第26話 2021年6月6日(日) 誕生日
6月6日の母の誕生日の準備をするため、私は6月5日の土曜日から実家に戻っていた。
誕生日プレゼントについては、私の分は先週に日記とペンを贈ってはいるのだが、流石に誕生日なのに実家に手ぶらで戻るのも何なので街の洋菓子店でケーキを買って持ち帰ることにした。
土曜日は実家に戻った後、私は菜園の手入れをして、夕食後に母と持ち帰ったケーキを食べて過ごした。
とは言っても、今回のメインイベントは母と下の妹の子供たちとのオンライン通話だ。
下の妹に明日の予定を確認すると、6月6日には子供たちの通う小学校で運動会が開催されるようで、こちらとオンライン通話ができるのは、運動会が終わって帰宅してからなので午後3時からになるとのことだった。
コロナ禍の中なので学校イベントも短縮されているらしかった。
また、今回の母の誕生日に合わせて下の妹は、子供たちに母への手紙を書かせて実家に送っており、母は午前中にそれを受け取っていた。
手紙は姪っ子の姉妹がそれぞれ書いており、小学校1年の上の子の手紙には色鉛筆で描いた母の似顔絵とひらがなのメッセージがあり、保育園の年中組の下の子の手紙にはクレヨンで絵が描かれていてお気に入りのシールが貼られていた。
両方とも子供らしさ溢れるもので、この日、母は何度もそれを見返し、とても上機嫌だった。
6月6日の午前中は上の妹が母の誕生日祝いとして送ってきた牛肉を受け取った。
連絡通り上等な肉だったので、昼食は母がすき焼きにした。
母は出来上がりに満足だったのか、食事の最中にスマホで鍋の中の写真を何枚か取って上の妹に送っていた。
食べ終わって後片付けをしてから少し休むとすぐに3時近くになった。
昨日実家のタブレットにインストールしておいたオンライン通話用のアプリケーションを立ち上げて、下の妹から連絡のあった通話用IDを入力する。
すぐに応答があり、タブレットから妹と子供たちの声が聞こえてきた。
映像は表示されていないので、カメラがオフになっていると伝える。
向こうがカメラの操作をしている間にこちらはテーブルにタブレットスタンド置いてをタブレット固定して母を前にタブレットの前に座るように促した。
こちらのカメラ位置調整をしていると、ガサガサという音の後に向こうの映像が表示された。
タブレットには、下の妹と姪っ子二人が映っていた。
母の姿が向こう側で確認できたのだろう。
「おばあちゃん、お誕生日おめでとう!」
下の妹に促されながら、姪っ子二人が声を合わせて画面越しに母にそう呼びかけた。
「ありがとう」
母は目を細めて満面の笑顔で画面に語りかけていた。
その後は、母は姪っ子二人と時折下の妹を交えながら話をした。
会話の妨げにならないように私はカメラに映らない位置にいた。
母と姪っ子たちの会話の内容は何気ないものだ。
送られてきた手紙の内容、運動会の内容、昨日の食事のこと、最近の出来事といったものだ。
しかし、どの内容でも母はとても嬉しそうに姪っ子たちの話を聞き、姪っ子たちに話しかけていた。
隣でその様子を見て、私はこの試みをやって良かったと心から思った。
これは絶対に母にも姪っ子や妹達の双方の心にいい思い出として残る。
出来れば今後のお盆や敬老の日、クリスマス何かのイベントでも活用していきたい。
そして来年の母の誕生日にも同じことをやって思い出を積み重ねたい。
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