神スキル【歩くだけ】で爆速レベルアップ!!!~ハズレスキル【健脚】が【神脚】に覚醒した俺、ウマ耳娘と共に最弱から最強の冒険者へ

ゴールドユウスカイ

ルデル、チートスキルを得る

第1話 ガチャでハズレスキルを引きました

  強くなりたいのであれば、歩けばいい。

 くじけても立ち止まらず、理不尽な目にあってもうつむかず、迷っても背を向けず。


 ただひたすらに、歩けばよいのだ。




 真なる勇者ルデル・ハートが残したとされる言葉



 ****



 「ヴェルト大陸を脅かした魔王を倒せしかつての勇者、エアロンの意思を継がんとする者たちよ。いまだ世界に点在し、罪なき人を脅かすダンジョンに挑む冒険者たちよ」


 春のうららかな陽気に包まれた街バースにある古びた教会。


 【適正の儀式】《てきせいのぎしき》に参加するため集まった15歳の男女数十人の前で、年老いた神官が叫んだ。


 「今こそスキルを授け、邪悪なモンスターに立ち向かう力を与えん。呼ばれたものから順番に前に出るように。まずは…ルデル・ハート!」


 「は、はい!」


 まさかの1番目だったため、少し声がうわずってしまう。 

 足をもつれさせながら神官の元へ向かうも、心の中ではワクワクを抑えられずにいた。


 (いよいよ僕も冒険者か。なんのスキルを与えられるか知らないけど、絶対に成り上がってやる!)


 魔王パズズ亡き後も各地に存在し、人々の安全と生活を脅かすモンスターが常に出現するダンジョン。

 それを攻略するという命がけの仕事と引き替えに、絶大な富と名声を得られる冒険者。


 子供の頃からずっと憧れていて、とにかく見よう見まねで剣の練習を続けてきた。

 いや、別に剣でなくてもいい。


 与えられたスキルをもとにクラスを選択し、極めていけばいいのだ。


 魔法のスキルなら【魔術師】エンチャンターのクラス。

 弓のスキルなら【射手】アーチャーのクラス。

 盾のスキルなら【盾持ち】タンクのクラス。


 力を得られるなら、なんだって構わない。

 伝説の勇者エアロンのように、歴史に残る冒険者になってみせる!


 ついでに、可愛い女の子との出会いなんかもあったりして…


 「ヴェルトに住まう神よ!この者にふさわしいスキルを与えたまえ。【スキル授与】!」


 おっと、今は集中しないとな。


 神官が手に持つ杖を振ると、体が熱くなっていくのを感じた。

 ヴェルトの神が呼びかけに応じ、僕にスキルを授けたに違いない。


 一瞬の沈黙の後、与えられたスキル名が高らかに宣言された。




 「ルデル・ハートのスキルは、【健脚】!」

 「はっ?」



 ****



 「はい、次の方お願いしまーす」

 「ちょ、ちょっと待ってください!」


 やる気のない町医者のように次の人間を呼ぼうとした神官に俺は食い下がる。


 「あの、【健脚】ってなんのスキルですか?」

 「…えー、ヴォルトの神によると『歩いたり走ったりしても疲れにくい』だそうじゃ。【荷物持ち】ポーターのクラスにぴったりじゃの。詳しくはギルドで確認してくれ」

 「いや、【荷物持ち】ポーターって臨時に雇用されるほぼ一般人じゃー」

 「ええい、うるさい!とにかくそなたの【スキル授与】は終わりじゃ!誰か、こいつを摘まみだせ!」

 「はっ!」

 「ま、まってくださああああああい!」

 「まったく…次はイーサン・ギボンズ!前に出なさい!」


 抗議もむなしく、僕は衛兵に連行されていく。


 「可哀想に。ああいうのを【ガチャが外れた】って言うらしいぜ」

 「まったくだ。ところで、ガチャってなんなんだ?」

 「さあな。言い伝えによると、ヴェルトに住む古の神々が、食事や睡眠よりも優先したものらしい」


 周りの人間の嘲笑や哀れみを一心に受けながら、教会からどんどん遠ざかっていった。


 

 ****



 「はあ…」


 夕暮れにさしかかるバースの街を歩きながら、僕は途方に暮れる。

 最悪の【適性の儀式】が終了してはや数時間。


 ー…うん、ルデル・ハートくんのスキルはたしかに【健脚】だね。これが【スキルシート】。


 バースのギルド集会所にいた黒髪の18歳受付嬢エレナさんからもらった、冒険者の状況を教えてくれる石板【スキルシート】。

 文字だけでなく音声を発することもあるという不思議なシートには、こう記されていた。


 =====



 スキルシート(1日目)


