第14話 わからせタイム!? それは嫌ァ! ミートドラゴン戦!
「だぁれぇだぁ? お前ら?」
「ゆーしゃよ!」
「あぁん? ウルスラじゃぁねぇーか。なにしに来た」
カチン、暴食の魔人ミートドラゴンは俺を無視して、ウルスラの方に顔を向けた。魔人の一挙手一投足に怯えるイカルガ。俺は
「このぶらっでぃあっくすのさびにしてあげる!」
錆びないけど。
「だれだぁこの
「だーかーらー! ゆーしゃよ! ゆーしゃ!」
「あぁん? ゆーしゃ……勇者って、ロリの事かぁ? そうか! お前、新しい転生者かぁ!」
なんかこう異世界もので現地で転生者とか言われると萎えませんか。俺だけですか。追伸、母さん、僕は異世界にて元気で幼女をやっています。
「さぁてはぁ、お前ぇ、幼女裁判にぃ負けてぇ来たなぁ?」
「ギクッ」
「ガハハハハァ! 魔王様からぁ俺にぃ負けるようなぁ雑魚はぁロリでもぉ喰っていいって言われてんだぁ! ……そこのぉウルスラはぁ魔王軍に寝返ってぇ難を逃れたぁがなぁ……全く残念だぜぇ!」
「その涎まみれの顔にも飽き飽きしてたところだ。ミートドラゴン、決着を付けよう」
ウルスラは錨を構える。ミートドラゴンの口から涎と共に火が漏れる。一呼吸、一気に吸い込む魔人。殺気を感じ取り、三人の幼女が散開する。放たれる炎の息吹! 洞窟内を嘗め回し、広がって行く。
「ちょっと! ウルスラ! この炎なんとかして!」
「
炎が地面に叩きつけられる。掻き消える。
「あっは☆ ざぁこ!」
「油断するな……奴に重力束縛は効かん」
「へ?」
「元々、重力制御は自身以外の生物には効かんのだ」
……? いやいやスケルトンにめっちゃ効いてたじゃん。
その事を問いただす。
「スケルトンは生物ではない」
一蹴された。え、終わり? 質疑応答終了?
するとミートドラゴンが。
「フン! ファイアブレスがぁ効かんのぉならばぁ! 直接ぅ! 踊り食いじゃあ!」
こちらに掴みかかって来る。それを錨で叩くウルスラ。しかし、二人は拮抗する。ギリギリと後退していくウルスラ。
おいおい重力を制御してるんじゃないのか? なんで押される!?
「ちょっとウルスラ!? そんなざこあいてになにやってるの!?」
「悪いな……こいつとは相性が悪いんだ」
そう言い残してウルスラは吹き飛ばされ、洞窟の壁に叩きつけられる。
「ウルスラ!!」
「やべぇよ相棒……帰ろうぜ……」
「逃がすかよぉ!」
ミートドラゴンが狭い洞窟内部を這いまわって来る。天井からこちらへとへばりついて背後へと回り込んで来たのだ。
「ひぃ! に、逃げ道が!」
「やるしかないね……」
正直、ウルスラで負ける腕力に勝てるとは思えなかった。戦斧と拳がぶつかり合う。拮抗するかに思われた――
「俺の筋力はぁ
「……へぇ?」
「なぁにがぁおかしいぃ?」
「私の筋力は!
