『火の島』 下の中の上
やましん(テンパー)
『火の島』 下の中の上
ぼくらは、その超巨大火山の中腹にある、ちょっとした開けた場所に、パトカーを止めました。
『むかしは、登山道があったんです。ここは、駐車場でした。ぼくたちにも、空中自動車があったんです。ここからは、登山用のケーブル・カーが出ていました。あれが、その、残骸。宇宙ゴキが、破壊したくま。』
『なんで、登山、止めた?』
ぼくが尋ねました。
『それはもう、宇宙ごきの命令くま。やつらは、ぼくらが自由に移動するのが嫌だったんだ。それだけ。』
『ううん。わかる。地球でも、地球人からは、移動手段を奪っているもの。』
『同じ構造だな。おいらは、実は火星移住地にいた。連中は、なぜか火星には関心がなかった。でも、おいらたちは、地球には行けなかったんだ。』
焼き鳥おじさんです。
『そのうち、取締りがきつくなったんだ。』
『おおかた、独裁的支配者が正体を現すのは、少し様子を見てからだ。』💪
『そうですくま。ここでも、最初は優しい支配者だった。』
『ときに、ここで、もう海抜6000メートルはあるな。この山は、あまりに高すぎて、地上からは上側が見えないらしい。そうかい?』
焼き鳥おじさんです。
『そうくま。まあ、ぼくらの町は、森に囲まれてるから、元々、お山は見えないです。』
『そうか。我々は、高いところに住むから、上ばかり見ているが、いま、周囲を旋回して初めて分かったが、この火山は二重構造なんだな。周囲は巨大カルデラになっているんだろうが、大部分は海の中だ。頂上のピークがふたつある。』
と、焼き鳥おじさん。
『すごく高いですね。』
『高いなあ。あんた、測定してたろ、ねこさん。』
ねこママが口を開いた。
『にゃんこ。第1火口・・・と、勝手に名付けたにゃんこが、こっちがわに、皆さんがいつも見ている火口が、約21,000メートル。で、向こう側にあって、普段はいつも雲に覆われている第二火口は、26,000メートルもあるにゃん。海底からは、もっと高い。でも、地平は丸いから、向こう側は見えてないにゃん。それくらい、けた外れにゃん。』
『そんなに、なんで高くなるの。崩れそうだろう。』
『さあにゃ。おそらく、プレートの移動がないから、重なるだけ重なったにゃん。上空は、すごく気流が悪く、このパトカーの能力では、これ以上は上がれない。』
『そんなところ、歩いて上がれるわけもなし。』
『そこで。ほら。』
ねこママは、パトカーの中から、怪しいことこの上ない服を出した。
『火山登山用超パワースーツ! にゃん。』
『ねこさんは、番組間違えてないか?』
『にゃんこ。まあまあ、これは、宇宙空間に出ても大丈夫にゃん。この星の大気は、おもしろにゃんこに、かなり分厚いにゃん。でも、おかげで、上の方は、嵐の中にゃんこが多い。』
『確かに、見えない日が多い。』
『にゃんこ。このパワー・スーツがあれば、どんな壁もすいすい登れるにゃん、壁に密着するから、まず落ちないにゃ。多少落ちても、ケガはしないにゃ。通信用具完備。全冷暖房完備。栄養ドリンク完備。お手洗い自由自在にゃん。』
『そんなもの、誰が作ったの?』
『宇宙ゴキにゃん。』
『ひゃあああああ、大丈夫かなあ。』
『にゃんこ。汎用に改造済みにゃん。使用料は、一日1000ドリムでいいにゃん。この際。』
『まま、この際、ただでなくっちゃ。』
『それは、・・・・検討するにゃん。』
『ぼくらが、払いますよ。』
『見た目くまの子』が言いました。
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