70億の赤い風船

私は死んでいた

全てを嫌い

世界を恨み

心に蓋をした


輝く言葉達は

耳に入る余地もなく

午後の陽光に沈んで

口を開けて呆けていた


恋人たちを呪い

詩人たちを呪い

笑う人たちを呪い

死を礼賛した


そうして全てを

この身ごと投げ捨てようとした

その時あなたは手を伸ばして

私の手をつかんだ


よほど離そうかと思った

よほど逃れようかと思った

私は震えながら

あなたの顔を正面に捉えた


あなたはただ

屈託もなく笑っていた

私は怯えながら

手の温もりを感じていた


大地に紐を繋がれて

風船たちは世に留められる

どこにも繋がれてないものは

そのまま空へと去ってしまう

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