1-11 モフ子、謎の衝撃波を放つ
翌日。この日は特にこれといった予定もなく、1人と1匹でのんびりと過ごしていた。
「モフ子〜〜……おすわりっ!」
「ワフッ!」
いつもの様にリビングの床に座り、目前のモフ子と向かい合う。
つぶらな瞳で僕の事をじっと見つめるモフ子に芸を要求すれば、何の迷いもなく、完璧にこなす。
「伏せ!」
「ワフッ!」
「……それっ!」
言いながら、ボールを投げる。モフ子は僕の指示通りポーズを取ったあと、投げたボールを爆速で追いかけていく。
そして追いついて咥えたかと思うと、すぐ様僕の目の前までやってきて、床に置き、鼻先でちょんと触り、こちらへとボールを寄越してくる。
「偉いぞー、モフ子!」
言ってわしゃわしゃと撫でてあげれば、モフ子は目を細め気持ちよさそうな様子で僕の右手とじゃれる。
その様子があまりにも可愛く、僕は思わず破顔した。
結局、この時はモフ子が飽きるまでこれを続け、気づけば3時間が経過。お昼となった。
◇
お昼休憩の後、モフ子にせがまれ、再び遊ぶ事に。
「お手!」
「ワフッ!」
「おかわり!」
「ワフッ!」
「ダブルハイタッチ!」
「ワフワフッ!」
「よーし、良い子だ!」
言って何度目かモフ子をわしわしと撫でる。
やっている事は午前から大して変わっていないが、僕、モフ子共に楽しく続けている。
そしてこれだけ長時間続けた影響か、モフ子は犬が覚える芸を既に一通りこなせるようになった。
──モフ子は天才。
これまでの行動からそう思っていた為、何となしに動画を見せつつ芸を教えた所、さも当然とばかりに、どれも一発で完璧にこなしてしまったのだ。
モフ子凄い! 天才! 可愛い!
最早脳死状態で褒めつつ、僕はふと思う。
……もしかしてモフ子なら、これらの芸を応用して何か凄い事ができるのでは?
ふとした思いつきではあるが、妙に気になってしまった僕は、ソワソワした様子のままモフ子に話しかける。
「モフ子」
「ワフッ!」
キラキラとした瞳をこちらへと向けたまま、おすわりをするモフ子。その姿は、早く次の指示をくれと、そうせがんでいる様に見える。
よし、ならばお望み通りに与える事としよう。
僕は少々芝居がかった様子で口を開く。
「モフ子。最早君に教える芸は一つもない。免許皆伝だ!」
「ワフッ!」
「となれば、次のステージだ。ここからは自分で芸を生み出すんだ」
「ワフッ!」
「今までの応用でも、モフ子の考えたオリジナルでも良い。とにかくモフ子の今できる最高の芸を見せて欲しい!」
「ワフッ!」
「よし、それじゃお願い!」
「ワオーンッ!」
やってやるぞ! という意気込みか、モフ子は甲高い声で遠吠えをする。可愛い。
次いでやる事が決まったのか、こちらに背を向ける様にくるりと反転した後、姿勢を低くし、尻尾をフリフリする。可愛い。
そのあまりの愛らしさに、思わずニッコリと、慈愛に満ちた聖母の如き笑みを浮かべつつ見守る僕。
その目前で、モフ子はグッと足に力を込めた後、地を蹴り、空中へと飛び上がる。
そしてその勢いのままにくるりと一回転……いわゆる前方宙返りをする。
「……!?」
満面の笑顔のまま、驚愕する僕。
そんな僕を他所に、モフ子は前方宙返りの勢いのままに尻尾を振り下ろし──
瞬間、僕の目前にある窓、そこに掛かるレースカーテンが、スパンッという軽い音と共に、まるで刃物で切り裂かれたかの様にパックリと2つに分かれた。
────ん?
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