第四話 幼なじみとの再会
学校のチャイムがいつも通り鳴る。
変わり映えしない毎日。誰とも話さない空虚な空間。
机に突っ伏して過ごす時間。それが自分の中での領域に過ぎなかった。
ただ、星川の言う通り眼鏡からコンタクトに切り替えてみたみたら
また、新たな世界が作り出していくような感じがした。
小さい頃から目が悪く、両目共に0.1だった。
眼鏡をしないと視界がぼやけてしまう。
ただ、コンタクトにすると視界はぼやけるが周りの印象が
ガラリと変わってしまうということだ。
今までは人には話しかけられることもなかったのに、
クラスの連中が話しかけてきて今日は雪が降ったかと思う1日だった。
顔は分からないが、自分のことを話しかけてくる。何だか懐かしさを感じた。
早速、星川の効果が効いているのか......
有り難いが、流石に何人かに話しかけられると気疲れしてしまった。
こんなに慌ただしい一日は、久々の感覚かもしれない。
そんな時に唯一俺が話せる幼なじみである遠野明里が来てくれた。
俺のことを見て手を振ってくれている。
俺のことを察してくれて、来てくれたんだろう。
「あ、優君~!ちょっと話があるんだよね。こっち来てくれる?」
「あ、分かった。今からいく」
他の生徒から押し掛けられたが、上手いこと交わし明里の方へと向かった。
「優君、困ってたでしょ?いつも通り助けてあげたよー!」
「あー明里!わりぃーな。いつも助けてくれてありがとな」
「ふふっ!私は優君の味方だよ!小学校の時とか似たようなことあったじゃん」
明里が言葉を言い放った途端、奥から星川が詰め寄ってきた。
どうやら、俺達が仲睦まじく話しているのが気に喰わなかったらしい。
星川は開口一番、何そこで仲良くしてるんだよ!と言葉を言い放った。
何だかよく分からない展開だが、俺と同様クラスメイトもざわつき始めている……
頼むから、俺に視線を向けないでくれ!! 恐らく、滅多に人と会話すらしないからだろう。
「それで、面識はなかったですよね?星川さん」
「そうだね、紹介が遅れました。僕は星川遥よろしくね!」
「宜しくお願いします。はじめまして、遠野明里です。クラスは違いますが、これを機に仲良くなれたらと思っています」
「いーよ!遥で明里だからあかりんって呼ぶね」
「おい、星川!歳が近いからって馴れ馴れしくするなよ」
「ふふっ...優君は心配症ね。昔から変わってないんだから。あかりんで大丈夫だよ、宜しくね!」
「ありがとー!僕は君と友達になれて嬉しいよ」
「私も嬉しい!私は遥ちゃんって呼ぶね。遥ちゃんは何で優君に話しかけたの?」
星川が明里に耳打ちをし始めていた。なんとなくその光景を見て俺は察した……
神様……どうか俺にご加護を。俺はどうも救われなかったらしい。
どうやら、話は終わったそうで、明里はやる気に満ちふれた表情だった。
「優君がイメチェンね!私協力する!遥ちゃん、週末に優君とデートして服を買うんでしょう。私もついて行っていい?」
「で、デートじゃないんだってば!!今週末、雛沢君にに似合う服を買って更にイメチェンするの!良いでしょー!」
「いくいくー!!優君に似合う服決めてあげるよ。実はね、遥ちゃん……優君は昔」
「って、ばっばっ、馬鹿 明里!それ以上は」
「はーい、わかりました。今週末の土曜10時にわいわいショッピングモールの前にある噴水広場で待ち合わせね」
「わーった、わーった。明里に言われたら仕方ないな、行くよ」
教室のチャイムが鳴る。
「わかった、授業始まるからまた後でねー!」
すっかり、二人星川と明里は仲良くなったのである。明里は優しいのもあり、誰とでも仲良くなれる。
相変わらず、昔から変わっていないが、アイツはアイツで意外とクラス内でも人気がある。
