ミドル・フェイズ④ ―ロールプレイをやめられない4人―
シーンプレイヤー:エンリコ・アルベルティ
穴だらけの車で、エンリコは駐車場へとハンドルを切った。
「コイツはここで捨てる。俺のツテで次の車が用意されている手筈だ。」
駐車ラインに従い、行儀よく車を枠に詰め込みながらエンリコは言った。
車外にでたエンリコは、「こっちだ。」と皆を促して、予定通りに次の車へと向かう。
そこには、スモークによって車内を確認しづらいワゴン車が停車していた。
「…手慣れているな。」
カルロが、低い声音で話す。
「まぁ、仕事柄ね。色々と『運ぶ』ことは多いのさ。」
エンリコの声色は変わらず、平然としていた。
GM:…ずいぶんとプロ仕様で…、防弾装甲や防弾ガラスが使われていそう。
エンリコ:何?ボーナスで装甲値上げてもらえる?
GM:そうですね、装甲値6点の防弾使用って感じにしてあげましょう!やったね!
エンリコ:前の車と同じ装甲値じゃないか!
シルヴァーナ:購入判定をしてるわけじゃありませんし。
エンリコ:では、予定通りに車で市中を流しながら…。
エンリコ:「ここは、お互いの事情や情報を出し合って状況を整理しないか?」
シルヴァーナ:「そうですね、私達は偶然にも襲撃に居合わせただけ…でも、無いでしょうし。」
GM:今、現時点で調べられる情報は以下の4つになります。
●エヴェ“フェイト”サヴァーニャ
●エリオ“ストラーダ”ラフェッロ
●“ヴァローナ”ユーリ・チェレン
●イブ・ワイズマン
GM:まだ、開示されてない情報があります。
エンリコ:とりあえず、運転手のオレは『
湯河原:「慣れていますね…、皆さん。」
カルロ:「こんな芸当は、普通の奴にはできないだろ。」
シルヴァーナ:「あら、貴方の射撃の腕も大したものじゃない?」
カルロ:「この街じゃ、俺くらいの腕前の鉄砲玉がいくらでもいるさ。」と言って肩をすくめるよ。
「そうなんですか?『暗殺者』さん。」
どこか、値踏みするとも…嘲笑するともとれる口調でシルヴァーナは、その言葉を口にする。
全員に緊張が走り、車内の空気が変わるのが肌で感じ取れた。
GM:その言葉を聞いて、エヴァがカルロに向かって言います。
GM:「アナタ…殺し屋だったの?」
カルロ:答えられずに、押し黙りましょう。
エンリコ:「ちょっと、口が軽すぎやしないか?」とシルヴァーナに。
カルロ:「今の俺は殺し屋じゃない…、この女の護衛だ…。」
シルヴァーナ:「そう、ならよかった。私達の誰かの体に風穴を開けられてはたまらないからね?」
カルロ:「その発言は、見逃してやるよ。」
シルヴァーナ:「それは、どーも。」
カルロ:「二度目はない。」
エンリコ:うーん、唐突に始まったバチバチに置いて行かれた感じだ(笑)
GM:湯河原は大丈夫ですか?
湯河原:(生暖かい笑顔)
エンリコ:「しかし、ラフェッロの切り札である、『
シルヴァーナ:「えっと、貴女は『エヴァ』さん?」
GM:「はい、そうですが。…もしかして、アナタはシルヴァーナさんでしょうか?」
シルヴァーナ:なんで、彼女が私の名前を?
GM:「アナタの演奏、聴かせてもらいました。素晴らしい演奏で、感動しました。」
シルヴァーナ:「えっ!そんな!私の演奏なんて全然だし!そんなこと言われるほどでもないくて…。」
シルヴァーナ:顔を真っ赤にして目をそむけます。褒められるのには慣れていないんですよ。
(カルロに対するキツイ当たりからの豹変っぷりである。)
湯河原:では、エヴァさんとシルヴァーナさんの話しの間に割って入ろう。
湯河原:「で?貴方がたは何者なんですか?」
GM:「えぇ、ワタシも知りたいです。先ほどは、途中で気絶してしまいましたが…。シルヴァーナさんが、ココにいる事実も気になります。」
GM:実際はワーディングの影響ですが、エヴァは知りませんからね。
シルヴァーナ:「ええ!そうね。知りたいわよね…ふうぅーーー。」
(GM:なぜ、そこまで照れる!?)
シルヴァーナ:「そうね、私はUGNという組織に属しているの。」
(一般人に秘密組織の名を言っていいのか!?腕利きエージェント!)
