第三話 恵方巻き

 湊音が台所で恵方巻きを作っていた。結婚当初は李仁が作っていたが、ここ数年は湊音も作っている。

「あらー美味しそうー」

 李仁はイワシをグリルで焼くが匂いがあまり好きじゃないようだ。

「イワシの匂いが嫌なら焼かなきゃいいのに」

「鬼さん退治するには必要なのよ。ミナくんに変な鬼さんがこん棒で突っつかないようにって」

 湊音はギクっとした。李仁の目はジトットしてる。もうしばらくはシバとはそういう関係ではないが、冷や汗が出る。

「……やめろよ、こん棒で突っつかれたら悶絶」

 湊音が李仁の下ネタを下ネタ返し。こういうのもだいぶ慣れてきているし、自分の気持ちの後ろめたさもあったりもする。


「なぁに、たまにミナくんのこん棒を突っ込まれている私の身にもなりなさいよ」

「そんなにないだろ、せめてこの恵方巻きくらい」

 と湊音は自分が握った指差す。李仁は笑いながら跪く。

「自分でそんなに太いって言うのって相当自信あるよね」

「……おい、よせって!」

 湊音はスウェットを履いていたためすぐに下着と共に下ろされて大きくなった自分のモノが出てしまった。いつの間にか大きくなっていたことに湊音は赤面する。


「今年の方角はどっちだっけぇ……んっ」

「ほ、北北っ西……っ!!! 大きなお口でっ、李仁ぉおおお」

「んふっ……」

「ああああっ、まだ途中なんだよぉっ」

「ふぅうううんっ」

「ああああああっ」

「ふふふ」

「あああっ、もうダメって。舐めずに頬張って!」

「北北西向いて、いただきまぁす」

「あああっ!! あっ……」


 






 その後、湊音が作った恵方巻きを半分こに切って二人でちゃんと北北西を向いて食べた。

「ミナくんのはここまで大きくないわね」

「よくさっき僕の咥えた口で食べるよな」

「んふっ」

 艶かしい表情で恵方巻きを口にする李仁。

「伝統文化を卑猥に扱うなよ……」

「はぁい……そうだ、ミナくんは恵方巻き上手くできなかった時にロールケーキ作ってくれたよね」

 もともと湊音は料理ができなかったがお菓子作りは好きだった。


「作れっていうの?」

「んー、いいや」

「なに、作れって言ってるようなもんじゃん」

 李仁はにやにや笑う。

「さっきたくさんクリームみたいの飲み込んだからいいや」

「いい加減にしなさい、李仁」

「はぁい……あ、ミナくん」

 李仁は湊音を見つめる。


「恵方巻き食べてる時は黙ってなきゃダメよ」

「あ……」

「ふふふ」

「無理無理」


 その夜はベッドの上でまた互いの恵方巻きのようなものを咥え合ったのは言うまでもない……。

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