鳥と魔女と中二病な私たち
村崎 紫
第1話
中二病及び厨二病とは、「中学2年生頃の思春期に見られる、背伸びしがちな言動」を自虐する語。転じて、思春期にありがちな自己愛に満ちた空想や思考などを揶揄したネットスラング。
(Wikipediaより一部抜粋)
私は知ってしまった、この世に空想伝記のような魔訶不思議があることを。そしてその不可思議領域に、「私の」「私たち」の進む道が絡まっているという事を。
全ては、あの鳥がーーー。
薄幕のカーテンが揺れる。時刻は21時を回り僅かに放った窓から心地よい夜の息が入り込んで来る。日時にして3月31日、世間の認識では入学や進級、大抵の社会人で有れば入社の前日だと答える人が大半を占めるだろう。
「一応こんなところか、入学時の所持品なんて大して必要なものもないだろ。」
あらかじめ渡された通学鞄にしおりや筆記具を詰め、あらかじめ採寸された制服を部屋の壁に立てかける。
ハンガーから下がるその白色に初々しさを覚えてしまうもまあ高校入学なのだからそれはしょうがないかと自分を納得させる。寝る準備でもするかと窓に手をかけたその時、ベランダの手すりに「何か」が立っていた。
「ちょっ……て、なんだ鳥か。人だったら最悪だったな。」
姿は烏でも無ければ夜行性の梟や木菟とはかけ離れている。どちらかと言えば、鷹や鳶といった猛禽だ。その双眸は、まっすぐ私を捉えて離そうとしない。私は気付けば前に進みその鷹だか鳶だかに手を伸ばしていた。やがて二足は私の腕に移る、爪は鋭いはずなのだが痛みは何一つないどころか一切の重みすら感じられなかった。
『閉じよ。』
腕にしがみ付く猛禽がそう言った気がした。不思議と違和感を感じず、言われるがまま眼を閉じた。
「っ……!?」
瞬き程度の目蓋の開閉を経て、私は自宅のベランダから見知らぬ平原に立っていた。
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