第20話VS地下の覇者 後編


 魔法で岩壁を破壊するも既にそこにはタイラントスネークの姿は無く、魔法で抉れた地面しか無い。何処に消えた?あの巨体だ、隠れるのは難しい筈だ。念話の内容からして逃げるとは思えない。幻霧による動きの察知ににも引っかからない。



 刹那、私の直ぐ横の洞窟の壁を破りタイラントスネークが現れ私に飛び掛かる。



 クソが!!「掘削」のアビリティか!!



 魔法では間に合わない、幹を振り回して対応する。しかし…




 ボンっ!!という音と共に弾かれ、私にダメージが入った。ヴルトゥームの防御補正を超えて攻撃して来た!!いや違う、コレか。




 種族特性「蛇鱗じゃりん

  体表を覆う特殊な鱗、物理攻撃に対して3割被ダメージカウンター効果。



 被ダメージカウンター効果

 受けたダメージの何割かを相手に返す効果。属性を伴わない無属性固定ダメージ。




 厄介な種族特性だ。ダメージハ少ないが固定ダメージな為確実に削られこちらが物理攻撃を加えるとその内3割が無条件で返って来る。「蛇鱗」は物理攻撃にしか働かない様なので魔法で攻めるしか無いだろう。幸いこちらのHPの1割も削れていないので勝てる筈だ。



 (立ち去ってくれぬか大樹よ)


 (断る、お前の契約について吐かせてから殺す)


 (致し方なし)



 勢いで返答したが片方が「念話」を持っていたら自分は持って無くても会話が出来る様だ。念話を持って無い方からは話しかけれない様だが。まぁそんな事はどうでも良い、私のするべき事は眼前の敵を殺すだけだ。




 タイラントスネークが「岩石魔法」を飛ばしながら巨体の割に素早く接近してくる。また接近戦に持ち込むつもりだ。そう何度も同じ事はさせない。



 ガンッ!!



 タイラントスネークの突進を不可視の障壁が阻む、「魔障結術」。「魔力結界」の上位互換で魔力で生成した結界に様々な条件などをつける事が出来る。付与した効果はカウンター、削られた結界の耐久値の2割の固定ダメージ。




 (なっ!!)


 (驚いたか?私にも出来るんだよね)




 そして動揺したタイラントスネークを植物の蔦が捕らえる。「植物魔法Lv1種子召喚」で呼び出した種をばら撒き、「植物魔法Lv4育成補助」で成長させ、「植物魔法Lv5植物操作」で操り捕らえる。


 召喚した種子はマナドレイアと言ってMPを奪う効果があり勿論そのMPは私の元へ送られる。ジタバタと暴れるタイラントスネークだが蔦はしなやかかつ頑丈で振り解けない。「石化の邪眼」を使われると厄介なので蔦で目を潰す。



 (同じ手は通ぜぬか…)


 (甘く見て貰っては困る、お前が言っていた契約について吐け。そしたら楽に殺してやる)


 (……これはあまり使いたく無かったのだが仕方有るまい)





 タイラントスネークがそう言うとボロボロと皮が剥け出し体格も小さくなっていく。抜け殻の山から姿を現したのは額に三日月の模様が有る3メートル程の白い蛇、さっきまで50メートルもあったのにえらい違いだ。嫌な予感がする、もう一度鑑定しよう。




