辛く、苦しい好転の兆し

 2020年5月下旬。

 息子はKにより顔面の目の周りに大きな痣を作る暴力を受けました。

 これがきっかけで、辛く、苦しいけれど私たち母子にとって好転期を迎えます。


 この頃はコロナの影響により、学校が休校していましたが再開された頃です。

 2020年6月5日、息子は痣を残したまま学校へ行きました。私はその時、Kの家に呼び出されておりました。そしてその日の夕方、児童相談所から連絡が入ります。


「お宅のお子さんをこちらで保護しました。お話をお聞きしたいので一度こちらに来て頂けますか?」


 突然の連絡に私は顔面蒼白です。

 Kにその事を話すと、「顔面の痣は練習中気にぶつかって出来たものだと言うように」などのレクチャーを私に伝えてきます。

 私は約束の時間に児童相談所に出向き、レクチャーされた通りの話をしました。そして児童相談所の次は警察にも呼び出され、事情聴取を受け、写真を撮られ、上申書を書き、実証見分などの立ち合いをしました。


 今でも覚えています。別れ際に警察の方が仰っていた言葉。


「ご協力ありがとうございました。もし何かあればいつでもご連絡くださいね。まぁ、本当に何もなければいいんですけどね……」


 最後の含み言葉に私が疑われているのだと確信しました。

 

 児童相談所に息子が連れていかれ、一週間に一度の面談。その前後には必ずやはりKの家に呼び出されこう言えばいいなどのレクチャーをされ、終わった後も家に立ち寄ってどんな話をしたのかを説明させられました。


 そんな毎日が一か月ほど続いたでしょうか。娘だけじゃなく息子と離れ離れになってしまって、一人になった私はどうしたらいいのか路頭に迷ってしまったため、なおの事Kを頼るようになったんです。


 そしてまた警察の方から連絡が入りました。


「その後どうですか? その後のお話を伺いたいので来週の月曜日にご自宅に伺いますのでよろしくお願いします」


 私はその事もKに伝えると、「何の用で自宅に来るのか聞いてこい」と指示を出します。私は彼の指示に従い警察に出向いて話を聞きましたが、「あの後の様子を単純に知りたいだけですよ」と言われただけで帰され、その話もKにしました。


「俺は何もしていないよな? あいつが勝手に転んで痣を作っただけなんだよ。俺は何もしてないんだよな?」

「頼むから、突然連絡が取れなくなるようなことだけはしてくれるなよ」


 来る日も来る日も同じように同じことを再三話していたKは、息子が児童相談所に行って戻らない事と警察が動いていることに焦っていたんでしょうね。


 そして約束の月曜日。

 約束の時間に家にいた私は、現れた警察官たちに恐怖を感じました。

 刑事2名を含む、総勢8名ほどのガサ入れです。


 裁判所からの差し押さえ令状を読み上げられ、私の通信機器の一切を没収。

 刑事2名を前に私は話をすることになりました。しかも彼らは殺人課でもある捜査一課から来ていました。


 再三「俺の事は良い人だと言え」と言われていた私は、その時はそう刑事さんに伝え続けました。でも、話がまとまらないため、そのまま警察の取調室に行くことになりました。


「もういい加減本当のこと言おうよ。俺たちだってお母さんが犯人だとは思ってないよ? でもさ、このままじゃ息子くん可哀想でしょ? ずっと児童相談所にいることになるんだよ?」

「大丈夫。何があっても警察がお母さんの事も息子くんの事も絶対守るから。そこは安心して?」


 私はもう限界でした。Kが恨みを持って攻撃をしてくることがとても恐ろしくて堪らなかったのに、それ以上にもう何もかもが限界だったんです。

 息子の為にも私がきちんと話さなければいけないと思いましたし、もう嘘を吐きたくなかった。

 私は堪らなくなって刑事さんの目の前で号泣し、事の真相の全てを打ち明けました。


 それからは自宅に帰る事を止められ、姉の家に身を寄せることになりました。相手が恨みをもって私を襲ってくる可能性があったからです。


 相手が逮捕されるまでの間は外出を控えるよう言われ、自宅へ物を取りに帰る時は刑事さんに連絡をして、車で送り迎えをしてもらい刑事さんと共に行動することになりました。


 余談ですが、刑事さんたち警察官が乗る車の後部座席は内側からドアが開かない仕様になっているので、乗る時も降りる時も外から開けてもらわなければいけません。


 逮捕状を取るために、私もほぼ連日警察署に行って調書を取ります。上申書も改めて書きました。

 相手を捕まえるための調書だと分かっていても、かなり精神的にくるものです。

 来る日来る日も、細かいところまで根掘り葉掘り聞き取りが行われ、現場再現なども行われます。それらの私の発言を元に刑事さんは書類を作成していきます。


 一通りまとまった調書は検察庁の検事さんの元へ届けられ、逮捕状の有無の確認を取ることになります。


 そして来る2020年7月。ついにKに逮捕状が出され、彼は御用となったのです。


 今回のこの件は、一部テレビのニュースに報道され、ネットニュースにも上がりました。そして相手は然り、私に対する沢山の誹謗中傷も目の当たりにしました。が、私にはそれら誹謗中傷は目には止まっても、気に病んだり落ち込んだりする要因にはなりませんでした。

 

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