カルロ:(嫌悪感をあわらにしつつ)「名前だけなら聞いたことなるな。」
湯河原:「あの、血なまぐさい連中ですか。」と少し強めの口調で…ロイスのネガティブ感情がここで芽生えました。
エンリコ:バックミラー越しに『話を続けろ』と言った視線を送るよ。
GM:エヴァは頭をかしげながら多分いろんな組織を頭に浮かべてるんだろうけど…覚えがないって感じですね。まぁ、秘密組織ですし。
シルヴァーナ:「あまり、深く関わらないほうがいいわ。」
GM:うーん、エヴァにとって唯一の頼れそうな人物が超やばい危険人物にしか見えなくなってきた。
シルヴァーナ:「私やUGNは、貴女をどうこうする気はないけどね。」
GM:余計、怖いわ!!
カルロ:「そういや、アンタも何者なんだ?バタバタしちまって聞きそびれてしまったが。」と湯河原に聞くよ。
湯河原:「わたくし、こういう者です。」といって、名刺入れから名刺をサッサと取り出して渡しましょう。
一同:名刺!!??
湯河原:日本人の社会人マナーですから!(キリッ)
カルロ:貰った名刺を見ながら、「アンタ、ジャポネーゼか?」
湯河原:「湯河原裕斗です。気軽に裕斗とお呼びください。」
カルロ:「OK。ユート、アンタは何でこの子に近づいたんだ?」
湯河原:「ボクの目的は彼女をこの危険な状況から逃がすことです。」
湯河原:国外逃亡をさせるために来たとは言いません。
GM:シナリオの想定とはいえ、腹の探り合いですね。お互いのお腹の色が気になりますな~。
湯河原:(GMを無視して)「残りのお二人は…なんで、ボク等を助けたのでしょうか?」
シルヴァーナ:「さっき、私達の車に生身で追いついたロシア人がいたじゃない。私達はアイツを追いかけている。で、アイツの宿泊していたモーテルに『コレ』が資料と共にあったのよ。」
シルヴァーナ:と言ってモーテルにあったエヴァの写真を見せよう。
GM:では、その写真に『エヴァ“フェイト”ラフェッロ』と記述されています。そうですね、ここでエヴァに関する情報を調べていただけませんか?使用できる技能は《情報:噂話》《情報:裏社会》《情報:警察》です。
エンリコ:全員で振るか。
おのおの、指定された技能で一番ダイスが振れる技能で判定を行う。
シルヴァーナ:〈コンセントレイト:ハヌマーン〉と〈ベーシックリサーチ〉を組み合わせて判定しますよ!……ふっ、達成値は聞かないで…。
(〈ベーシックリサーチ〉→ハヌマーンのエフェクト。情報収集判定にボーナスがある。)
湯河原:達成値30です!(シルヴァーナ:ぐほぉ…。)
GM:目標値8なので問題なく情報が出ます(シルヴァーナ:あばー!)
情報項目:エヴァ・フェイト・サヴァーニャ
フィレンツェの普通学校に通う少女。
実は、マフィアの家系の生まれであり。アメリカ人の母親は、重圧に耐え切れず本国へエヴァを残して去ってしまっている。
現在は、祖父の家に預けられており。そのため、名乗りが祖父のファミリーネームであるサヴァーニャとなている。祖父の名は、アベッキオ・サヴァーニャ。厳しくもしっかりとエヴァを育てたた人物。エヴァも祖父には懐いている。
彼女の本当のファミリーネームはラフェッロであり、ラフェッロ・ファミリーに母を同じとする兄がいる。
GM:以上が、ヴァローナの持っていた資料から読み取れる情報です。
カルロ:ピンとくるなぁ…。
GM:まぁ、明確な情報はまだ出ていませんから。ここで、追加の情報項目「エヴァを狙う者」が開示されます。
エンリコ:うーん、カフェの襲撃のことか…ヴァローナの事なのか…。GM、一番最初の一般人のマフィアが狙ったのは誰なのか分からない?
