第3階 アオナ・エカルラート
敵の親玉の名前が分かったので、父に確認しようと母に連絡し、代わってくれる様にお願いしていた。
「連絡うれしかったよ、ハツミ」
父の声が優しく耳を包み込む。
大好きな父に私は報告した、メイユールの名を。
「正直に言うとその名前は知らないが、何か強い影響を与えている感じがする...。
なんて伝えたら良いのか、そうだなぁ、ある大物の残り火だな」
父が親身になってくれる事に日々感謝を覚える私であった。
「それって似ているって事かな」
私は本来の大きな存在を大きな大炎に例え
メイユールを残りの小さな火に例えたのだと思った。
「まぁそれに近いな。そいつは表舞台にはいないはず、まぁハツミなら大丈夫だ。危なくなったら連絡くれよな!」
父に信頼されている。そう感じた私は泣きそうになっていた。
「うん、ありがとう!」
笑顔で行ってきますのつもりで元気な返事で返した。
その後、母が伝えたい事があるとのことだったので了承していた。
「ハツミ!帰ってきたら何が食べたい?」
どれも美味しいのだけれど、やっぱり!
「レッドドラゴンのパスタかな〜」
母が作る料理の中でたくさんおかわりした一番の大好物。
「腕がなるよ〜!!」
とてもにこやかな母。
「楽しみ」
母は家事が大得意で料理は超得意。
全部父を幸せにする為に身に付けたことだと話してくれたことがあった。
そういえば私はこの世界に生まれる時に、
1つのある魔法をかけていた。
ーー認識共有
この世界の私であるアオナと父と母から生まれたたった1人の私がズレない様にする認識魔法を。
私は本来の私にとても近い姿でこの世界に転生出来るように。
転生してから異世界ミリカンテアの時間軸で10年経ち、私の身体も成長したわ。
体力と気力にも溢れていた。
この世界の時の流れの速さは私の本来の世界での1ヶ月にも満たないわね。
いわゆる"速い世界"。
私はこの和泉の国では目立たないようにしてきた。
アカナには全面的に協力してもらい私は冒険者となることをアカナに告げていた。
私はアカナと同等の強さをアカナだけに示してきた。
アカナに心配はされたものの冒険者となることを止められはしなかった。
私、アオナ・エカルラートは物語の世界の冒険者に憧れて国の繁栄のために裏で暗躍すると決めたのだった。
隣の国に敵が迫っていると、十分な別れも出来ずに、明け方アカナは国をあとにした。
一度国を出るとアカナは半年近く帰らない。
それだけ被害が大きいとアカナは苦笑していた。
早速、私はアカナに貸し受けた世界地図を通して目印を付けている方向に向かった。
ーー風変
風に身体を変化させた。
そしてアカナ陣営のさらに奥の最も危険と指定された場所に飛んだ。
それがラブラビアの居城。
セイクリッド・エレガント・ザナドゥと呼ばれる現在、世界の恐怖の象徴の1つとしてよく知られている。
その居城は桜色した彩り鮮やかなピンクが
咲き乱れる白亜の城だった。
ラブラビアは周囲の山、海、そして荒くれ者やはみ出し者に状態異常:獄誘惑で支配下に置いていた。
居城の周辺の荒野に放置させ、野放しにしてたことから周辺地域の被害はとても大きくなり熊をはじめとする肉食含む動植物でさえ彼らに狩り尽くされ食べ尽くされていた。
これがラブラビア軍の前線兵となっていた。
進軍する度に女子供はもちろん、近隣の村々の男達は怯え震えていた。
境界線を少しずつ侵攻するラブラビア軍に対して、今回アカナは最前線に立ち対策を立てようとしていることを私は国の重鎮達から聞いていた。
私の第一の目的とアカナの力になりたい気持ちが重なった幸先の良い始まりだった。
和泉の国は魔法少女達の国で捨てられた少女達や必要とされなかった少女達を集めて生きる力を養っていた。