 名前:ルデル・ハート

 種族:人間

 レベル:1

 クラス:登録待ち

 ランク:F

 所属パーティ:なし

 称号:なし

 レベルアップに必要な経験値:0/10000


 HP:100

 MP:0

 攻撃力:3

 防御力:3

 素早さ:2


 スキル:【健脚】~歩いたり走ったりしても疲れにくい

 戦技:なし

 武器:なし

 


 =====


 なぁにこれぇ。


 人間離れしたスピードと脚力を持つ【ウマ耳族】レベルならまだ分かるが、ただ持久力に優れてるだけ。


 罠の解除や宝箱発見ができる【泥棒】シーフクラスのように、ダンジョンの探索に役立つわけでもない。

 普通ならスキルと共に1つは覚えるはずの戦技せんぎもゼロ。

 ステータスの変動もゼロ。

 実は特殊なクラスが選択できる…もなし。


 頑張って見回しても、ダンジョンを攻略するための能力は一つもなかった。


 これでどうやって戦えばいいんだ!?


 ーま、まあそんな気を落とさないで。とりあえずクラスは【荷物持ち】ポーターにしておきましょう。頑張ってレベルアップすればクラスチェンジもできるし。何かあったら、私にいつでも相談してね!


 落ち込む俺を見てエレナさんが気を回すが、それでも気が晴れることはない。

 

 


 とりあえず、一般人や臨時で雇われた荷物持ちがダンジョン攻略に参加する時に登録するクラス、【荷物持ち】ポーターとして最低のスタートを切るしかなかった。


 

 =====



 「おや~~~!こんなところに今日の冒険者さま第一号、ルデルさまじゃありませんか〜〜〜!さっそく、【荷物持ち】ポーターとして素晴らしいスタートを切ったようですね~~~!」  


 なんとか宿屋に向かおうとした時、左の頬に傷がある金髪の男と、数人の取り巻きがいた。


 先ほど【適正の儀式】の場にいたイーサン・ギボンズだ。

 

 同じ村に住んでいた顔見知りだが、親が広大な領地を有する貴族であることを鼻にかけ、周りの人間を常に馬鹿にしてきた。

 

 僕には特に敵意を向けている。

 理由はわからない。


 「フヒヒヒヒ!ギボンズさん、そんなに馬鹿にしちゃいけませんよ。可哀想じゃないですかぁ」

 「そうよそうよ、早く冒険者なんてさっさとやめるよう勧めるべきだわ!ギャハハハハハ!」


 こんなやつでも、金の力で常に数人の取り巻きがいる。

 どこまでも不愉快なやつだ。


 「どけ」

 「ああ?」

 「お前たちも明日から忙しいだろ。僕に構ってる暇はないはずだ」

 「…ちっ、じゃあそうさせてもらうわ。誰かさんと違って、俺は【強弓】っていう立派なスキルをもらって【射手】アーチャークラスになってるんでね〜〜〜。最初から戦技も1つ使えるし、最高のスタートですわ〜〜〜」


 これまでの恨みも込めてギボンズを睨んでやると、一瞬怯んだが、すぐ余裕そうな表情に戻る。

 そして、背中に背負っている弓を取り出し、矢を1本引き絞り始めた。

 右腕が赤々と輝き、イーサンが戦技を発動する最中であることを告げている。


 目標は、上空を飛ぶ鳥の群れ。


 「【チャージ・ショット】!」


 弓が目にも止まらぬ速さで飛び立ち、鈍色の衝撃波と共に群れを襲うのがはっきりと見えた。


 「ギャアアアアアアアッ!」


 悲鳴と共に数十匹が一瞬で即死し、上空からバタバタと落ちていく。

 スキルと戦技を組み合わせれば、本来なら人智を超えた強大な力を発揮できるのである。


 …僕以外は。


 「じゃあ私は【癒しの力】スキルでみんなの回復役ね!」

 「防御力を強化できる【鉄壁】があるから【盾持ち】タンクは任せろ!」


 取り巻きたちも各々の武器や道具を取り出し、スキルを誇示し始めた。

 悔しさのあまり、俺はその場に立っていられず、背を向けて走り出す。


 「おいおい、ルデル・ハートくんが逃げ出すぞ〜〜〜!」


 くそくそくそくそくそくそくそ。


 僕のことはまだいい。

 でも、あんな奴にちゃんとしたスキルと技を与えるなんて。


  


 ヴェルトの神は、貢物みつぎものを貪るだけの役立たずだ。 




  あとがき


 こちら新作となります!

 ☆1000およびドラゴンズノベル新人賞獲得を目標に、明日からも毎日更新していく予定です。

 「面白い!」と思った方は、下の応援ボタンや・☆等々いただけるとモチベーションになりますのでなにとぞ~。


 

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