鳴らない炭酸水。

めんたいくりいむ

第1話 開栓


いつまでも引きずっていては前に進めない。


やっとそう思えてきた矢先に近づいてきたのが君だった。


数回のごはんと、度々する電話と、1回の水族館。


私の世界が鮮やかな色彩に染まったのはいつぶりだったか。


目の前に広がるサンゴ礁の水槽で、カラフルな魚たちが悠々と泳いでいる様子を見ながら、この子たちにも負けてない、なんて思う。


なんならきらきら度は私の中のときめきの勝ちだ。



水族館を出ると、目の前の港に日が沈んでいく様子が広がっていた。


外に出てもまだ、水面の輝きがきらきらを途絶えさせない。


半歩後ろにいる君が、振り向いた私に柔らかな笑顔を向ける。


その瞬間、どちらからだったか、口を開いたのだ。



『「まだ帰りたくないね」』

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