勇者、宇宙船で殺人事件の容疑者となる。

@natsumi_tazan

宇宙裁判

宇宙船は常に非現実的だ。地面から最も遠いこの場所は、現実の枠で捉えてはいけない。船長は、それを夢想家すぎると窘めることもあったが今日ばかりは俺の方が正しそうだ。何をしてもナンセンスさを提供する宇宙船という空間に、勇者を自称する(おそらく)人間が湧いて出た。


計器の反射に照らされた得体の知れない人物の顔は今、狼狽と困惑が顔面に敷き詰められている。ただえさえ異常事態なのだが、理由はもう一つある。それはコイツが殺人事件の最重要容疑者だからだ。


宇宙船における犯罪は★間協定において裁かれる。船長が裁判長を兼務すべきだけれど、それより先に被害者として死人なったから、あいにく兼務は不可能に思える。

最年長の俺が裁判長となる最悪な年功序列が発生したが、うだうだしていても仕方がない。宇宙レンチをぶつけ合い金属音を響かせた。開廷のステーキハンマーの代用品としては十分だろう。


自称勇者に、改めて何者かを問いただす。


「船長を殺したのは勇者、お前か?」


「船長、というのはあのモンスターのことだろうか・・・」


確かに船長はヘルスメーター星出身のヘルスメーター星人でヘルスメーターと全く同じ見た目をしいた。奇妙な存在だとは思っていたがヘルスメーターをモンスターと勘違いするのはもっと奇妙だ。モンスターってのはこう毛が生えた薄気味悪い生き物だろう。


「お前の出身ではヘルスメーターをモンスターと呼んでいたのか?」


「いや、ヘルスメーターにはあっていない。ワタシがであったのはスライムだ」


うちの船の唯一の科学者が間髪入れずに口を挟む。


「この宇宙ではスライムは既に絶滅しているぞ!」


★間協定第七十七条、「嘘は死刑」により即死刑執行!壁中から宇宙ギロチンが降り注ぐ!


だが、勇者も負けてはいられない。魔法を唱えると科学と魔法のエーテル値が限界値まで上昇!


宇宙船は爆発!!(Kaboooooom!!!!!!)


・・・


「え~、おばあちゃん死んじゃったの」「そうじゃ、だからお前たちも嘘をつくんじゃないよ」

そこには微笑みながら昔話を語るアンデッド勇者がおりましたとさ。


めでたしめでたし。

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