第25話 収束する風
風龍ワーディアは己を恥じていた。調停の一翼を担う翠玉龍の部下であり龍という生物的上位種でありながらまんまと罠に嵌り捉えられている事を。
溶岩を作り出したのは恐らく「錬金術」アビリティ。まさか戦闘に錬金術が使われるとは、それもトレントが錬金術を行使するなど夢にも思わなかった。錬金術は人族などの小型知性体が生産活動に用いる物であり戦術的規模かつ魔物が行使するなど前代未聞である。
そしてあの幻術、龍種の鱗には魔法を妨害する効果があり少し意識するだけであの練度の幻術なら見破る事が可能であった筈だ、しかし見破れなかった。ワーディアはただ己が経験不足であったと考えたがそれは否である。彼と相対したトレントが一般的な個体であれば彼は初めの一撃で勝利していたであろう、しかし異常なまでの防御力がトレントを救い、彼は幻術を疑わないというミスを犯して捕らえられた。いや、ミスでは無い。必然だ。
称号
「恐怖の大王」
赤き星から来たる恐怖の大王 自身の周囲の存在に精神異常「恐怖(特大)」を与える。全てのアビリティに1.1倍の補正、オンオフ切り替え可
彼は、ワーディアは自身が気づかない内に恐怖を覚えていた、だが龍種の矜持がそれ表面に出す事を拒んでいた、だからこそ彼は恐怖による己の異常に気づかず罠に嵌った、故に彼の経験不足などでは無い。彼が捕らえられているのは必然だ。
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硬い岩と蔓に絡め取られ身動きが取れないワーディアを殺す為に槌の様に変形させた幹を振りかぶる。が、何か違和感を感じる。
薄い翠の閃光、轟く爆音、切り裂かれる幹体。
何だ!!何が起こった!?……まさか自爆か!!!
煙が晴れると翼と四肢そして頭部の半分を失ったワーディアが現れた。
(ハハハハハハハハッ!!龍をこれほどまで追い詰めるとは!!完敗だ!!しかしだこのまま抵抗することなく倒されるは龍種の恥である!!この身を風として汝に一矢報いようでわないか!!)
急激にワーディアの魔力が高まり鱗と鱗の隙間から翠色の光が溢れて自身を中心に嵐を形作っていく。
(っ!!少し近づくだけで粉々に粉砕されそうだ!!早く防御を固めなければ私は此処で死ぬ!!)
結界を張り岩石魔法で障壁を作り植物の根で補強する、急拵えだが今の一瞬ではこれが精一杯だ。なんとか持ち堪えてくれ!!
(準備は良いか、大樹よ!!我が最後の一撃、見事受け切って見せよ!!「ウェントゥス・コンヴァージェンテス」!!)
龍の持つ膨大なエネルギーが全て暴虐の風となり荒れ狂う。
破壊し尽くされたその場所にはただ傷だらけの大木が立っていた。
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