GM:(一般人のマフィアってなんだろうか?…)わかりませんね。車で三人まるごと庇ってしまいましたし。
エンリコ・シルヴァーナ:うーん、それもそうか。
GM:ただ、彼らはラフェッロ・ファミリーを名乗っていました。
一同:…。
エンリコ:…俺の素性…最低でも目的を話したほうが良いようだね。
一同:できれば。
エンリコ(笑いながら)まぁ、いつまでもしがない文屋と名乗り続けたら、睨む奴がいるしなw
シルヴァーナ:じーーー。
カルロ:では、オレが切り出そう…
「…アンタ、警察だろ?」
カルロが、運転をしているエンリコに鋭く言葉を突き付けた。
バックミラー越しにエンリコが目線をよこす。
「少なくとも、この車の中では同盟関係でいたかったんだがなぁ…。」
嘆息と共に吐き出されたエンリコの言葉には、『あきらめ』の感情があった。
シルヴァーナ:「同盟なら、一人だけ隠し事が多いのは良くないんじゃない?」
エンリコ:「…私の詮索を避けてもらえるならば、私の話をさせていただこう。」
カルロ:目をつぶって、話しを促すよ。
エンリコ:「私の知る限りでは、ラフェッロ・ファミリーは跡目争いで内紛状態だ。しかも、そこに世界的な犯罪組織である『ギルド』が関わってきている。しかし、先ほどの襲撃をみると事はそう単純ではないらしい。」
エンリコ:「そのあたりの事情は、そこの『殺し屋』さんの方がよく知っているのではないかな?」
GM:みんな情報を小出しにしてくるね。湯河原クン。
湯河原:なんですか?GM。別にボクに他意はないですよ?
カルロ:「オレは…『親友』からこの子の護衛を依頼された、それ以外の目的も事情も知らされてはいない。だが、『親友』からの依頼である以上は、何があっても完遂する。」
GM:「アナタはただ『あの人』に依頼を受けただけではないのですね…。アナタにとって『あの人』はどんな人なの?」
カルロ:「家族…親友…仕えるべき主…言葉にできないほど大切な奴だ。」
「なによりも、途方に暮れていた俺を救ってくれた…。命の恩人だ。だから、オレはアイツに忠誠を誓う。」
GM:「そう、『あの人』は私の護衛にそんなアナタを付けてくれたのね。」
GM:そう言う、エヴァの表情は寂しさだけではなく少し嬉しそうでもある複雑なモノになります。
一同:…
GM:……あの皆さん、情報取集していいんですよ?
一同:いあや、ロールプレイに熱中しちゃってて。
シルヴァーナ:じゃぁ、私からしましょう。調べるのは当然「ユーリ・チェレン」についてです。
GM:《情報:裏社会》《情報:警察》《情報:軍事》で調べられます。
シルヴァーナ:では、《情報:裏社会》で調べましょう。エフェクトやアイテムをもろもろ使用して…。達成値は26です。
GM:OKです。以下の情報が手に入ります。
情報項目:“ヴァローナ”ユーリ・チェレン
ギルドに所属するロシア系の殺し屋。現在は、『ラフェッロ・ファミリー』の抗争に加担している。
依頼主の命令により、『ラフェッロ・ファミリー』の構成員や幹部連中を殺している。
ヴァローナを雇い入れているのは、ラフェッロ・ファミリーの新派閥のほうである。新派閥はこれを機に、国際的なつながりを持つギルドに取り入るつもりらしい。
シルヴァーナ:では、その情報が私の持ってる通信端末に届きます。アイテムである[情報収集チーム]の演出です。「引き続き、捜査を続けてください。」とメッセージを返信しましょう。
(情報収集チーム→アイテム。情報収集の達成値を上昇させる優秀なアイテム。)
GM:で、追加で「情報項目:ギルドの真意」が追加されます。あと、情報をみんなと共有するかは宣言をお願いしますね。
シルヴァーナ:了解。この情報は皆さんに伝えますよ。
エンリコ:「ファミリーの『殺し屋』であるアンタは何も聞かされてなかったのか?」とカルロに聞こうか。
カルロ:「少なくとも、この依頼を受ける時にそんな話はなかった。」
カルロ:じゃぁ、オレは「情報項目:エリオ“ストラーダ”ラフェッロ」について調べよう。コネも無いのでそのまま振ります。
シルヴァーナ:…ん?情報収集を補助するアイテムとか持ってないの?
カルロ:ないよ~。
エンリコ:…銃を常備化したせいか。
カルロ:全財産を武器と防具の常備化につぎ込んだぜ!
