第14話 二回目のファーストキス

「セレスティーヌ!」

「ラルフ様…申し訳ありませんドレスが…」

 泣きそうな顔をするセレスティーヌ


「そんな物どうでも良い!」

 肩を抱かれてハンカチを渡される



「セレスティーヌ!」 

 サロモンが現れる


「なんだ? 一体何が…あった、アニエス?」

 アニエスは衛兵に腕を掴まれている


「サロモン殿下、こちらのお嬢さんが酒に酔いセレスティーヌ様のドレスに飲み物を掛けまして…」

「なんだって! アニエスなぜその様な事を!」


「サロモンお前はそこの令嬢としっかり話をするように…分かったな?」

 ラルフに睨まれるサロモン


「なぜ叔父上がセレスティーヌと…」

「くどいな、セレスティーヌの名を気安く呼ぶな、お前の相手はそこの令嬢だろう」


「いや、しかし、セレスティーヌ話を、」

「サロモンも連れて行け」

「「はっ!」」

 衛兵にサロモンとアニエスが連れて行かれた


「皆すまない、パーティーの続きを楽しんでくれ、騒がせたお詫びに、今日は私が外国で買い付けた珍しい酒を振る舞うことにしよう」


 侍従に言いつけ、十分足らずで用意された珍しい酒に皆が喜ぶ


 別室ではセレスティーヌがショックのあまりに泣いていた



「せっかくラルフ様からプレゼントしていただいたのに…」

「またプレゼントするよ」

「嬉しかったの、素敵なドレスをプレゼントして貰ったのに…」

「セレスティーヌ…」

「ラルフ様と一緒に来られて浮かれていたの、いつもはこんな事にならないのに」

「セレスティーヌ、それは…」


 セレスティーヌの手を取りじっと顔を見る


「ラルフ様が会いにきてくださってから、ずっとラルフ様の事を考えて…手紙にも書いた通り嬉しくて早く会いたくて…」

「ねぇ、セレスティーヌ、この前の返事を聞いても良い?」

「大事な約束を忘れる様なわたくしでも良いの?」

「思い出してくれただろう? ちゃんとおかえりって言ってくれた」


「わたくしで良いの?」

「ずっとセレスティーヌの事が好きだった。会えない時は早く愛を囁きたいと思っていた。思っていたより長く留守にしてしまったが、やっと言える」


 セレスティーヌの元に跪き



「セレスティーヌ君を愛している、私と婚約して下さい」

 そっと手を取られる


「……はい、お受けします」


 ホッとするラルフ

 立ち上がりセレスティーヌの頬にキスをする

 恥ずかしくて顔を赤くするが、嬉しくて涙が出る


「ラルフ様、わたくし好きな人と結婚するって幼い頃に言っていたでしょ?」

「そうだね、言っていた」

「ラルフ様の事だったのね…殿下と婚約していた時に何か引っかかっていたのって…」

「私の事を忘れていたひどい女の話か…」


 くすくすと笑い出すラルフ


「それを言われると…」



「いや、良いよ、私の真実の愛の相手はセレスティーヌなんだ…。受け止めてくれる?」

「うん」

「重いよ、私の愛は…長い間会ってもないのに蓄積されていたんだけど…」

「うん」


「そうか…卒業したらすぐ結婚したいんだけど…」

「うん」


「アルナンディ公爵夫人になってくれる?」

「うん」


「そうか…もう浮気はしないでくれ」

「…う、うん」



 チュッと口に触れるだけのキスをされた

 二回目のファーストキスだった



「こんな事聞くの嫌なんだけど、サロモンとキスした?」

「ない!」


 キッパリと答えるセレスティーヌ

「………安心した」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る