第4話 魔物が増えても
下級ポーションの依頼が増えた。
もう冒険者達だけでなく、お城の騎士団も駆り出されるようになっている。
下級ポーションの値段は、跳ね上がった。
「ナタリーちゃん。ありがとうね」
受付のお姉さんは、相変わらず笑顔で私に対応してくれる。
「いいえ。こちらこそ……」
薬草が生えているところにも魔物が出始めたらしく、今日は薬草を詰めてもらえなかった。
「ごめんなさいね、頑張ってくれているのに……。もう渡せる薬草が無いの」
なるほど……。
王宮の薬草は平民にはまわって来ない。
いや、多分この国も王宮には中級や上級ポーションの材料になる薬草しか扱って無いのだろう。
「そんなにひどい状況なんですか? 国境の近くの森は」
「え? そうね。だけど大丈夫よ。国内には強力な結界があるから。昔、いにしえの魔女様が張って下さったものが……」
自分の身を心配して訊いたと思われたのか、受付のお姉さんはそう答えてくれた。
『いにしえの魔女』
その昔、魔人や魔族と人間が交わり生まれた女性たちは、そう呼ばれていたらしい。その経緯は、えげつないので省かせてもらうけど。
その後、エルフや獣人のような、いわゆる人外と言われる人達と交わって生まれたのが、今の魔女と言われる者たちだ。
いにしえの魔女と呼ばれた者達よりは劣るけど、それでも身体能力や魔力は人間の数倍。
寿命はそれぞれだけど、私みたいにエルフの血が入っているとかなり長生きをしてしまう。
「魔女様に何とかしてもらう訳にはいかないんですか?」
いにしえの魔女の結界があるという事は、本人がいなくても子孫なりなんなりがいるという事だ。
「それがねぇ。無理なのよ、王女様は魔法を使えないの」
魔法が使えない? 王女様という事は、人間の血が入っているという事だけど。
何代か人間との交わりが続いたのかな?
「ふ~ん。じゃあ仕方ないですね」
それより、どうしよう。
下級ポーションで、とりあえず生計を立てようと思っていたのに。
冒険者ギルドから薬草を貰わずに、作ったら問題になるよね。
数年は、ここにいるつもりでいたんだけどなぁ。
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