第18話 歩む、歩む
アルトの街を滅ぼしたヒューマン族の騎士達を嬲り殺し終えた後、屍を踏みつけ周囲を見渡すが獣人の生存者は見当たらない。呪いを吸収して進化してからと言うものずっと響いて来る声、ヒューマン族を殺し尽くせと狂おしい衝動を掻き立てる。
そうだ、皆んなが殺せと言うのだ…だから殺す。ヒューマン族は北に多く住んでいるらしい。根絶しに行こう、トレントに進化して移動が可能になったからね。
そう言えばさっき勝手に条件を満たして獲得したアビリティと称号を見てみようか。確か以前見た時に私への適性が高く異常に低いポイントで取得出来るけど取らなかった奴だ。
「ヴルトゥーム」
解放段階壱「妖樹の護り」
防御能力に150倍の補正と成長補正、各属性に対する耐性に200倍の補正
未だ封じられたり、力を求めるならば死を重ねよ。
称号
「恐怖の大王」
赤き星より来る恐怖の大王 自身の周囲の存在に精神異常「恐怖(特大)」を与える、全てのアビリティに1.1倍の補正、オンオフ切り替え可
「妖精大樹」
妖しき大樹、幻惑の薫りに陶酔せよ 魔法能力に10倍の補正、精神異常を与える効果に2倍の補正
中々破格の性能じゃ無いか、これで皆んなに降りかかった理不尽を返しに行こう。理不尽には理不尽を、虐殺には虐殺を、だ。
のそり、のそりとゆっくりと移動する。移動が可能になったとは言えまだまだ遅い、道中魔物でも狩ってレベルを上げて移動能力をあげようか。
血に塗れた廃墟と化したアルトの街を後にして私は北を目指した。
街を出て森林入ると魔物を見つけては殺すのを繰り返す。時折攻撃を受ける事もあるが1ダメージも食らう事は無く何ヶ月も屍の山を築き続けた。魔物達に恨みは無いが皆んなの為に死んでくれ。少しずつ上がって行くレベル、それに伴い上がって行くペース。嗚呼、高揚する。塵共を殲滅する時は近い。
過度な呪いの吸収によるマスターの魂の崩壊を防ぐためにマスターの意思に反して進化を進めた私、華蓮はマスターが森の魔物達を経験値にするために狩っていくのを黙って見ていた。以前のマスターなら有り得ない行動だ、マスターは基本的に平和主義で無意味な殺生は好まない方だったが吸収した呪いの影響で凶暴性、残虐性、が増している。マスターの中に蠢く呪いがそうさせるのだ。
半ば暴走の様な状態で周囲の生物を狩り尽くす。この症状は呪木系統の進化直後に見られるもので呪いを上回る強い感情や光の高位魔法、「極光魔法」でしか解除出来ない。つまりマスターに強い感情を起こさせる何かか「極光魔法」を扱える者に出会うまでマスターはこのままという事だ。
マスターに呪い以外の強い感情を起こさせる事は私には出来ない、マスターを無理矢理この姿にしたのは私なのだ、私の話など聞く耳を持っていただけ無かった。本当は自分がマスターを救ってまた暖かく声を聴かせて欲しい。だけど、だけど、私にその術はない。
無責任だがマスターを救ってくれる誰かが現れるように私は祈った。
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