宅・霞の部屋(夏/夜)
霞、窓際に立ち、空を見つめている。
高田のN「今じゃ完全にお荷物だもん……」
霞、俯いて溜息を吐く。
霞「(小声で)わかってるよ……」
霞、拳を強く握りながら、
霞「このままじゃ駄目だって、わかってるけど……」
霞、その場にしゃがんで泣く。
前半 終
後半は5月22日更新予定
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