星々に選ばれた人間達~やられっぱなしはむかつくやり返すのだ~

MIZAWA

第1話 僕の名前はヒロシロ


 僕は小学5年生になった。自分が周りと何かが違うと感じめた時でもある。

 周りからは中二病なんて呼ばれたけど、特に僕が特殊能力とか超能力に目覚めた訳ではない。

 

 そこはかとなく何かが違う誰かが死ぬと感じるのだ。

 僕は子供の頃からサッカーばかりしてきた。運動神経だけは抜群によかった。

 父親が趣味でサッカー選手をやっていて、素晴らしいくらいサッカーが上手であった。


 父親からサッカーを学ぶ事が多かったし、僕は単純だったようでサッカーをやっていればなんとかなるなんて思っていた。


 だが小学5年生の時に教室に入った瞬間、クラスメイトをちらほらと見て、次に女性の教師を見て。


「あ、なんかやばい」


 僕はそう感じたんだ。

 誰かに訴えかける事なんてできない。 

 どこに中二病の小学生の話を信じてくれる?


 僕はちょっと変わった人生を歩み始めた。

 人それぞれだしみんな変わっているのだろうけど。


 入学式からしばらくした時に色々と経験した。

 友人にカードを盗まれ取り返し言いふらし僕が悪者になった。

 行動的な友達と協力したのに何食わぬ顔をして知らぬ存ぜぬ。


 幽霊を見るようになった。母親の頭の両側に真っ黒い女の子が現れたり、空間がずれたり、足がにょきっと壁の端からでたり。パニックになって逃げまとった。


 母親に殺されそうになった。こんな状態で小学校にも行きたくなかった。

 大勢の人に裏切られたので誰も信じられなくなり、引きこもり生活が始まった。

 女性教師が何度も電話をしてきてうるさかった。


 自殺未遂をした。自宅はマンションなので飛び降り自殺しようとしたら、母親はどうぞどうぞと言い、父親は必至で止めてくれた。あげくのはてには祖母が警察を呼んだ。


 クラスメイトの障がいを持つクラスメイトが殺された。何も感じなかった。

 しいていえば何かしたら死ななかったのではないか、僕が死ねば色々と運命が変わってその子は助かったのではないかという罪悪感を感じた。


 外国で星の教団がテロ行為を始めた。 

 その頃から空にはびっしりと星々が輝いていた。

 天文学者たちはこれを異常事態と宣言した。

 その星々は実態がないそうだ。


 その頃から異世界と呼ばれる場所から何かエネルギーが漏れてきていて、それを浴びて生きた人間には特殊な力が宿るとか宿らないとか、中二病にはとてもうれしい話だ。


 僕は一人ぼっちになってもただただサッカーをしたかった。

 僕は恰好をつけるなと言われて、いつもジャージばかりを着ている。

 逆になんで君はジャージばかりを着るのと聞かれる事がよくあった。

 そういう時は、動きやすいからだよ、僕サッカーをするんだよ、そう言っていた。


 僕にはよく家に遊びにくる友達が大勢いた。

 異常と言えるくらいの友達だった。

 それを本当の友達と言えたらだ。

 彼らは僕の家に来ると沢山ゲームをして遊んでいく。

 最初は一生に遊べて嬉しかった。


 しかし知らない人を連れ込むようになり、もはやゲーム目当てとなってきた。

 ゲームのソフトをもってきて僕にはやらせなかったり。


 僕は友達と距離を置くようになっていく。

 僕はただテレビゲームを一人でしたかった。


 僕はジュニアクラブのサッカーを辞めた。

 サッカーが全てだったけど、何もかも自信がなくなった。

 僕は幽霊に悩まされる事になる。

 自宅には幽霊がいるから祖母の家に避難したり、小学校には行けなくなり、友達もいなくなり、ゲームをずっとしてむなしくなり、泣き叫び物を破壊する。

 

 それも僕にとって大事なものを破壊する。

 母方の祖父が物を大事にせよとビンタで何度も殴られた。

 それでも僕は物を破壊していった。


 僕は心の中でのたうつ蛇のような憎悪にかられ、両腕を搔きむしった。

 両腕は血まみれになり、女性教師はそれを見てあたしをひっかきなさいと言った。


 僕は精神科に連れていかれた。

 小学生なので心の病だよと言われた。

 入院してみないかともいわれたが幽霊がいっぱいいそうでやめた。


 自宅で薬を飲む習慣がついたのだが、小学生には薬は強くて、動けなくなった。

 周りを幽霊が動き回るという恐ろしい状態になり逃げる事も出来ない。


 そうして僕は何もかも失って中学生になった。

 

 一人だけまだ僕を友達だと思ってくれる人がいた。

 彼はマンションまで中学校に行こうと入学式に迎えに来てくれた。

 それでも行けなかった。


 そう、僕は中学生になったのだ。

 

 それでも僕は中学校に行くことはないのだろう。

 その頃になるとテレビでニュースを見るようになってきた。

 戦争で死ぬ人々、餓えて死ぬ人々、病気で死ぬ人々、虐めで死ぬ人々、虐待で死ぬ子供達、憎悪と怒りが溢れかえってくる。


 僕の心はビルのような積み木が崩壊していくように音を立てて崩れた。

 