よって最前線に出る戦力も15歳までの少女達が主となる。
それもあってか私としては早期決着を望んでいる。
あの女、ラブラビアが危険極まりない性格をしているためである。
ーー風変
私は駆けた。風のように。
ラブラビア軍のやる気に満ちた声が怒号の様に聞こえた。
私は先手必勝の奇襲攻撃を仕掛けたい。
そしてそのラブラビア軍はもう目と鼻の先だった。
私は大地を蹂躙しながら進むラブラビア軍の歩みによって壊滅寸前の村の女性に語りかけた。
ラブラビア軍の唾が飛び大地を揺らすたくましく激しい足取りがその女性に恐怖を今も与え続けている。
ーー周囲加速
村周辺に"速い世界"の効力を与えていた。
結果、ラブラビア軍はほんのり動いていた。
停止する直前の異質な静けさが周囲を包み込んだ。
「ねぇ?貴女達を狙っている、で間違えないかしら?」
私の問いに女性は恐怖を一瞬忘れられた様な顔でたてにうなずいた。
ーー岩石拳砲
地面が膨れ上がり大砲の様な拳を繰り出した。
私は問いの返答を確認する前にすでに動いていた。
低速ながらも女性に攻撃を加えようとしていたラブラビア軍の最前線の兵の1人は私の放った魔法により、膝をつき邪気が消えた。
ーー白亜剣
私の特別な魔法。
世界の速度がいつも通りに重なっていく。
私は私の特別で空を切り裂いた。
ーー悪滅
状態異常:獄誘惑と適合した魂に大きな影響を与える。
ーー竜翼雷波
西洋の竜の翼を象った黄色い閃光が大津波の様に飲み込む。
その悪滅を纏った黄色い閃光はラブラビア軍の感情も思いもほぼすべてを零にした。
誰もいなくなった荒野に驚いていた女性が私の方を振り向く。
「あなたは助けてくれたの?」
剣を振り終え、女性に向けないように配慮したことで女性はほんの少しだけ安堵した表情を見せていた。
「えぇ、結果的にそういうことになるわね」
そして目の前で倒れている男性を抱き寄せた。
先程、女性を殺そうとしたラブラビア軍の一人。
今ではすっかりズタボロの好青年といった感じ。
「あなた...!!」
私は女性の言葉からラブラビアの恐ろしい所業を目の当たりにし、呆れ果てた。
女性が最も信頼している男性に魔法をかけて襲わせていたのだから。
「良かった!!...生きている!!」
女性は涙を強くにじませていた。
(「あのどクズ」
「あ!ありがとうございます!」
女性は私に頭を下げてきた。
ラブラビアの思いを一つ打ち砕いたことから、私は自身の頰がほんのり高揚していた。
私は誇らしげに、
「私はアカナ・エカルラート様の命で剣を振るう者」
と女性に告げた。
男性も駆け寄ってきて2人は頭を深々と下げた。
ーー時断
目的地までの時空の流れを断ち切り、距離を零にする
私は礼をして村を後にし、すぐさま飛び出した。
2人は御礼をしたいと申し出ていただいたからアカナ軍が来たら手厚く歓迎して欲しいとだけ告げた。
ラブラビア軍にかかっていた状態異常:獄誘惑は好きとか愛してるでお馴染みの人間の三大欲求の1つ。
真相は神に近しい美しさをつくることが出来るので人類種の男性にはとても効果が大きい。
その力を利用し好き放題に従わせる誘惑系の超強化版ともいえる。
今回は攻撃性を刺激され私兵されていたようです。
獄誘惑については私が成長している間に何が起こっていたのかはあまり想像しない様にしておこうと思った。
村の周囲を見渡しながら移動していたところ、精神的に疲弊して倒れ込んでいる男性が涙を流している女性に抱き寄せられているのが複数確認出来た。
私はラブラビアの攻略法を考えながら、その配下を掃除しつつラブラビアの首を目指していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます