操る人、操られる人

洗脳と支配

　私は友人宅に子供二人と避難しました。

　自分ならまだしも、娘が狙われていると聞くととても不安になりました。

　一泊泊まらせてもらい、その翌日には「娘は連れ回さない方がいい。どこで狙ってるか分からない。だからうちにいた方がいい。うちなら守れるから」と言うので、渋々私は下の息子と兄の家に事情を説明して移りました。

　兄の家に身を寄せさせてもらっている間に、私は新しい居住先と仕事を見つけなくてはと焦っていました。貯金もなく、娘の学資保険は旦那に持って行かれました。

　最初、学資保険の保証書は私が持っていたんです。崩したくはなかったけれど、引っ越し資金にする為に解約しようと思っていたから。でもそれを途中で持って行かれたのは、今思うと友人の指示により旦那に持たせて解約をさせたんだと思います。

　赤ちゃんの頃から積み立てていたので結構な金額だったんですが、根こそぎ持って行かれました。

　手持ち金が無かった私は、養育費も何も出さないと言っていた旦那に（これも友人が言っていたんです）、引っ越し資金ぐらいは何とかしてくれるように申し出たところ、またしても友人から「旦那から」と言う話で引っ越し資金を現金で手渡されました。

　次に、引っ越し先を友人が紹介してくれ、私は急ぎそこに決めて息子とまず先に入居。子供の転校手続きなども済ませました。

　娘を受け入れる体制も万全にしていたのですが、なぜか友人は娘を私に戻してくれず、何だかんだと理由を付けしまいには「子供の育児を放棄している」と、意味の分からない説教を食らう羽目になりました。

　気付いた方もおられるのではないでしょうか。

　娘は人質だったんです。娘をだしにしていわれのない説教を頭ごなしにされ、有無をも言わせないよう捻じ伏せる。

　最初は何でそんなことまで言われなくてはいけないのかと憤りを感じていましたが、口答えをしようものなら恐ろしい剣幕と圧力で無理やり押さえつけ、身動きを取れないようこちらの弱みをチラつかせて来るようになりました。

　かと思えば突然優しく振舞ったり、気を利かせて来るのです。

　完全に騙されていました。

　彼は頭の回転が良く、口も上手く、飴と鞭を使い分け、力で捻じ伏せるような人間だったんです。つまり、我々夫婦は彼の良いカモだったわけなんですよね。

　旦那も私と性格が似ていたので、言わなくてもいいような情報までどんどん引き出されていたんでしょう。だから守れたはずのものまで守れなかったんだと、今頃気付きました。遅すぎますね。

　後々で知った事ですが、解約した学資保険のお金の大半はロレックスの時計に変わっており、それは最終的に友人のものになりました。

　娘をどうしても私の傍に置きたかったのですが、「娘はお前の所に行きたくないと言っているから、旦那の実家に行かせた」と言われ、強引に引き離されてしまいました。その間、会う事まで禁じられていたんです。

　そうしている間にもあれこれと最もらしい嘘を並べる友人に振り回されました。

　娘が自殺未遂を図った。

　娘が酷い喘息になって死にかけた。

　どれもこれも彼の嘘で私を強請っていたんだと思います。

　そうしている間にも旦那は毎日毎日、昼夜関係なく彼に呼び出され仕事のお金を巻き上げられていたと、これも後々で聞きました。

　こうして娘とは理不尽に引き離されての生活が続くことになってしばらく経った頃です。確か、2019年の12月。ふと旦那が一本のラインを彼に送っていました。

「行けません」

　と一言だけ打って逃げ出したんです。

　旦那は今まで散々強請られてきたせいもあり、そうやって彼から身を守ったんだろうと思います。同時に、娘も守ってくれたんだと思います。

　突然の事に焦った友人は私を急遽呼び出し、旦那に何かあったのかもしれないから様子を見に行ってこいと言いだしました。

　この時から、彼の的は私にシフトしたんです。