 こんな腐った世界、こんな腐った奴ら全員一人残らず叩きのめしてやる。

 その為には大勢の人間を殺してやる。


 そういう思考になっていった頃から頭の中では100人の声が響きだした。

 僕は彼らに支配された。


 彼等にはこの時名前はなかった。

 

 僕はどうやったら全ての人々がハッピーになれる方法はないのか。悪い奴にだって事情がある。よい奴にだって事情もある。お互いを理解するにはどうしたらいいのだろうか。


 僕は支配者になる為に考え出した。

 日常は豊富なトリッキーと豊富なカラフルに彩られている。

 僕は全てを助けたい。僕は全てを破壊したい。

 僕は支配者になるのだ。


 僕は一人のヒロシロとして立ち上がり、でも力がなかった。


 その日、中学2年生になった。

 相変わらず教室に行くことはない、そこには僕の知らないクラスメイト達が大勢いるだけだ。


 彼らを信じる事は出来ない。

 僕は子供が楽しいと思える事を楽しめなくなている。

 ゲームをやってるとき、遊園地に行ったとき、旅行に行ったとき、海に行ったとき。

 

 僕は楽しい事をしてはいけないと声が語る。

 苦しい事をすれと語りかけられる。

 いたるところで不幸は生まれる。

 僕だけが幸福になってはいけない。

 

 そんなことばかり、おかしな考え方を持つようになった。


 僕は中学2年生だけど、山林先生と出会った。

 とても背丈が小さくて、元気な体育系の先生だった。理科の先生ではあったけど、歴史の先生に本当はなりたかったそうだ。


「ヒロシロ君は人は人を殺すべきだと思うんだよね」

「はい、僕は人が人を殺すことはとても大事な社会だと思います」


「そっかーそれも一つの考え方だよね、逆に人が人を殺さず話し合いをするのも手じゃない?」

「ずるがしこい人間には時として暴力が必要です」


「だけどさ、ずるがしこい人間にずるがしこい方法で勝てばいいんだよ」

「僕はそんなに頭がよくないです」


「ならさ、仲間を探すんだ。君には力がないが何か力がある。仲間に賢い奴とかいろいろな奴を加えてチームを作ればいいじゃないか」

「それは盲点でした」


 そうやって毎日のように僕は山林先生と個別の別教室で話し合いをしたりいていた。


 こんな中二みたいな発言をする僕の話を聞いてくれるだけで僕はとても幸せだったのかもしれない。不思議とこういう幸せは罪悪感を感じる事はなかった。


 中学校の校舎から排出される大勢の少年少女達。

 僕は屋上からその光景を見ている。

 アリにしては小さくはないのでバッタにしよう。

 彼らは家に戻るために帰宅するのだ。


 僕は先ほど山林先生と別教室で別れると、帰宅するのではなくて屋上に向かった。

 この中学は屋上には出入り自由とされている。


 ただひたすらあたりを見回す。

 小学生の頃にガキだった少年少女達は大きくなっている。 

 名前は忘れたがかつて家にゲームだけをやりに来た元友達がいる。


 名前なんて覚えていない。

 覚える必要がないのえはなく、覚える事が出来ない。


 人間達は皆肉の塊なのだから。


 空を見上げた。

 

「そろそろ夕方か、夜までには帰らないとな」


 僕は同級生たちを見下ろして、変な優越感につかっているわけではなくて、僕の瞳は捉えていた。


 リュックを沢山持たされて歩かされている同級生、悪口を言われて泣いている同級生。水をかけられている同級生。


 そこにはいじめがはびこっていた。


「僕には力がない、だから解決できない、力を手に入れて解決してみせる」


 そうなんとなく呟いていた。


 空が黒青色に染まるころ、ほのかな赤茶色が真横から差し込んできて。 

 無数の光の色をした星々が輝き。

 それは天文学者が異常と言うほどのありえない数の星々。

 その1個の星がこちらに向かって流れてくる。

 

 きっと真横に通り過ぎるのだと思ったら。

 星は僕の頭めがけて墜落した。


 爆風があたりを支配し、僕の脳みそが光で満たされて。

 光の向こうには一つの異世界があって。

 

 異世界は森や山や平原や海や川に恵まれて、大勢の動物や種族が住んでいて。

 文明が出来れば城や国があって、それは戦国時代のものとは違っていて。

 それはファンタジーの異世界そのものであって。


 無数の光が収束していくと。体が動いた。

 意識が暗闇の中からほのかな光を掴んだ。


 何度も何度も胸を押されている。

 世界がゆがんでいて、救急隊員の人がどうやら僕に心臓マッサージをしているようだ。救急車の中だという事は分かるのだが。当たり中から救急車のサイレンが鳴っている。


 すごく体が敏感に反応する。

 すべてがはっきりとゆっくりに見える。


「何が起きてるんだ。空から落ちた星が大勢の人間に墜落しているだと、これはテロなのか」

「どうやら心臓がもちなおしました。病院に運びますよ、彼らに何が起きているかわかりせんから隔離だそうです」


「そ、そうか、こいつまだ若いんだよな」

「親後さんには山林先生という方が連絡してくれています」


 僕の体は動かない。

 病院に隔離される。

 僕はそれが恐ろしく感じていた。

 すべての事を把握しているのに、ちゃんと理解できない。


 だけど体の中をめぐる麻酔液に反応する。

 自分の体ではないようだ。


 僕はようやく気付く。


「星に選ばれたのだ」


 僕はそう叫んで意識を失った。


 

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