炎上(も)える宇宙

焚書という言葉はあるがラジオ焼きという語句はあまり聞かない。ちなみに本物は粉もんで美味しい。そのパチモンの方が燃え上がった。しかも生放送中にだ。何をトチ狂ったか運営がポイントを支給すると宣言したのだ。もちろん、タダでは得られない。期間中に新作を発表した底辺に手厚く付与するという。これによって日の当たらない作家がランキング上位に躍り出る。マイナー作家に機会とロケットスタートの快感を与えたいという運営からの心づくしだった。


「ふ・ざ・け・る・な~!」

銀座、いや銀河バーストを起こしたのは代美だ。姉を陰から支えつつ影でこっそり人気を博していた。実力で手に入れた彼女にとって姉に対する優遇は耐え難い措置だった。コツコツと更新を絶やさない事で新着情報の常連となり、読者の目に触れてきた。順風満帆の時もあれば連載開始当初からのブックマーク登録を一気に失う日もある。人間は目に見える損失に痛痒を感じる生き物だ。実際に大脳の痛覚中枢が刺激される。いわな彼女にとって産みの苦しみである。それだけに作品が愛おしい。その手塩にかけて育てた子をドーピング作品が抜いていく。代美はフォロワーに炎上を呼び掛けた。呼びかけは他のSNSを横断して活字銀座に波及した。公式ラジオのコメント欄が焼け落ちてしまった。予想外の反発に運営は慌てて火消しに走る。だが火に油を注ぐ事態を招いた。

「き、期間限定ポイントはイベント期間だけ有効です」

これには当の底辺呼ばわりされた作家が噛みついた。

「ザアッ!」

逃げるように番組が終了し、SNSの公式アカウントもしくはまとめサイトに戦場が移った。


星かったものはこれじゃない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る