俺が押し返す。拳を跳ね除ける。無邪気に笑う。驚愕に染まるミートドラゴンの顔。
「ウルスラの加護が無くなったお前らなんて丸焼きにぃ……!」
「誰の加護が無くなったって?」
壁に叩きつけられダウンしていたはずのウルスラが立ち上がっている。
「ひゅーかっこいいー」
「茶化すなよ、アリス、コンビネーションといこうか」
「いいね♡」
ウルスラと共に突撃する。前面に居る俺を狙った炎の息吹。それを後方のウルスラが
「れべるあーっぷ!!」
身体で成長を感じる。新たな斧の力。開放しろと疼いている。
『
血で出来た獣が解き放たれる。それは俺であり、俺でなかった。
それは血を纏った俺であり、獣性に支配されたロリであった。
鋭い牙と爪を持ち、全てに食らいつく獰猛さを持つ。
四足歩行になり、戦斧は口にくわえている。
「姿がぁ変わったぁところでぇ!」
『ガアアアアアアア!!』
無邪気な暴虐はミートドラゴンを切り刻む。牙で爪で戦斧で、血で出来た身体は凝固し硬くなり、鋭い刃と化していた。
「いでぇ……こいづぅ……もうゆるさねぇ……!」
『ガアアアアアアア!! グルルルルルル!!』
俺は自分の制御を失っていた。力の衝動が抑えられない。
「こぉれぇよぉりぃ! 幼女裁判を開始するぅ!」
ミートドラゴンが吠えた。
するとその場の全員の動きが止まる。そして――
影より現れる、黒装束の『白の王』。
「何用か、ミートドラゴン」
「ははぁぁ……これよりきゃつのぉ、幼女裁判を開始したくぅ……」
「それはもう終わった事だ」
「!? しかし今のきゃつは獣同然――」
「それがどうした?」
威圧、その場に居た全員が動けないでいた。
威光、白の王から放たれる輝きがその他を圧倒していた。
威風堂々、歩みを進める白の王。目指すは俺の方。
やめろこっち来るな、心とは裏腹に身体は白の王に襲いかかろうとする。
『ガァッ! ガァッ!』
「ふむ、原初の獣と化したか。これはこれで愛らしいではないか」
刃と化した俺の身体を軽く撫でて見せる白の王。
こ、この変態……! やりやがった!
YESロリータ! NOタッチ! だろうが……!
そんな事言ってる場合ではない。これは命の危機だ。
まだ太刀打ち出来ない相手が目の前に居る。
イカルガは失神してるし、ウルスラでさえ震えている。
「さてウルスラよ、お前は何故ここにいる? お前にはオアシスギルドの襲撃を命じたはずだが?」
「……俺は」
オレっ子だったのか。
「俺?」
「わ、わたしは……ミートドラゴンの下ではたらくのがきにくわ――
こいつ! 一言で矯正しやがった!?
「なに?」
「わたしぃ……ミートドラゴンくんがきらいです!」
「よろしい、でミートドラゴン? お前から弁明は?」
「は? いや、は?」
ミートドラゴン、今のお前の気持ちはよく分かるよ。俺も意味分かんねぇもん。
暴食の魔人と呼ばれた幹部は今、何故か劣勢に瀕していた。
「『は?』ではない。それが上に対する態度か?」
「い、いえぇ……」
「で? どうなのだ、弁明は?」
「あ、ありません……」
「では何故呼び出した?」
ははーん、これは勝ちフラグ。これは粛清だ。出来れば暴走していようといなからろうと
「ろ、ロリを献上したく!」
「!?」
「ほう、どのロリだ?」
「あれにございます!」
暴食の魔人が指さす先に居たのは――イカルガ。
マズい! これはマズい! 今、魔法使いを失うのは非常にまずい!
だってどう考えても近接特化パーティは危険だろうが!?
しかし無情にも白の王はイカルガに近づく。そして――
「こ、こいつ! 天然モノではないか!? 放っておけば腐っていく!」
何言ってんだこいつ。いや待て、そういや、イカルガはローリガルドの産まれだったっけ?
じゃあ何か、今の言葉を訳すと。
『こいつ勝手に成長するじゃん! 老化じゃん!』
って事か? ひでぇ、人権保護団体はこいつを抹殺しろ。この世界にあればだが。白の王は人間ではないみたいだし……。いいだろ別に。
「ミートドラゴン、
「待って下さい魔王様! お慈悲――」
魔人の首が刎ね落ちた。白の王に腕の一振りでだ。
戦慄する。いつの間にか獣化が解けている。
白の王の姿も無い。終わった。
初の幹部戦は混沌のまま終わった……。
いや、実はまた漏らした……癖になってないといいのだが。
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