第12話 お城からのお迎え

 冒険者ギルドに戻ってみると、ギルド長のガウルさんが深刻な顔をしていた。

 その横には、見ず知らずの男性……先ほど、馬上で見た騎士たちと同じ服を着ていて、腰には剣を差している。


「ああ。ナタリー。良いところに戻って来た。こちらは王宮所属の騎士なんだが……」


 ガウルさんの話を要約すれば、まず隣国に派遣していた使節団が戻って来たのである程度の詳細が分かったという事と、私に王宮の治療所で、回復魔法を使って欲しいという事だった。


「以前にも言ったと思うのですが、私は初級ポーション程度の回復魔法しか使えません。その程度の能力では、邪魔になるだけだと思います」

 私は、ガウルさんにそう言う。

「俺もそう言ったんだけどなぁ」

 ガリガリと頭を掻きながら、ガウルさんもそう言った。


「そのような事はございません。まずは隣国の様子を知って頂き、出来る範囲での治療をして頂くだけで良いのです」

 騎士は私相手でも、丁寧な態度で接してくれている。

「でも、なぜ私に? 私が隣国のことを知っても仕方が無いでしょう?」

 私は当然の疑問を口にした。

 正体を知っているのならまだしも、私は15歳前後の子どもに見えているはず。


「王宮には、俺も同行する予定だ。ギルドとしては、情報は欲しいところだし。ナタリーも知っておいた方が、今後の方針も立てやすいだろう」

 今後の方針……。

「分かりました。だけど、治療の方は本当に役に立ちませんよ」

 私は念を押すように、言う。

「かまいません。ありがとうございます。ナタリー様」


 ギルドの外に出ると、騎士たちと……護衛なんだそうだ……馬車が待っていた。

 私は、着なくて良いと言われて渡された魔術師団の制服を着ている。


 この前と違って、行き先は城内にある謁見の間。

 さすがに町娘の服装では、マズいらしかった。

 ガウルさんも、貴族みたいな服装で……って、王族だった。


 私たちは、王宮からの馬車に乗り込み、何だか仰々しく出発するのだった。


 …………逃げたい。

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