艶のある赤髪にぷくっとした唇、お目々はぱっちりといわゆる男子からモテそうな典型的な理想の女の子だ。
一瞬、ヨコシマなこと考えそうだったので俺は教室に戻り事なきを得て講義を終える。
明日が憂鬱だ……俺は目を瞑りながらそう思ってしまった。
ー週 末ー
俺はいつものように起きる。
時刻は9時半。朝が本当に弱い。
目覚まし時計の時間を確認すると、慌てて飛び起きて身なりを整えて急いで向かった。
幸い、わいわいショッピングモールは家から徒歩10分な為まだ救いがあったのだ。
「星川に怒られる……走るぞ!」
星川に怒られると思い、いつもなら出すはずのないスピードで現地に向かった。
そこには、既に星川と明里が来ていた。呼びかけたが、また怒られないか心配だったのである。
「ぜえはあ、、星川、明里、待たせた……」
「30分前ジャストだけど、この前より早かったね。成長したかな?」
「うっせ」
「あかりんもいるし、いこーよ!」
「そうだね、ハルちゃん」
何だこの二人いつの間にか仲良くなってやがる……
明里パワー凄まじい。
明里はいつものように俺に笑顔を向けてくれた。
そして、星川の言うように片っ端からショッピングモールの
お店を見て決めることにしたのだった。
「あかりん、なかなか、見つからないね」
「そうだねー、優君には爽やかなイメージの服が合うから私お店に心当たりがあるの。ついてきて!」
明里の言うままについてきてしまった。
店内に入ると、シンプルな服装且つお洒落なお店で俺には無縁だった。
片っ端から明里と星川が服を用意し試着室に俺を向かわせるのだった。
「星川、今日服を買えるほどの資金は持ってないんだが……」
「雛沢君、僕を何だと思っているの?僕に任せなさい。服については、僕が出すから」
「えー!!」
「取り敢えずそれ以降は同じ話はなし!」
試着用の服がどんどん星川や明里によって積み上がるのだった。
「コレ……いつ終わるんだよ」
「優君が似合う恰好が決まるまで、私やるもん」
「僕もー!」
やれやれ……気が重いやられる一方だ。
仕方なく、星川や明里の言うままに試着した。
華美ではないが、今時の学生にしてはお洒落な服装だった。
白の柄Tシャツに青のストライプのシャツ、そして腕時計にリュック……
今までとは打って変わって見た目が劇的に変化をした。
「試着室の窓越しでだけどこんなに変わるもんなんだな……」
すると、星川が試着室のカーテンを開けた。
「にひひー♪いいでしょ♪お、似合ってるじゃん」
「ば、馬鹿っ!勝手に来るんじゃねえよ」
「これ、似合うんじゃないかな……決まりね!お会計は済ませておくからねっ」
「ああ……わっーたよ、ありがとな」
返事を返す前に、明里と星川はレジに向かっていた。
まあ、星川が決めた奴でバリエーションは少し増えたので個人的に有難いけどな。
何しろ、量が多いので、少しお店の外で待つことにした。
暫くして、会計が終わったようなので星川の方へと向かうとした。
「ごめん、待たせたね。ありがとー」
「優くぅーん、ごめんねぇ」
「ああ、大丈夫だよ」
「そういえば、この後どうする?僕はあかりんと遊びたいー」
「ハルちゃん、一緒に遊ぼー!優くんはどうする?」
「ああ、俺はいいよ。今日はちょっと用あるから帰る」
「えー一緒に行こうよー!むぅー!」
「わりぃな、また今度ね」
「わかった、それじゃ!明日はまた指導に入るから楽しみにするんだよぉー!」
星川の発言が少し気にはなったが、見なかったことにした。
俺はそのまま帰路に着くことにした。
また、こうして明日から憂鬱な一日が始まるのだった……
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