第24話 カップリングは進行中

 ララのおかげで、宴席は一気にくだけた雰囲気となった。男性陣の取りまとめ役である相川と女性陣のとりまとめ役である穂乃花が何やら話し込んでいたし、相模原と響はSF小説の話で盛り上がっていた。俺の周囲ではララと林姉妹が特撮やアニメの話で盛り上がっていたのだが、俺と大樹は蚊帳の外となっている感があった。しかし、この合コンはある意味仕組まれていた事が良くわかる構図だった。つまり、豊満な女性が好みの相川とズバリ豊満な穂乃花のカップルが、そして、ロリ系が趣味であろう相模原とズバリロリ体形である響のカップルが誕生しようとしているではないか。そして俺の眼前にいる、林姉妹のような美少女タイプが大樹の好みなのだろう。俺はどちらかと言えば巨乳趣味であるが、流石にあの穂乃花のような体形の女性には興味がない。響は論外だし、眼前の林姉妹はそれなりの膨らみを持ってはいるが、俺にとっては物足りない。やはり、椿さんが理想だった。


「お兄ちゃん。コーラのお替り」

「わかった。他に何か食べたいものはある?」

「うーん。ロシアンルーレットたこ焼きかな? これ、一個だけ外れがあるんだって」


 一人前は六個だが、その中の一つにからしが大量に仕込んであるらしい。一人前のつもりだったのだが、何故かそのたこ焼きは人数分注文された。これは、全員で同時にたこ焼きを一つずつ食べて、最初に当たりを食べた人が罰ゲームをするという企画らしい。


「罰ゲームの内容はこのカードに書いてあります。罰ゲームをする人がカードを引く権利を持ってます」


 こんな説明をしているのは穂乃花だった。用意がいいというよりは、最初からこの企画を組んでいて、ララが注文したおかげで前倒しになったという事だろう。たこ焼きが人数分テーブルに並ぶ。見た目は普通のタコ焼きだが、この中に一つだけからしてんこ盛りの危険物があるのだ。


「さあみなさん。最初の一つを選んでください」


 俺は手前の奴に狙いを定めて爪楊枝を刺そうとしたのだが、ララに小突かれた。ジロリと睨まれる。まさかこれが、からしてんこ盛りなのか。俺はその隣の奴に爪楊枝を刺して口に放り込む。

 皮はカリっと焼けていて中はふんわり柔らかい。そして弾力があるタコの感触が心地よい。結構いけるたこ焼きじゃないか。


「さあ、当たりを引いた人は我慢しないで申告してくださいね」


 誰か当たりを引いたのか。そう思って周囲を眺めると、俺のすぐ傍で大樹が顔を真っ赤に染めて唸っていた。そしてたこ焼きを飲み込んでビールを一気飲みした。


「はあ。これはきつかった。俺が一番だな。どれどれ」


 穂乃花が差し出したバスケットの中から封筒を一つ摘まんだ。そしてその中からカードを取り出して読み上げる。


「パンツみせろ。パンツはズボンじゃなくて下着の事な」


 その場が笑いの渦に席巻された。大樹は恥ずかしそうに背を向けて、ジーンズを降ろす。そして下着の尻側を見せた。白のブリーフだったが、特に汚れていないようだ。その姿を見た男性陣は大声で笑い、女性陣も手を叩いて大喜びしているじゃないか。


「山大生……馬鹿だな」

「面目ない」


 俺の耳元でララが囁いた。全く、馬鹿である。


「さあ、次に行ってみよう! みんな、一つ選んで!」


 ノリノリの穂乃花である。派手なゼスチャーでアピールしているので、胸とか腹とかそこら辺の肉がブルンブルンと揺れまくっている。それを相川の熱い目線がとらえていた。

 俺はララが教えてくれた当たりを避けて一つ口に放り込む。もちろん、普通のうまいたこ焼きだった。


 ここで当たりを引いたのは、穂乃花と相川だった。この二人はからし入りのタコ焼きを飲み込まずに小皿に出してしまった。まあ、そうするのが普通だろう。飲み込んだ大樹の方がおかしい。


 相川の引いたカードはチューハイの一気飲み。穂乃花は官能小説の朗読だった。大樹が大ぶりのグラスに入っているスイカチューハイを一気飲みし、その後に穂乃花が官能小説を読み始めた。


※※※


「静香。命令だ。●●●を舐めろ」

「はい。礼二様」


 静香はカーペットに膝をつき、礼二のズボンを撫でる。既に猛っている●●●はズボンを押し上げており、静香はそこを優しく撫でまわす。そしてズボンのファスナーを降ろした。


※※※


「ストーップ!」


 穂乃花の朗読を遮ったのは響だった。


「小学生のララちゃんがいるからそこまでよ。もう、R18どころかR15でもダメです。ごめんなさいね。ララちゃん」


 響がララに向かって頭を下げた。穂乃花、そして信恵と恩恵も頭を下げた。


「もっと過激な表現をされても平気ですから。全部読んじゃえばいいのに」


 平然と答えるララだった。しかし、相川は首を振りながら、「やはりダメだ」とブツブツ言っていた。


 その後も、「唇のキス」とか「ブラのホックを外す」とか、わけの分からない罰ゲームが続いた。ちなみに、ホックを外されたのは響で、唇同志のキスをしたのは双子の林姉妹だった。


 こんなノリについていけなかったのか、ララは途中から眠ってしまった。そして、美人姉妹を目の前にして緊張しまくっていた大樹も、早々に酔いつぶれてしまった。


 穂乃花は酒にめっぽう強いようで、よく飲んでいたわりには元気だったし、響と林姉妹は飲み方が控えめだったので、酔った風でもなかった。男性陣は大樹がつぶれてしまっただけで、俺も相川も相模原も元気そのものだった。


「二次会はカラオケに行く予定なんだけど。どうかな」

「行こうよ。みんなで」


 相川と穂乃花が誘ってくるが、俺はララを連れて帰らなければいけないし、潰れてしまった大樹の面倒を見なくてはいけない。


「俺が大樹を連れて帰るよ。タクシー使えば何とかなるだろう」

「ララちゃんはどうするの?」


 突っ込んで来たのは美人姉妹の姉、恩恵だった。


「一緒にタクシーに乗せる。大樹を部屋に連れて行く間は待っててもらうさ」

「なるほど。じゃあ私も行く」

「私も」


 恩恵と信恵の林姉妹もついて来るらしい。三人いれば何とかなるだろう。二人で大樹を運び、その間、もう一人にララを見てもらえればいい。


「お前たちは二次会で楽しんで来いよ」

「私たちの事は気にしないでね」

「さよなら」


 俺と林姉妹が声をかけた。四人は笑顔で手を振りながら、二次会のカラオケへと向かって行った。


 俺たちはタクシーを呼び止め、三人がかりで大樹をリアシートに押し込んだ。その横に恩恵が座り、俺はララを抱いて恩恵の隣に座る。助手席には信恵が座った。恩恵は大樹の運転免許証を財布から抜き取って、運転手のアンドロイドに住所を伝えた。俺は場所を知ってはいるが、自動運転なので住所を伝えた方が早い。大樹のアパート前に到着したと同時に、大樹が目を覚ました。そして、タクシーを降り、道端で盛大に嘔吐した。信恵が大樹の背をさすっていた。

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