1-27 ティアナ、洋服に袖を通す

 戻ってきたティアナは、寝巻きからプレゼントした服に着替えていた。


 どうやら下着を身につけるついでに着てみたようである。


「どう……かしら?」


「うん。凄く良いと思う!」


 僕は力強く何度も首肯する。


 今までの革鎧とかを身につけたティアナも当然美しかったが、その服装があまりにもファンタジー過ぎたからか、あまり現実味がなかった。


 だからかだろうか。寝巻き姿を見た時も思ったが、こちらの世界の服を着ると、彼女の異次元の美しさがより顕著に感じられるのである。


 ……それにしても、褒めるにももっと良い言葉があったんじゃないか?


 とは思うが、今まで殆ど女子と会話をした事がない万年インキャの僕には、褒めるという行為はあまりにも難易度が高い。


 故に具体的にどうこうは言えず、今回のように曖昧な物言いになってしまうのだ。


 しかしそれでも、


「そ。ありがと」


 と、ティアナが嬉しそうに小さく微笑んでくれた為、少なくともこちらの気持ちは伝わったようである。


 ただ、どうせならばもう少し気の利いた事を言えるようにならなきゃなと、僕は1人心の中で思った。


 ◇


 その後、僕もお風呂に入った。


 その際、ティアナにモフ子を任せたところ、お風呂へ向かう途中に後方から、


「さ、モフ子様〜ブラッシングしますよ〜」


 と普段よりも少し甲高いティアナの声が聞こえてきた。

 崇拝対象である事は変わらずも、やはり何だかんだ打ち解けてるようだ。


 それから、特にこれといった事も無く、僕はお風呂から上がる。


 ドライヤー等済ませ、時計を見れば、時刻は18時。そろそろ夕飯の時間である。


「よし……」


 言って僕はソファから立ち上がり、


「じゃあ、夕飯作るから、ティアナはモフ子とリビングで遊んで待っててね」


「いえ、居候させてもらって、流石に料理までやって貰う訳にはいかないわ。だから私にも手伝わせて」


 確かにここまで全て僕がやっては、彼女の性格的に罪悪感を感じてしまうか。

 なら、後々の事を考えても、幾らか手伝ってもらった方が良いのかもしれない。


 僕はうんと頷くと、


「わかったよ。……じゃあモフ子、夕飯作る間、少しだけひとりで遊んでてね」


「ワフッ!」


 僕の言葉に、モフ子は元気良く返事をした後、本日何度目か空を駆け出す。

 流石にこの状況にも慣れた為、僕は特に驚いたりもせず、至って平静な様子で、


「……さて。作る前に、ティアナは好き嫌いある?」


「うーん、いつも似たようなものを食べていたから、あまりわからないわ。……強いて言うなら、お肉が好きかしら。特に、殺戮鳥を好んで食していたわね」


「殺戮……うん、まぁそこは良いや。お肉か……牛や豚を食べた事は?」


「近隣に生息していなかったから無いわね」


「そっか。……よし。なら、鶏は次回にして、今日はハンバーグにでもしようかな」


 という事で、夕飯のメインはハンバーグに決定した。

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