夢を見る。

秋雨

第1夜 公平、公正、平等。

 今日も、夢を見る。いつもと同じように、夢を見る。



 幽霊にようにして、今日の夢の主人公を見下ろす。いつもこう、三人称の夢を見るのだ。まあそれはもうなれてしまったのだが。

 今日の夢の主人公は一人の少年だった。彼は何事も公平であるべきだと思っていて、実際そういうふうに行動している。なにか揉め事が起こったときは、双方が半分ずつ我慢して、そうして一時的に争いを収めるようにしている。

 彼自身が関わっていることならそれでもいいのだが、問題は彼がそれを他人にも押し付けている、ということだ。周りの人たちがストレスをため続けているのが容易に見て取れる。「お前はそれでいいかもだけど、俺たちは嫌なんだ」そう言っているように見える。

 そうしてストレスが頂点に達したとき、その事件は起こった。

「よう、――。ちょっとしたいことがあるんだがよ、ついてこいよ」

 それは彼のクラスの悪ガキ、俗に言う「いじめっ子」と呼ばれる人種の人間だった。よく見なくても下心があるのはすけるようにみえていた。

「いいけど、早く帰りたいから早く終わらせてね、お願い」

「ああ、わかったよ」

 帰らせるつもりはないようだ。

 二人は体育館、今はもうだれもいない、についた。そこでは、いじめっ子の手下の生徒が二人、ロープと椅子を携えて待ち構えていた。

「突然なんだけど、殴らせろよ」

 まあそんなことだろう。だがこの男子たちはずる賢かった。

「君は何発僕を殴りたいんだい?」

「1000発」

「そうか。僕は一発も殴られたくない、で君は1000殴りたい、と。ここは公平に半分ずつ我慢しよう。500発でどう?」

「ああ、いいよ」

 男子たちの顔に薄気味悪い笑みが浮かんだ。嫌な予感は的中したようだ。

「じゃあ逃げないようにロープで縛らせてもらう」

「うん、わかった」

 そうして少年は笑顔でぐるぐる巻きにされた。公平性を保てたからだろう。しかし、これから起こることはもう分かっている。

「じゃあ行くぜ。いっぱーつ!」

 衝撃。少年の顔が後ろに倒れ、椅子もそれに合わせて倒れる。圧倒的威力で、少年はもう意識が朦朧としている。

「おい、寝てたら公平じゃないだろ!おい、起こせ」

 手下の二人が少年を起こす。

「にはーつ!」

 再び衝撃。もう少年の意識はない。それでも笑顔だ。そして手下がもう一度少年を起こす。

「さんぱーつ!」

「よんはーつ!」

「ごはーつ!」

 回数を経るにつれて、少年の顔が壊れていく。それでも笑顔でいるのが見える。

「ろっぱーつ!」

「ななはーつ!」

   ︙

   ︙

   ︙

 笑顔だった。

   ︙

   ︙

   ︙

 それでも笑顔だった。



「はっ!?」

 嫌な夢を見た。その内容もくっきりと思い出せる。まだついていたテレビではニュースが流れていた。

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