一同:それでいいのか!暗殺者!(一同笑)
GM:トモダチは、エリオだけだったようだ…。
(はからずも、ファミリーの内情を全然知らない情弱の殺し屋に説得力ができたカルロであった。)
カルロ:達成値は7ですね。
GM:今回は情報は達成値毎に出てくる情報が細分化されています。達成値7だと以下の情報までですね。
情報項目:エリオ“ストラーダ”ラフェッロ
フィレンツェで最も影響力のあるマフィア。『ラフェッロ・ファミリー』の次期当主と目される男。古い因習によって雁字搦めファミリーを変えたいと考えていた。
GM:彼は、因習にとらわれたファミリーを変えるつもりです。『血に縛られない実力者』の重用…カルロみたいな根無し草だがファミリーに貢献する人材を高い地位に据えるためと言えますね。
GM:ただ、全部の情報が出ていないため追加の情報項目が出てきません。
カルロ:重要な情報はもうちょっと達成値が必要なのか。とりあえず、俺の知る限りのラフェッロ・ファミリーの事について話す感じで皆に伝えるよ。
GM:ラフェッロ・ファミリーというか、エリオについての熱い語りですね。カルロにとってのラフェッロ・ファミリーとはエリオそのものって感じだなぁ…。エモい。
エンリコ:2人のつながりの深さに感慨深さを感じるなぁ。
湯河原:じゃぁ、次はボクですね。イヴ・ワイズマンさんについて調べましょう。
GM:《情報:噂話》のみです。
湯河原:達成値は22ですね。
GM:目標値を大きく上回りますね。では、以下の通りです。
情報項目:イヴ・ワイズマン
エヴァの母親。マフィアの跡取りと恋仲になり2児を設ける。しかし、マフィアの一族になるという重圧にたえきれず泣く泣く自分だけ帰国。
現在は、深くそのことを悔やんでいる。今回は、エヴァの祖父からの情報で娘の危機を知り、国外に逃がすためにギヨーム財団に相談した。2児にはそれぞれ、“フェイト”と“ストラーダ”というミドルネームが与えられている。
シルヴァーナ:おー、重要な情報ですね。
湯河原:というか、完全にトリガーやフラグの情報に見えます。
GM:はい、今回のシナリオの肝なんですけど。今回は得た情報を『誰』に『どう伝える』かが重要です。それで、今後のシナリオの流れが決まるので頑張ってください。
湯河原:おそろしいなぁ。
シルヴァーナ:主役になれますよ湯河原さん。
カルロ:キーマンは湯河原だったか。
GM:イヤイヤ、全員がキーマンになる可能性があるからね。
湯河原:とりあえず、この情報はキャラクター間では開示しないで置きます。依頼人にも関わりますし…。知りたければ、話したくなるような演出やロールプレイを要求します!
湯河原:エヴァには「ボクに依頼をした人は、アナタの事を本当に心配しています。」と伝えましょう。
「『アノ人』は、私を棄てたのよ!祖父の元において自分だけ逃げたのよ!!」
GM:エヴァは、キミの言葉をはねのけるように言いますよ。最後には俯きながら「なんで、ワタシを置いて行ったの…。」と肩を震わせます。
シルヴァーナ:(ボソッと)「待っている人がいるだけ、マシでしょうに…。」
(GM:…独り言?)
エンリコ:とりあえず、私がエリオの後ろ暗い部分を調べてしまおう。話すかは…内容を聞いたうえで。達成値は20ですね。
GM:では、以下の情報を渡しましょう。
情報項目:エリオ“ストラーダ”ラフェッロ
ファミリーの方針を大きく変ええるつもりらしく、それによって旧派閥と新派閥に分かれた『ラフェッロ・ファミリー』は内部分裂状態になった。エリオ自身のコネクションによって、増強された戦力により新派閥が旧派閥を次々と粛清している。
噂では、そのコネクションによって招かれた客分は、異能の力を振るうともっぱらの噂である。
GM:すべて情報が出たので「情報項目:ファミリーの抗争」が開示されますよ。
エンリコ:「『ガンスリング・レクイエム』。あんたにっとってエリオが信用できる相手だとしても…向こうがそう思っているかは、わからないだろ?」
カルロ:「どういうことだ?」
エンリコ:「隣のお嬢さんに聞かせる内容じゃない…とは、思うが。巻き込まれている以上は話すのがスジだろう。」
エンリコ:「今のこの街では、ラフェッロ・ファミリーの新派閥と旧派閥による争いが起こっている。その新派閥を率いているのがキミの親友だ。すでに相当数の旧派閥に与する人間が『粛清』の名のもとに殺害されている。」
カルロ:「粛清…だと?」
エンリコ:「さらに、キミの親友は『私達みたいな奴ら』を呼び寄せているらしい。」
カルロ:…どうしようか…マジで悩むぞ?
GM:では、イベントです。
闇の世界の暗闘をよそに、フィレンツェの街の表側は平穏だった。
恋人同士で手をつなぐ者。
肩を組む親友たち。
母親と手を繋ぎはしゃぐ兄弟。
エンリコが運転するバンが、赤信号で止まる。
その時だ、エヴァが手に持っていたクリアケースを投げ、車のドアを開けた。
「もう、何も考えたくない!!」
自分が大切にしていた楽譜すら投げ捨てて、少女は街中へと駆けた。
GM:では、ここでシーンを終えます。追いかける・追いかけないでプレイヤー側も分かれるでしょうし…何よりも、シーンを閉じないと〈ワーディング〉って言われて、エヴァが逃げれない!
一同:台無じゃねーか!!(一同爆笑)
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