第22話 ハーマンとの会話

「ナタリーさんと言うのでしたか。冒険者ギルド内で傷の治療をしていましたよね」

 ハーマンさんは、私に笑って見せてくれる。

「ハーマン・ド・ブラドル様。敬語は良いです。私は庶民なので……」

 私は言葉遣いを改めた。さっきは、ハーマンさんが目覚めたばかりだったから、余計な言葉は省いたけど貴族に平民がタメグチはダメだと思う。


「そうか。王宮の治療所では魔法師団の制服で回復魔法を使っていたから、てっきり……」

 あの時いたんだ、この人も。

「平民ですよ。たまたま、下級ポーションを長く作っていたので僅かばかりの魔力を得ただけです。それより……」

 私のその言葉を聞いて、ハーマンさんの表情が少し怪訝そうな感じになった。

 うん、わかる。でこんな事は出来ない。

 だけど、それを無視して、未だに転がっている子ども2人に目をやる。

 それにつられたかのように、ハーマンさんも子ども達を見た。


 一瞬、焦ったように子ども達の様子を見てたが、顔色も良く呼吸も穏やかな様子を見てホッとした顔をした。

 そして、気を取り直したように私を見て、そして座ったまま深々とお辞儀をしている。

「ありがとう。俺達を治療してくれたのは、ナタリーさんだろ? 今だって結界も張って俺達を……」

 その続きを言うのを、手で制して言う。


「さんは要りません。それから、この事は他言無用でお願いしたいのですが。せっかく、助けた命ですので」

 私は少しばかり殺気を込めていう。

 ハーマンさんは、一瞬驚いてすぐに顔を引き締めた。

「相分かった、ナタリー。……それと、俺の事も様は要らない。ハーマンと呼んでくれ」

 呑み込みの良い人間で良かった。


「それでハーマンさんを起こした理由なのですが……」

 このままではアイストルスト王国の結界の入れない事とその理由を説明した。




「なるほど、それで俺はこの子たちを抱えていればいいのだな」

 私の話をさえぎる事無く聞いて、状況を理解したのを示す為だけにハーマンさんは口を開いたように思える。

「はい。先ほどの様に、子ども達を庇うような感じで座って抱えて下さればいいので……」

 本当に優秀だ。私が意図したとおりの行動を少しの言葉で実行してくれる。

 子ども達の盾になれと言ったも同然なのに、躊躇もせず……まぁ、そうかさっきもそうやって子ども達の盾になっていたのだから。


 結界内の瘴気はもう無い。全て浄化してしまった。

 後、いにしえの魔女の結界が私たちを弾く原因は、この結界を張っている魔力。

 ギリギリまで、魔力をセーブして……多分、通る瞬間は結界を解かないと無理だろう。


 私は覚悟を決めて、結界の制御を始めた。

 

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