第13話 同じことは巡る?
李仁は完全に休みの日。仕事は持ち帰らなかったのだ。書店員とバーテンダーを掛け持ちしていた独身時代は帰り遅くても仕事は持ち帰るのは当たり前だったし、書店員だった頃はディスプレイレイアウトや製作が好きでなおかつ手先も器用でスピーディー。
同時進行でバーの創作料理やメニューの計画など常に何かを考え、そして恋愛を楽しんでいた。
しかしそんな彼も40も過ぎると無理なんだな、と悟ったのか完全にオフの日を週に一回は作ろうと努力しているようである。
湊音が今のソファーで映画を見ているとそこに寝起きの李仁はやってくる。
「おはよ」
「おはよ、ちゃんと寝れたかな」
「うむ。て、10時か」
「うん、ご飯作ろうか?」
「コーヒー飲む……ミナくんのランチの時にご飯食べるわ」
「じゃあ僕コーヒー淹れるから」
湊音が映画を止めて立ち上がろうとすると李仁は
「ありがとう、わたしがやるから座ってて」
と湊音のおでこにキス。ゆっくりと台所に行きコーヒーメーカーのスイッチを押す。
コーヒーがカップに出るまでのたった数秒。
こうやってまったり生活できるのはあと何回なんだろう、湊音もまた元気を取り戻して仕事を始めたら、また自分自身の仕事が忙しくなったらこんなにまったり過ごせるのだろうか。
そもそもまだ片付いてはいない湊音とシバとの関係。なんかの拍子で自分でなくて他の男の元に行ってしまうのではないかと。
現に李仁のいない時に大輝の家に……やましい理由ではないが行っていた事実もあったわけで。
ぽとん。
コーヒーが淹れ終わったと同時に李仁はハッとした。
「何考えてるんだか……」
コーヒーを飲む。ブラックが好みな李仁。
「ミナくんも飲む?」
「うん」
「淹れるから座ってて」
「ありがとう」
李仁は湊音の好みのカフェラテのカートリッジを押してボタンを押した。
またその数秒。
李仁は自分の過去の恋愛を思い返した。高校卒業してから上京して派手に遊び歩き、湊音と付き合っても元彼と会ったり男遊びを辞めなかったこと、だが湊音に嫌われたくないと首元に湊音の名前をタトゥー入れたり。だけどそれでも遊んで湊音を不安にさせたり。もう何年も前の話だが李仁は頭をかいた。と、同時に目の前のカップにカフェラテが注がれた。
「自分も人のこと言えないじゃない……」
李仁はカップを持って湊音のもとに行く。
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