最弱だからとパーティーを追放された俺は、隠してた力を解放して最悪の貧民街を最強の国にしようと思います。パーティーに戻ってきてくれ?いや、その前に跪け

見上大樹

1章

1話 最強Sランク冒険者パーティー『ドラゴンの牙』

 俺の名前は、ルディ・エグル・アーサー。

 Sランク冒険者のパーティ『ドラゴンの牙』の一員だ。


 俺の見た目は、大人しそうな顔立ちでスラっとした体形。

 かなり弱そうな見た目をしている、16歳の男。


 そんな弱そうな俺を含めた4人チーム『ドラゴンの牙』は、たった今。

 数百年に一体出るか出ないレベルの凶悪きょうあくな存在『悪魔』を倒して、国へ帰ってきたところだった。


「「「「「うおおおお!! 勇者様が帰られたぞ!!」」」」」


「「「「「きゃあああああ~! 勇者様かっこいい~!!」」」」」


 国に帰ると、すごい歓声かんせいる。

 俺らが帰ってくると毎回、こんな感じだ。

 もはやこれは、恒例こうれい行事みたいなものだった。


 でも俺は、こんな声援せいえんなんて全く嬉しくなかった。

 何故ならこの声援せいえんは、俺に向けられた声援ではなく3人の仲間に向けられたもの。

 それが、分かっているのに嬉しい訳がないだろう。


 実は、俺はこの国で『勇者の荷物にもつ』と呼ばれているのだ。

 

 だからと言って、くやしい訳ではない。

 なぜなら、奴らは知らないからだ。


 『俺が、実力を隠している事を……』


 つまり。

 あいつらに、弱いとか何とかいわれても全く悔しくないのだ。

 戦えば俺が100%勝つからな。

 だから俺は、そんな罵声ばせいを無視して街の真ん中にある道を、堂々と進んだ。

 そして『ドラゴンの牙』の拠点きょてんに帰っていったのだった。


 街を抜け、30分ほど歩くと俺らの拠点きょてんは見えてくる。

 その拠点きょてんは、森の中にある。

 理由は、俺ら(※俺以外)のファンから逃げる為。

 わかりやすい所に家があると、家の前までファンが来ちゃうから困るのだ。

 そんな隠れ家みたいな拠点きょてんに、もう少しで着こうとしていた。


 その時。

 急に、仲間の3人が笑い出したのだ。


(何を笑っているんだろう?)


 一応、俺も仲間なので何を話していたか聞くことにした。


「みんなで、何を笑ってるの??」


 その言葉に、仲間のうちの1人が答える。

 名前はイリナ。

 きれいな顔立ちに、キリっとした目の女性だ。

 まさに秘書ひしょ! って顔立ちなんだが、めちゃくちゃ性格が悪い。

 人がいやがることを分かったうえで、徹底的てっていてきにやってくる。

 言わば、女のいじめっ子だ。

 そんないじめっ子の性悪女イリナが、答える。


「あら? 聞いてなかったのかしら? ルディ。アナタを今日限りで、このパーティー追放することにしたわ」


「……はぁ??」


 性悪女イリナの言葉に、俺はおどろいた。

 いくらなんでも、意味がわからない。


「え? なんで急に?」


 俺は、咄嗟とっさにそう聞いてみた。


「今回の悪魔討伐あくまとうばつは、かなりお金が入るわ。そのお金を、パーティーの中で最弱のアナタにあげたくないわ。だからアナタには出て行ってもらうわ」


 俺の疑問に、性悪女イリナが答える。

 そして、性悪女イリナに続いて仲間の2人も俺を馬鹿バカにしてきた。


「うふふ。ホントに残念な男。きもいですわね」

「アハハハハハハ。お前は、パーティーのお荷物なんだよ。それに報酬ほうしゅうは4人で割るより、3人で割りたいからね。アハハハハハハ」


「……」


 俺は、言葉を失った。

 悔しかったからじゃない。

 あきれすぎて言葉を失ったのだ。


 そうして黙っていると、性悪女イリナが再び話しかけてきた。


「アナタは知らないと思うけど、アナタを省いた『ドラゴンの牙』の拠点きょてんがあるのよ。

 だから、今向かっている古い拠点きょてんはあげるわ」


 そう性悪女イリナが言い終わると、再び性悪女イリナに続いて仲間の2人も俺を馬鹿にしてくる。


「うふふ。ホントに残念な男。お荷物にもつですわね」

「アハハハハハハ。ルディ可哀想かわいそうだから目の前の、あの拠点きょてんをくれるって。アハハハハハハ」


 そう仲間たちが言い終わると丁度ちょうど拠点へ到着した。

 その拠点は、木におおわれていてコテージの様な拠点だ。


 俺らは、その拠点の玄関げんかんの前に立った。

 そして、『ドラゴンの牙』の3人は荷物にもつをまとめに拠点きょてんに入っていった。


 俺はというと、だまったままだった。

 もう奴らに言うことは、なにも無い。

 俺は、奴らが荷物にもつをまとめて外に出てくるまで一点を見つめて立ち止まっていた。


 ……20分後


 『ドラゴンの牙』の3人が、ようやく拠点きょてんから出てきた。

 俺はと言うと、未だに止まっている。

 そんな俺に3人は、捨て台詞すてぜりふを言ってきた。


「アハハハハハハ。ルディ元気でね。アハハハハハハ」


 王子様風の男ユーリ。

 思ってない事を口にする奴。


「うふふ。ホントにむなしい男ですわね。ホント最後までかっこ悪いですわね」


 豊満ほうまんのエルマ。

 人を見下すのが好きな奴。


「ルディ。これでもう二度と会うことは無いわ。さよなら」


 秘書ひしょっぽくいじめっ子気質のあるイリナ。

 今の俺の姿を見て笑っている。

 人を壊すのが好きな奴。


 このムカつく3人のことは、一生忘れないだろう。

 奴らが去るまで、俺は一言も発しなかった。


 森がざわざわしている。

 すごく静かなせいか、よく森の音が聞こえる中。

 たった一人ポツンと残された俺。

 奴らは去った。

 もう、俺をしばるるものは何もない。


『力……。もう使ってもいいかな?』


 俺は、そうつぶやいたのだった……。

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