第17話 番外編3


 5年が経ち俺…わたしは6歳になった。一人称は人前ではわたしにする様にしている。



 5年の間にアルト村は御神木様の教会を発端に急激に発展していった。人が増え、物が増え生活も楽になった。アルトの主産業は狩猟から御神木様を中心とした観光に移った。その分問題も有る様で、街の面積が増えた事で住処を追われた魔物の対策、人口が増えた事によるゴミの増加、その他様々な問題があるのだが御神木様の奇跡で解決されたらしい。本当に御神木様々だなぁ。





 それと赤ちゃんの頃森の奥から聞こえる助けを求める声は今も偶に聴こえて来る。以前声につられて森に入った時に助けてくれたトラの獣人のラオも12歳に成長していて偶に家に来る事もある。




 「よっエンラ、準備は出来たか?」


 「うん、だいじょうぶ」




 ラオもあの声を聞き続けているらしく遂に発生源を突き止めたそうだ。今日は二人で何がそこにあるのか確かめに行く。え?以前魔物に襲われて懲りなかったのかって?大丈夫、折角持っていても使え無かった「格闘術の天賦Lv1」を始めとしたアビリティの使い方を知って自衛手段は持っている。ステータスが低いけど技術については問題無い筈だ。




 「それじゃ行こう!!」


 「おおー!!」




 ラオに連れられ森に分け入って行くと大人では入れないであろう大きさの穴が開いている。そこに入って行くと中には小さな神殿の様な物があった。


 暗くてカビ臭いしあまり気分の良い場所じゃ無いな。




 (…助けて、助けて)




 今までよりはっきりと声が聞こえる。神殿の中に入るとそこには石の棺桶の様な物が有り鎖でギチギチに縛られてガタガタと揺れている。




 コレ触んない方が良いんじゃね?





 「エンラ、帰ろうか」


 「うん、そうだね」




 ラオも同じ考えの様で二人で帰ろうとすると棺桶の揺れが強まり助けを求める声も大きくなる。




 (ちょっと待って下さい!!私は怪しい者では御座いません!!助けて下さい!!お願いします!!」)





 何か情けない声が聞こえて来る。俺…わたしはやめた方が良いと思うのだがラオは可哀想だと思った様で素早い槍捌きで棺桶に巻きつけられた鎖を切った。




 ズズズズズズズという音を立てながら棺桶から姿を表したのは白骨化した馬の骨、もう一度言おう。馬の骨である。



 (いや〜助かりました!!ありがとうございます!!)




 驚きのあまりフリーズするわたしとラオ。



 「じゃあ、帰ります…」


 「…うん」



 骨馬が騒いでいるうちに帰ろう、絶対関わらない方が良い、絶対。




 (ちょっと〜置いてかないで下さいよ〜!!あ、自分キョウコツって言います!!御二方は恩人ですね〜何かして欲しい事とか有ります?)



 「取り敢えず何故閉じ込められてたのか教えろ」




 うん、ラオの言う通りまずコイツが危険なのか見極めなければ。




 「う〜ん自分は昔の戦争で大活躍だったんすよ、でもポカやらかしちゃってそのまま封印されちゃった感じっす」



 封印される様なヤバい奴って事で良いのか?



 「昔の戦争って?」


 (ほら、有名でしょ?神々と神々の戦い、二勢力に別れた神々に合わせて地上の種族達も二つに分裂して争った。勝ったのはヒューマン、エルフ、ドワーフ、天翼族を配下に置いた神々に魔族、獣人、鬼人、リザードマン、魚人を始めとした少数派の種族を配下に置いた神々が敗北し負けた種族は勝った種族の間では人と扱われず魔物と同じ扱いになった)



 なにそれ知らない、ラオはうんうんと頷いている。



 「エンラは未だ知らないな…俺もアルトが街になってから出来た学校で習ったんだけど、これが原因で今も俺たち獣人族は勝った4種族から迫害を受けているんだ。ってエンラにはまだ早かったか?」



 そんなのが有るのか…、初めて知る事ばかりだ。俺たち獣人族が迫害を受けている事すら知らなかった。




 (まぁその戦争で僕は君達獣人と戦ってたんだけど封印されちゃったの、だから少なくとも僕は獣人の味方ではあるかな?)



 「そうか…なら安心だな!!」




 まぁそうかも…。ずっと此処にいる訳にも行かないので穴から外に出る。キョウコツはデカくて出れなさそうだと思ったらバラバラになって出て来た。骨だもんね。取り敢えず街に戻ろうとするとアルトの街から火の手が上がっているのが分かる。



 「エンラは此処で待ってろ!!俺が見て来る!!」



 (待つんだ、この匂いはヒューマンだ…それも大勢の言ったら殺されるぞ)



 「でも!!家族がいるんだ!!ほっとけないだろ!!」


 「そうだよ!!わたしも母さんを一人にしてある、たすけなきゃ!!」


 (だめだ、今の君達では数の暴力であっという間に殺される。僕も本来の力を失っているから今は力になれない、すまないが此処は逃げるよ)



 キョウコツはそう言うと黒いモヤの様なもので俺たちを掴んで走り出した。アルトの街から爆音が上がり人々の悲鳴が上がる。



 「はなせ!!母さんを助けなきゃ!!」


 「そうだ!!家族がいるんだ!!」



 (すまない、今はこれが最善だ)





 俺の街が燃えている、崩れ去って行く日常。







 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁ!!!」






 慟哭を叫ぶと遠くに見える御神木様の教会が崩れ中から黒い幹に血の花を咲かせた幹が現れる。







 どうか御神木様、殺してくれ、殺して尽くしてくれ。アイツ等を!!俺の故郷を奪ったヒューマン族を殺し尽くしてくれ!!













 少女の願いは呪いになり花弁を更に紅く染めた。







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キョウコツ ステータス



名前 キョウコツ

種族 屍鬼

 種族特性 「俊脚」


HP349/17849 MP341/26790 ST1208/27891 移動能力 低下中4098(79986) 物理攻撃 低下中128(3487) 魔法能力 低下中983(7659) 防御能力 低下中289(2689)


基本アビリティ

「嗅覚」「分裂」「神速」「光耐性Lv10」「火耐性Lv9」「黒霧」


魔法アビリティ

「闇魔法Lv10」「黒印魔法Lv10」「暗獄魔法Lv8」 「疾風魔法Lv10」「水魔法Lv8」「雷魔法Lv9」



ユニークアビリティ

「不死」


???

「バグ-シャース」



称号

「英雄の愛馬」「駆ける闇」「竜殺し」「龍殺し」「黒きもの」「宇宙を満たすもの」

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