1-21 茨、一世一代の大ピンチ!?

 ティアナとモフ子に留守を任せ、僕は家を出た。


 今回の目的地は、空木家から自転車で30分圏内にある大型商業施設である。

 空木家の住む地域が小さな街であるからか、ここは近所で唯一の大型商業施設として、常に人でごった返している。


 本日も、例に漏れず人で溢れ返っている。

 寧ろ、ゴールデンウィークという事もあり、いつもより人が多い位か。


 ……これだと、購入に時間がかかりそうだなぁ。けどどうせなら、ある程度良い服を買ってあげたい。


 という事で、僕は真っ先に日用品を購入すると、人混みの中を縫うように進み、未開の地であるレディースアパレルブランドの多く並ぶエリアへと向かう。


 ……うん、見事に場違いな感じだ。


 到着と同時に辺りを見回せば、目に映るのは若い女性ばかりである。


 当然一部男性の姿もあるが、その殆どが彼女や友人の付き添いか、数少ないメンズアパレルショップに居り、僕のように1人で、しかもレディースショップ付近に居る男の姿は無い。


 そのせいか、周囲を歩く女性の視線がチクチクと刺さる。


 とは言え、この辺はある程度予想通りである為、僕は少し居心地の悪さを感じながらも、やや早足で目的の店舗へと足を運んだ。


「ここかな」


 今回僕が選んだ店は、比較的安価でありながら質の良い品が並ぶ事で、学生に人気の有名店である。そしてそれを体現するかの様に、現在店の中には、同年代と思わしき少女の姿が多く見受けられる。


 ……完全アウェーだね。


 見事に同年代の女性しか居らず、思わず入るのを躊躇ってしまう。

 しかしこれもティアナの為だと考え、僕は意を決して店へと足を踏み入れる。


 その瞬間、少女達の視線が、あちらこちらから向けられるが、僕はそれを意識しないよう努めながら、近場にある服から見ていく。


 しかし──


 ……うーん。よくわからないな。


 とりあえず勢いでこの場にきたが、よく考えれば、僕にファッションセンスなどない。その上で、今回選ぶのが異性の服となれば、何にすべきなのか全く見当もつかない。


 ……これは困った。


 何も考えずこの場にやってきた自身の計画性の無さに呆れつつ、しかしどうしようもできない為、とりあえずズラリと並ぶ衣服を手に取りながらうんうん悩んでいると、ここで──


「……ん? あれ、茨君?」


 と、突如僕の名を呼ぶ、聞き覚えのある声が聞こえてくる。


 まさかと思いつつ、恐る恐るその可憐な声の方へと目を向けると、そこにはニコニコと微笑む南條さん……と、彼女の友人であり、僕のクラスメイトでもある4人の少女の姿があった。

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