第3話 真実の愛を見つけたとのことです
「真実の愛を見つけた」
元婚約者様であるサロモン・ド・アルベーヌ殿下がそう仰った
大変喜ばしい事で心から応援したいと思い、婚約破棄をしたいと仰るので、勿論応じる事にしました
私の両親も、両陛下も真実の愛で結ばれたと聞く。真実の愛を見つけられた殿下の前から退場するのは当然の事…
「十年も共に過ごしてきた…」
そう仰いますが、殿下が真実の愛を見つけた以上わたくしは邪魔者以外ではない。
その言葉を貰っただけで十分
「相手が、誰か知ってるのか…」
…学園で知らないものはいないでしょうに
「子爵令嬢でございましょう?」
…下町で出会ったことも噂で聞いていた
人目を忍んで逢瀬を楽しんでいるのも。
真実の愛、故の行動なのでしょう
「私から先にサインをします」
早くこの場から去りたい気持ちでサラサラと婚約を破棄する旨の書類にサインを書く
「殿下どうぞ」と言うと
「考えてみる…」
馬鹿げた返事が返ってきて、イラっとしてしまう。レディとしては失格でしょう
その後サインを書かれた殿下から書類を受け取り、王妃様に挨拶をさせてもらう事にしました
「王妃様突然ではありますが、今までお世話になり、ありがとうございました」
淑女の礼をして王妃様に笑顔を見せました
「なぁに?セレスティーヌ改って…」
不思議そうな顔をする王妃様でしたが
「殿下がこの度、真実の愛を見つけられたようで、わたくし達の婚約は白紙となりましたので最後にご挨拶に伺いました」
ピキッと何かヒビが入るような音が聞こえましたが気にしないでおきましょう
立つ鳥跡を濁さずと言いますもの。
「なにか言いました……?最近耳が遠いのかしら」
「殿下が真実の、」
「っ聞こえませんっ!」
「ですから、」
「セレスティーヌ!なぜなの?!わたくしは貴方のことを、娘だと思っているのです…真実の愛だなんて、そんなものサロモンの気の迷いです!」
「いえ!真実の愛ですのよ?真実の愛を得るなんて素晴らしい事です。わたくしはそんな殿下を尊敬致します」
「セレスティーヌ……」
言葉を失う王妃様
「十年間お世話になり感謝しております。このようなわたくしをお叱り導いてくださりました事、心からお礼申し上げます」
深々と礼をし殿下の婚約者として最後の挨拶にしようと思いました
「それでは失礼致しま」
「お待ちなさいっ!なんでよぉ…嫌よぉ…セレスティーヌが、サロモンのお嫁さんに来てくれないなんて」
「ご安心下さいませ。殿下の愛する方がわたくしの代わりに王妃様をお慰め下さいます、とても可愛らしい方ですのよ?」
「会いたくないわ…」
「こんなわたくしをお許しくださいとは申し上げません、王妃様のお顔を見るのがとても心苦しいので退出させていただきます…」
「……セレスティーヌ」
深々と礼をしてこの場を去りました
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