第23話 危険な合コン始まります
「もうすぐ予約の時間だ。中へ入って自己紹介をしよう」
そう言って仕切るのが
俺たちの席は、奥の座敷に用意されていた。子供が一人増えたのだが、特に問題はなかったようだ。
男性陣と女性陣が向かい合わせに座る。一番奥に陣取った俺の、更に奥側にララが座った。仕切り屋の相川から自己紹介が始まった。
「経済学部二年の
そうだった。この社交的な男もある意味オタク趣味の持ち主だった事を忘れていた。髪はロン毛でストレートにしているし、見かけもオタクな風貌ではある。服装は地味で、ブルー系のカラーシャツに黒系のカーゴパンツを合わせていた。
「同じく二年の
相模原がアニメ趣味だとは知らなかった。こいつならゼリアや椿さんと話が合いそうだ。体形はどちらかと言うと肥満で眼鏡を掛けている。白いTシャツのロゴには『Starship Breakers』のロゴがプリントされている。これも何かのアニメなのだろうか。ズボンはオーソドックスなブルージーンズだ。彼も古いタイプのオタク的な外見をしている。
「経済学部二年の
なるほど。合コン後も写真をネタにつながりを持とうという魂胆らしいが、果たしてそのような需要があるものだろうか。現在では携帯端末で簡単に撮れるし、カメラ自体も高性能化しておりAIの補正もあって一眼カメラにも負けない写真が撮れるらしいからな。大樹は筋肉質でマッチョタイプだが、運動部には所属していない。チェックの半そでシャツにダボダボのブルージーンズをはいている。
次は俺の番だった。ちなみに、俺の服装は黒のポロシャツとブラック系のジーンズだ。
「
こんなところで趣味を偽っても仕方がない。他のメンバーも正直に言っていたし、今夜はそういうオタクの集まりなのだろうと思った。
「ララ・バーンスタインです。アメリカから来ました。お家があるのはカリフォルニア州のサンディエゴだよ。正蔵お兄ちゃんは、私の彼氏なの」
可愛らしい女の子っぽい服装の、白い半そでのワンピースを着ているララだった。彼女はそんな自己紹介をしながら、俺の右腕を掴んで体を摺り寄せてくる。その態度に周囲がどよめいた。いや、そもそもララは何を考えているんだ。実は150光年離れたアルマ帝国の第四皇女で、しかも皇帝警護親衛隊の隊長で、あのめちゃくちゃ強いレイダー軍曹を3秒でノックアウトする格闘家なんだぞ。しかし、この場にいる全員がおませな小学生としか思っていない。これはもしかして……。
「椿さまに折檻されるよりはいいだろう。少しは我慢しろ」
ララに耳元で囁かれた。これはアレだ。いわゆる他の女性がくっつかないよう見張っているという事だ。ララの息が耳元にかかり、こそばゆくて顔をそらしたその時に、睨まれているのに気づいた。視線の主は、あの、アニメ鑑賞が趣味だという相模原だった。まさか彼は、ロボ系ではなくロリ系が趣味なのか?
「じゃあ今度は女性陣ね。私は
快活な印象だが、恰幅も良い女性だ。白いブラウスにブルー系のフレアスカートを合わせているが、胸元はロケットのように飛び出ていて、ブラウスのボタンがはじけ飛びそうだ。胸も立派だが土台も立派で、結構なおデブさんだった。小説投稿の趣味はやはりオタク系なのだろうか。
「
「響ちゃん。ここでバラさないでよ。あ、エロっていってもR18とかじゃなくて、ちょっとエッチな雰囲気の恋愛系だから。ええっと、大丈夫だから」
と、穂乃花がモジモジしながら弁明している。恋愛系の小説を書けば、男女の絡みも少しは出てくるのだろうが、そこを指摘されるのは恥ずかしいらしい。響は小柄で、いわゆる幼女体形だった。黒系のTシャツに白いパーカーを羽織っている。ホットパンツから覗いている細い脚が印象的だ。穂乃花と並ぶことで、二人の体形がより強調されているのはどうなのだろうか。
「
間髪入れず、隣にいた女性が自己紹介を始めた。
「
良く似た二人だと思ったが、やはり双子の姉妹だったのか。ベージュ系のワンピースを着ている信恵は、黒髪ストレートのロングだ。恩恵の方はオレンジ系のワンピースを着ていて、茶髪でセミロングだった。同じ髪型で同じ服を着ていたなら見分けがつかないだろう。二人とも細面で色白。スタイルも良く、今夜のメンバーでは間違いなく抜け出ている美女だった。
なるほど、女性陣はアマチュア小説家に古典SF愛好家、古いコミック収集家だ。男性陣もだが、何ともオタクなメンバーが集まった訳だ。
そこで突然、相模原がララに話題を振った。
「ララちゃんは何が趣味なの? 日本の文化ならどういうのが好きなのかな?」
「うーん。時代劇かな。鬼平とか必殺とか、座頭市とか?」
「チャンバラが好きなの?」
「そうですね。勧善懲悪みたいな、悪い奴をガツンってやっつけるみたいなのが大好きです。忍者も好き。忍者ならやっぱり赤影かな?」
ララの返事に周囲がどよめく。
鬼平犯科帳と必殺仕事人、そして座頭市はわかったのだが、赤影とは……。そんな時代劇があったのだろうか。
「ララちゃんいい趣味してるね。特撮も好きなんだね」
「はい。変身忍者嵐とかも大好きです!」
再び周囲がどよめく。古い特撮番組なのだろうが、俺にはさっぱりわからなかった。
「『仮面の忍者赤影』……原作は横山光輝の『飛騨の赤影』ですわ。特撮ドラマ化され、『仮面の忍者赤影』とタイトルが変更されました」
「『変身忍者嵐』は石ノ森先生が原作の特撮ドラマですわ。時代劇版仮面ライダーを目指して制作されましたが、視聴率では苦戦を強いられています。ウルトラマン
「同時期に制作された特撮時代劇では『怪傑ライオン丸』と『風雲ライオン丸』というのがありますわ。『変身忍者嵐』よりもこちらの作品の方が知名度は高かったのではないかと思います」
「うん。ライオン丸も大好きだよ」
双子の林姉妹の解説に頷いているララだった。突如始まる特撮時代劇談話に、男性陣はついて行けず肩身が狭が狭くなっている様子だった。しかし、女性陣はまるで違っていた。特撮変身ヒーローものについて熱く語る金髪女児と教育学部の女子大生がその場を席巻していたのだ。
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