終わらない空

せせらぎ大學(旧 中洲ノ粤犬)

第1話

生きているとふと思い出す……戻らない過去の失態。

幼い頃、遊びで蟻を砂で圧し殺したこと。クラスで一人の女の子を過度にからかって虐めていたこと。

中学に上ると、自分を守るために親に悪い嘘をついたこと。

高校では、話し掛けてくれたクラスメイトを敵視したこと。

大学時代、親のお金で遊び呆けて学業を疎かにしたこと。

野菜や肉、魚を腐らせて捨てたこと。

時が過ぎ、社会人。

会社で、巣から落ちて弱って死んでしまった燕の雛を道端に遺棄したこと。


悪行数えきれず。


生きていると、虫も殺さぬような男でも気付かぬうちに殺戮をしている。

捨てることで、彼らが完成するまでに込められた人の苦労や、物の犠牲、想いまでも蹂躙している。

今、俺はそれらの罪に対して完全なる贖罪はできない。

懺悔して救われるのは「自分の心だけ」だ。

失われたものは、同じ時期、同じ時代に二度と戻ってはこない。

だから、必ず前を向かなければならない。

『使い捨てのものであっても、大事にできるか?』

『決めたことを必ずこなせるか?』

考えるべきだ。

一瞬一秒を大切に。

明るい窓の傍らには漆黒の闇があることを忘れないように。

奈落の底であっても蜘蛛の糸が降りてくることを忘れないように。

自分を欺かないように。


怠けることで困るのは自分だけではない。

これまでの人生に携わってくれた、大勢の親切な恩人達の心まで黒く塗りつぶされる。

なき恩師、なき祖父。

尋常ではない数の人間達から、途轍もない労力が俺に注がれてきたことを忘れてはならない。

「感謝」は自発でなければ、「対応」でしかなく、押し付けがましい思いは「対応」を引き寄せてしまう。

「~してあげる」「~してやる」等の言葉を意識的に使わず、恩を着せない。

自分の意に背く「苦労」はせず、好きなことに関する「努力」をする。


最高の人生を最高の仲間達と。

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