第21話 2021年5月30日(日) 梅雨の風物詩

私の住んでいる地域は梅雨入りしている。

時期的には、今年は例年よりもかなり早い。


そして私にとって梅雨の時期の風物詩と言えば、梅雨の文字にも使われている「梅」が最初に思い浮かぶ。


私の実家の庭には梅の木が2本生えている。

一つは大梅であり、もう一つが小梅の木だ。


今年は梅の実のつき方が良く、これまでに風の強い日も少なかったので地面に落ちてしまっている梅も例年に比べると少ない。

つまりは豊作なのだ。


小梅については、梅雨入りから数日くらいが収穫の頃合いであるため、午前中から母と梅の収穫に勤しんだ。


低い枝の実は直接手でもぎ取り、高い位置のものは高枝切りバサミで枝ごと落として収穫した。


途中、休憩や昼飯をはさみながら作業を続けた結果、10㎏以上もの梅を収穫することができた。

これまでで一番の量だ。


梅の利用法については、私は梅酒を作り、母は梅干しと梅シロップを作ることにしている。

ただし、これは十分な収穫量があったときの話であり、不作の年の場合は、特に何も作らないか一部だけ作るといった具合だ。

自分の家で梅が収穫できるならやりたいが、スーパーなどでわざわざ梅を購入してまではやらないといった具合のモチベーションである。


収穫した梅は、あく抜きのために水に数時間つけておく。

その間に私は、梅酒作り等の準備のために買い物に出かけた。

私は通常では年に一瓶分しか梅酒を作らないが、今年は大豊作なので2瓶分、いつもの倍作ることにした。

漬けるために使う酒の一つは定番のホワイトリカー、もう一つの瓶用にはウイスキーを使うことにした。

銘柄はバランタインファイネスト。

このウイスキーを選んだ理由は、高価なウイスキーよりもこのくらいのお手頃価格帯の銘柄を使う方が、美味しくなった時の変化率が大きく楽しめるからだ。


買い出しから戻り、夕食を食べた後は、水から上げた梅の選別とヘタ取りを行った。

梅酒作りでも梅干し作りでも梅を使う際には、必要な工程ではあるのだが、今年は量が量なので母と二人がかりでやっても3時間以上もかかってしまった。


翌日は月曜日なのだが、明日は私がテレワーク業務なので実家で仕事ができるため、今日に限っては私はアパートに戻る必要がなく、終わるまで作業に取り組めた。


作業の間は、私は母と何気ない話をずっと続けていた。

上の妹が母の誕生日には緊急事態宣言が出てるから実家に帰れないから、誕生日当日に届くように和牛を送った連絡があっただとか、従妹の新婚家庭の状況だったり、近所の人たちについての話をした。


ヘタ取が終わると、梅酒作りでも梅干し作りにおいても、後の作業はそれほど時間はかからない。

私は、2つの瓶に梅酒を仕込んだ。

後からいつ漬け込んだものか分かるよう、ラベルシールに今日の日付を書いてフタに張り付けた。


梅酒は、漬け込んでから年数が経つほどまろやかで深い味になっていく。

途中で梅の実を引き上げたりはするが、個人的には、3年は寝かせた方がいいと思っている。


ちょうどいい機会なので、戸棚にある以前に漬けた梅酒の味を確かめてみることにした。

5年前に漬けた梅酒をグラスに3分の1ほど入れて、炭酸水と氷を注いてソーダ割にした。

母にも半分の量の同じものを作った。

日が変わりそうな時間なので、味見するならこれくらいの量でいい。


少し甘味が強すぎる気もするが、十分にまろやかな味に仕上がっていた。

母はお酒はあまり強くないが、満足そうに飲んでいた。


私は酒は飲み会等のきっかけがないとあまり飲んだりはしないので、漬けた梅酒は中々減らないのだが、梅が収穫できれば欠かさず梅酒を作っている。

自分で漬けた梅酒を飲むときには、漬け込んだ日付のラベルシートを見ると、その時期のことが思い出せる。

なお、この梅酒たちは、実家に親戚が来たりしたときだとか、友達とのバーベキューや鍋会、オフ会などに持って行き振舞われている。


今回漬けた梅酒を飲むときも、後からきっと今日の日が思い出せるだろう。

日曜日の夜に行った大量の梅のヘタ取りと、母とした何気ない会話のことが頭に浮かぶだろう。


今回漬けた梅酒は、今日味見したものと同じように、数年後、私と一緒に母に飲んでもらいたい。

できればその時には、新しい家族も含めて一緒に。


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