1-30 茨、初めてステータスを目にする
「……なにそれ!?」
そう言いつつも、おおよそ想像はついている。
恐らくモフ子のステータスがあの半透明の板に記載されているのだろう。
とは言え、実際に目にしたその衝撃は想像以上で、僕は思わず声を上げてしまう。
対しティアナは、それがごく当たり前のものとばかりに平静のまま口を開く。
「ステータス──その人の現在の能力がわかる便利なものよ」
そう言った後、ティアナはその半透明の板へと視線を向け、
「……ん、やっぱりそうね。モフ子様には状態異常耐性のスキルがあるわ。これなら万に一つも病気にかかる事はないわよ」
「ス、スキル……」
モフ子が病気に罹らないという事実に心の中で安堵しつつ、僕は思わず声を漏らす。
スキルと言えば、ゲームやネット小説でおなじみの設定であるが……いやはやまさか実在するとは。
それも、ティアナの口振りからして、決して珍しいものという訳ではなく、恐らく異世界ではありふれたものなのだろう。
話を聞けば聞く程、興味が湧いてくる。
……できれば、直接見てみたいな。
「ねぇ、それって僕が見せてもらう事もできる?」
「えぇ。モフ子様が良いのならばね」
「ワフッ!」
モフ子が「良いよ!」とばかりに吠える。
ティアナはモフ子をチラと見てうんと頷くと、彼女の眼前の半透明の板を消し──代わりにそれを僕の前に浮かび上がらせた。
「…………っ!」
突然現れた半透明の板にビクッとした後、恐る恐るその文字へと目を通す。
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モフ子(フェンリル) 0歳
Lv 1
体力 100/100
魔力 120/120
攻撃 35
防御 30
魔攻 20
魔防 25
敏捷 50
知力 30
【スキル】
・状態異常耐性
・言語理解
・風魔法
・逾槫ィ
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……凄い! まんまあのステータスだ!
レベルという概念、ゲーム等でよく目にし、何度も憧れた数値化された能力値、そしてスキルという名の特殊能力。
この世界で普通に生きていては決して目にする事のできないそれらに、僕の心はこれ以上ない程に踊る。
「……凄い」
言いながら、ひとしきり感動した所で、僕はその内容をじっくりと見ることにした。
まずレベルに関しては、特に言う事はない。
もしもこれが僕の想像通りの方法で上昇するのならば、なるほど生まれたてのモフ子がレベル1というのも納得できる。
次に能力値に関しては、現状比較対象がない為、この数値が一体どの程度なのかはわからない。
そして最後にスキルについてだが──
「あれ、これは……?」
言って首を傾げる僕の目には、1つ全く意味のわからないスキルが映る。
「恐らく、相当高位のスキルなんでしょうね。今の私じゃ読み取れないみたいだわ」
なんでも、スキルには熟練度というものが存在するようだ。
それ自体はステータスに表示されないが、ある程度使用すると、突然スキルが使いやすくなったり、効果が向上したりするらしい。
……つまり、ティアナの何らかのスキルでステータスを表示していて、そのスキルの熟練度不足により、モフ子の一部スキルが正常に表示されないという訳か。
「なるほどなー」と頷きながら、僕は単純な疑問を覚え、ティアナに問う。
「……ティアナ。この数値って強いの?」
「モフ子様が生まれたてという事を考慮すれば、かなり強いわね」
「……と言う事は、一般的にはまだ弱い部類だと」
「えぇ」
「ちなみにティアナは?」
「……えっと」
僕の言葉に、ティアナは少し躊躇う素振りを見せる。
……いや、それも当然か。ステータスというのは、その人の個人情報だ。そう簡単に開示する訳ないだろう。
「あ、ごめん。無理に見せなくて良いからね!」
僕が少し慌てながらそう言うと、ティアナは問題無いとばかりに頷き、
「いえ、大丈夫。私のはこれよ」
言って、半透明の板を僕の前に出現させた。
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