第2話 なぜこうなった?
私の名はサロモン・ド・アルベール
アルベール王国の第二王子
身分を隠し下町に行ったあの日、子爵令嬢のアニエスに出会った。
アニエスの家は決して裕福な家ではない。
商家の家に預けられ働いているところを目にして一生懸命働く姿が可愛いと思った。
たまたま話をすることができたので、話をするとコロコロと表情が変わる顔が、私の周りにいる女性とは違って新鮮に見えた。
手にはすり傷を作り、可愛らしい顔もどことなく薄汚れてはいるが、笑顔が可愛く守ってやりたいと言う気持ちになり、それから何度か身分を隠して会いに行った。
この気持ちに名前をつけるとしたら【恋】と言うものなのだろう…とアニエスに気持ちを伝えると嬉しいと喜んでくれた。
アニエスは恐らく私のことを一貴族としか思っていないのだろう。
その後はなんとかアニエスを学園に入れるように裏で手を回し、バレない程度に資金援助をした。
学園に入ると私の身分がバレてしまい、畏れ多いと言って泣いていたがその姿がまた可愛くて、守ってあげたいと思った。
私には婚約者がいる為、人の目を避けての逢瀬となるがスリルがあって、恋を助長する事となった。
数ヶ月経ち、アニエスが婚約者に悪いから…と別れを告げてきた。
いや待て!私は婚約者を愛していない。
愛しているのはアニエスなのだ。
告白すると嬉しいと言って泣いてくれた。
その後、私は婚約を解消するとアニエスに誓った。
十年も共に過ごした婚約者だと言うのに別れを告げる事に後悔はなかった。
……いや筈だった。
「真実の愛を見つけた殿下を尊敬致します」
婚約者はこう言った…
十年も共に過ごしてきたのに…あっさりと…
何故か彼女に失恋したような気持ちになり心にぽっかりと穴が空いたような気分だ…
「サロモン様どうしたの?」
アニエスに話しかけられ
「いや、なんでもないよ」
心配させてはいけないな…と我に返る
「お茶が冷めてしまいます」
「そうだね、ごめん疲れているのかもな」
正面に座るアニエスのお茶を飲む姿勢…
…姿勢が悪いな
がちゃんとティーカップの音を立てる
……行儀が悪いな
菓子を取る手つき
………優雅とは程遠い
ポロリと焼き菓子の屑をスカートに落とし拾って口にいれた!
…………信じられない!
見ていられないではないか!!
嘘だろう…こんな事あって良いのか…
「どうしたの?サロモン様?」
「…いやなんでも」
「そういえば、もうすぐテストがあるんだけど、私分からないことばかりで…」
「一緒に勉強するか?私もしなくてはいけないから…」
「うん、嬉しい」
笑うアニエスは可愛かった
「これなんて読むの?」
…幼児が習うようなものだぞ
「スペルが曖昧で…」
……字が汚いな
「計算が得意ではなくて…」
………商家で働いていたのに
「ダンスとマナーなんて細かいことまで怒られて嫌になっちゃう」
…………そこは必須だ
「刺繍なんて…縫ってあれば良いのに!細かすぎて疲れるわね!」
……………嗜みだ
心の声と葛藤を繰り返す
案の定、アニエスのテストの結果は散々だった…このままだと上の学年に上がるのは難しい、いや無理だ
元婚約者はダンスとマナーと刺繍は学年トップで、その他の科目も五位以内をキープしていた…
最近彼女を遠目で見ると楽しそうに笑う姿が目に入り眩しいくらいだ…
彼女はあんなに美しかったか?
お茶を飲む時も常に姿勢が美しく、甘い菓子をよく食べていたがスタイルをキープしていた。
ダンスも優雅に踊り外国の客人とも物おじせず話す姿は見惚れるほどであった…
懐かしそうに彼女を見ていると、私の存在に気がついたようで、すっと立ち去った。
心が痛んだ…この気持ちはなんだ?
それとっ、誰なんだ?彼女の近くにいた男は…私は十年も彼女と居たのに何にも知らないではないか!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます