ラビリンス
勝利だギューちゃん
第1話
「私は魔法使いです」
眼の前に、少女が現れた。
明らかにという、衣装だ。
「唐突ですね」
「唐突じゃないわよ、あなたが呼んだんでしょ?」
「僕は、魔法使いを召喚した覚えはありません」
「嘘。呼んだわよ」
「いつ?」
「20年前」
「20年前?」
思い出す。
20年前と言えば、僕はまだ5歳。
確か、七夕の短冊に『魔法使いに会いたい』と書いたような・・・
「思い出した?」
「はい。思い出しました」
「でも、時間かかりましたね」
「魔法使いの世界も人手不足でね。後回しになっちゃった」
「・・・そう・・・」
小さいころは魔法使いを信じていた。
しかし、それはすぐにフィクションの存在だとわかる。
そして、記憶は薄れていく・・・
「忘れたころにやってくる・・・ってね・・・」
「確かに・・・」
でも、当時の僕は何を願おうとしてたんだろう・・・
確か、戦隊もののヒーローだったような・・・
でも、この歳だとさすがに嫌だ。
「で、願いは何?忙しんだから早くしてね」
「今の願いでいいですか?」
「うん。いいよ」
「叶えてくれるのは?」
「本当はひとつだけど、待たせてしまったからふたつにしてあげる」
気前がいいのか、。悪いのか・・・
「名前を教えて」
「私の名前は、ミックルだよ」
「ミックルさんですね」
「ミックルでいいよ。ふたつめは?」
「僕と結婚してください」
「いいよ」
・・・・
「いいの?」
「うん、魔法使いも飽きたので、引退しようと思ってたの。
だから、丁度いいわ。
よろしくね、旦那様」
わけわからない。
「でも、いきなりは無理だから、少し待っててね。引退届だしてくるから」
「いつ来てくれるんですか?」
「20年後かな」
待たんかい。
「じゅあ、待っててね」
行ってしまった・・・
人生は迷路だ。
ゴールまでは、入り組んでいる。
迷わずにたどり着けない。
特に方向音痴の僕なら、なおさらだ。
でも、そこが面白い。
「お待たせ」
「やあ、ミックル。変わらないね」
「君はおじさんだね」
「人間は歳を取るからね」
「私たちも、取るよ。でも・・・」
「でも?」
「本当に、私を待っていてくれたんだね。」
「約束だからね」
「あれは、私たちを遠ざけるために言ってるんだけど、負けたわ」
「じゃあ・・・」
『ふつつかものですが、よろしくお願いします』
ミックルは。お辞儀をする。
「どうする?・・・くん」
「何を」
「この迷路、スタート時点に戻る?それともこのままゴールに向かう?」
「このままでいい」
「でも、私といる時間は短いよ」
「その分、濃くして見せる」
「そのいきだよ」
僕も45歳。
人生100年としても、まだ半分もある。
それだけあれば、十分だ。
ラビリンス 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
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