奇跡

明日は明後日の方向からやってきた。

「このまま私は資源リサイクルセンターで役割を終えてたかもしれません」

彼を救ったのはやはり未来人だ。新型感染症は適切な除菌や社会距離を保てば危険性が減ることが分かり、彼の出番がななめ上に開けた。

「まず私は占いの達人です。それで喫緊の課題であるPCR検査機器の不足を補ったのです。私たちが占えば診断するまでもないですからね。感染経路も隠せませんよ。そして依頼人がどうふるまえばよいかの指針にもなれるのですからね」

真実の口の横にはアルコールボトルが置かれ、密を避けるよう床にテープが張られている。

「マンホールの蓋だったってさ」

心無い客が陰口を漏らすと同行者が諫めた。

「嘘をついたら手が噛んだままになるんだって」

それを聞いた後列の客が青ざめた。「ゆ、許してくれ。俺は自粛期間中に旅行したんだ」

「げぇっ!感染者かよ!!」

待ち行列がどよめく。しかし、機械をなじった客が提案した。「まず、この人から診て貰えばいいじゃん」

マスク姿の人々がどうぞどうぞと順番を譲った。


結果は…。


陰性だった…同時にこの男が余命いくばくもない両親に謝罪と朗報を届けるために禁を犯した事実が明かされた。

実家と疎遠だった妻が身ごもったのだ。彼はプリントアウトを手に誓った。今後も感染経路になる恐れはないのなら、責任を持ってその未来を守り続けようと。


真実の口は増産体制が整いつつある。

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