第7話 また雨の日
また大雨。昨晩の李仁との行為を思い出しながらもソファーに横たわる。
今朝は普通に出勤していった李仁だが、特になにも変わらず、出勤前のキスも軽く、体調には気をつけてねと言われただけであった。
横たわりながらもシバのメールを見る。なんで電話に出てくれずにメールだけのやりとりなんだろうか、湊音は不思議に思いながらも返信をする。
ソファーに寝そべってる今の自撮りをメールに添えた。
『今日も大雨。だったら僕のこと、思ってくれてるかな……』
と。
外の雨の音は強く、さらに今日は冷えると思った湊音は毛布を出して包まる。
洗濯物は乾かない、お昼ご飯も食べ終えた。性欲もそんなにない。見たいテレビも映画も無い。
こんな贅沢していていいのだろうか、と毛布に埋まる。
こんな日中に家にいることは本当になかったこの10何年近く。教師でいた頃の昼間は常に動き回っていた。休み時間も宿題のチェックや授業の準備や会議、生徒たちの対応、時には剣道の稽古もつけていたこともあった。なにかと人と触れ合っていた湊音。
それが全部無い。ましてや外に出れるような気分でもない。
髪の毛を触る。
教師をやめた後に思い切って今までしなかったブリーチからのアッシュブラウン、そしてパーマ。
ふと思い出す。湊音は李仁と付き合ってから紹介してもらった美容師、大輝のことを。
この今の髪型も彼による物だが、帰り際に
『頭皮マッサージのスパをやりましょう。もう今は時間あるから時間かけてやりたいです』
と言われていたことを。
湊音は大輝にメールをした。
『大輝くん、いきなりでごめん。今って空いてる?』
こんな唐突なメールもいいものかと思いながらも1ヶ月前に美容院に行った時に入ってすぐに大輝にブリーチして欲しいと湊音は頼んだのだ。
大輝は驚きながらも二つ返事で始めた。湊音、はじめてのブリーチ。
一週間ほど楽しんだのちにカラーを入れてその一週間後にはパーマをかけた。
何度も自撮りや李仁と写真を撮った。今までに無い自分を楽しんだ。
するとすぐメールが返ってきた。
『空いてますよ。でも今は仕事じゃなくて休みなんです』
湊音は突然すぎたか、と諦めようとした。
『もしかして頭皮マッサージです?』
と返ってきた。湊音は上半身を上げてメールを返す。
『うん。こんな雨だけどおうちに今から行っていい?』
すると大輝からもすぐ返ってくる。
『はい。だったら迎えに行くんで。十分くらいで着きます』
まさかそんな早くにと、湊音は慌てて服を着る。
「……髪……はいいか、どうせマッサージしてもらえるし」
少し雨の音が静かになってきた。カーテンを開ける。薄暗い空が少し明るくなってきた。でもまだ雨が降っている。
ピンポーン
「はやっ」
大輝は近所にいたようだ。湊音はガスの元栓やらいろんなところをチェックして家を出た。
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