第二話 正月2

 届いた年賀状を机に広げる李仁。

「相変わらずミナくんのところには生徒さんからの年賀状たくさんくるわねぇ」

「李仁も取引先やバーの時のお客さんとか……」

 何枚かの家族写真の年賀状を見つけて李仁に見せつける湊音。


「元カレさんが家族写真を載せて年賀状毎年送りつけるなんてすごいいい度胸ね」

 李仁はふふふと笑って彼も数枚の家族写真の載った年賀状を差し出す。

 そこには湊音の元妻の美帆子、元カノの明里、一度関係を持った彩子それぞれの家族の年賀状。

「ミナくんもじゃない」

「……知るかっ。美帆子さんのは息子とお世話になってる喫茶店のマスターからの年賀状も兼ねてるし、明里はジムの先生だし、彩子さんは元部下だし、彼女の夫が僕の部下の高橋……」

 言い訳をする湊音の頭を李仁がぽんぽん叩く。


「はいはい……でもほんとみんな家族ができてしあわせそうね。もちろん私たちも幸せ」

「そうだね」

 争うことは無意味だと湊音は年賀状を整頓し始めた。


「でも年々数は減ってはいるわね。歳も歳だし祖父母だけでなくて親世代が亡くなってる人もいるし、友達自身が亡くなって家族から連絡も何枚か来てたしね」

「そうだな……今年はなかったけど生徒で亡くなった子もいるけどさ……親さんが丁寧に毎年年賀状書いて送ってくれるところもあるんだよね」

 と、一枚のはがきを見つけた。湊音が受け取った生徒の一人。ある程度覚えているがその生徒のことは覚えている。社会人になって働き始めたが人間関係が原因で自殺して亡くなったという。毎年写真をつけて母親が年賀状を送ってくれるのだ。


 それを見るたびに湊音はその生徒との出来事を思い出す。


「ラインとかメールの年賀状もあるけど一年に一回こうやって紙での年賀状も大事だな」

「……そうね……ってなんか年賀状のCMみたい」

「だな……でもさぁ」

「うん」


「「年賀状の返信」」

 二人顔を合わせて年賀状を仕分ける。

「あとそれが終わったら年賀状くじの番号仕分けもしてー……」

「葉書の枚数数えて初詣行くついでに買わないとね」

 と、のんびりしてる暇がなさそうな二人であった。

「ああー、年越しセックスしてる場合じゃなかった」

「んもぉ、そんなこと言うなんてまだしたいの? いやぁん……ミナくん」

「ち、ちがう!」


 これは毎年のことではあるがそれが二人の日常であるのだ。

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