 タイラントスネーク・ノヴァ

 Lv1/1

 種族特性

 「時限の命」「蛇鱗」

 状態

 「蛇の呪い」

 HP3000/3000 MP3000/3000 ST2000/2000 移動能力30000 物理攻撃55000 魔法能力15000 防御能力20000


 基本アビリティ

 「神速Lv10」「落命の顎」

 種族アビリティ

 「蛇神の毒牙」

 称号

 「蛇神の下僕」「蛇の呪い」「殉教者」




 何だこれ!!ステータスが全然違う、進化するにしてもレベルは足りなかった筈なのに…。いや待て、状態の欄に変なのが有る。



 状態

 「蛇の呪い」

 蛇神に全てを捧げ、アビリティ「蛇の呪い」によって強制的に異常な進化をした状態、負荷に耐えきれず時間経過でダメージを負う。




 異常に高い物理攻撃と移動速度はこれから来ているのだろう。だが私の防御能力は「ヴルトゥーム」の補正を入れて実質20万近く有る、問題ない筈だ。





 次の瞬間、タイラントスネーク・ノヴァが私の視界から消え鋭い痛みを感じる。




 結界を砕き幹の一部が抉られ貫通されている。何故!?HPも3000程削られてしまった、私の現在の最大HPは15000程なので5分の1も削られた。これのせいか。



 「落命の顎門」

 噛みつきなどの攻撃を行った時に与えるダメージ5倍





 不味い事になって来た…。幸い「ヴルトゥーム」の耐性で毒は無効化出来た様だが私の低い移動速度では見切れない、的も小さくて魔法を的確に当てるのは難しい、だからと言って広範囲魔法を使えば洞窟が崩れる恐れもある。「蛇の呪い」によるHPの減少値は1分につき250、12分待てば勝手に死んでくれるがそれまで放っていく訳にも行かない。






 塵共を殺す為にここでやられる訳には行かない、何か良いアビリティは…。これ何かどうだ?



 「桜華魔法Lv1」

 独自フィールド:「桜華爛漫」を展開。


 「桜華爛漫」

 自分と味方はフィールド内にいる時HPとMP自動回復、使用MPST減少、全ステータス1.5倍。敵に常時「目眩し効果(中)」




 これでステータスを上げつつMP自動回復、消費緩和で自分に「再生魔法」をかけまくりながら戦う。これなら12分持ち堪えられる。「植物魔法」がレベル10になって新たに獲得したアビリティだ。






 タイラントスネーク・ノヴァがさっき私の幹を抉った様に突進の予備動作に入る。



 (「桜華魔法Lv1桜華爛漫」!!)






 洞窟の中に私の花弁と同じ血染めの紅色の桜の花びらが舞う。





 爆音と共に蛇野郎が壁にぶつかる、フィールドの「目眩し効果(中)」が働いたのだろう。あ、閃いた!!これに「霊幻魔法Lv9認識の霧」を加えて発動する。「認識の虚幻」はその場で光魔法や闇魔法の作用で虚像を作り出す「霊幻魔法」にしては珍しく場所では無く個体に向けて発動する。内容は対象の視神経に干渉し幻覚を見せる事。効果が強力な分コストが高いがフィールド内ならそれも軽くなる。




 タイラントスネーク・ノヴァは合間無く攻撃を仕掛けてくるがどれも私には当たらない。このまま力尽きるのを待つのも良いがそれじゃあつまらん、魔法で遠距離攻撃を仕掛け追加でHPを削る。「蛇の呪い」によるスリップダメージも相まって5分程でタイラントスネーク・ノヴァは身動きが取れなくてなった。念のため蔦で拘束する。



 (ここまでか…)


 (さっき言ってた契約について吐け)


 (全てを懸けて挑んでも敵わなかったのだ、答えよう。この洞窟は我が掘ったものだ、ヒューマンたちを獣人領に通す為に。代価は狩った獣人の肉とヒューマンが我の眷族に手を出さない事だ)


 (そうか…死ね)



 タイラントスネーク・ノヴァに巻き付けていた蔦が鋭く変化し斬り刻む。



 (経験値獲得しました)

 (Lvが34から42に上がりました)

 (称号「無慈悲」「蛇神の使い殺し」を獲得しました)




 お、レベルが上がったな。称号の内容を見てみるか。



 「無慈悲」

  慈悲なき者の証 止めを刺す時にクリティカルが出やすくなる、また格下の相手に与えるダメージに10%の補正


 「蛇神の使い殺し」

  蛇神の使いを屠った者の証 蛇型の敵に与えるダメージに20%の補正



 ふぅん、まぁまぁかな。少しでも戦力が上がるのは有り難い。このままレベルを上げてヒューマン共に地獄を齎そう。

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