「続報!X村とT家 新たな事件と謎の神Mとは」(「週刊真実(如水出版)」)

「続報!X村とT家 新たな事件と謎の神Mとは」(「週刊真実(如水出版)」 2015/5第3週号)


山に囲まれたX村で今年に入ってから立て続けに人が死んでいた。そして、そこにはいつもX村随一の名家、T家の影があった。いま、外界と隔てられたX村で何が起こっているのだろうか。


◇最初の事件と釈放されたT氏

3月某日、田んぼに囲まれたのどかなX駅で、通勤客の男性が線路に倒れて、進入していた列車にひかれ死亡した。警察が捜査を行ったが、男性が死亡した時のことは闇の中だった。なぜなら、駅の監視カメラが狙ったようにその日の朝に壊れていたからだ。警察は駅員と運転士の2名に事情を聞いたが、すぐに2人を解放し、男性の死亡は事故だと判断した。そして、駅員はT家の人間だったのだ。


◇2つ目の事件 生き残ったT君

4月某日、バス転落事故が起こった。遠足のために貸切られたバスにはX村の小学校の児童7名、引率の教員2名が乗っており、事故によって、児童1人と運転士以外の8人が死亡した。そして生き残った児童がT君(8)なのである。T君はもちろんT家の人間であり、前述の駅員T氏の子供である。果たしてこれは偶然なのだろうか。


◇X村の因習、M神とは

X村にはこういう言い伝えが残っているそうだ。


「昔X村の北東にそびえる山に棲み付いた犬が村を襲っており、非常に難儀していたが、Mという神が犬を退治して村に平和が戻ってきた。以来村ではMを丁重に祀っている。」


X村ではこの伝承が信じ続けられており、今でもM神を祀っている。そして、M神信仰の宗教的指導者がT家なのである。X村の住人は今でもM神の教えを厳守しており、つまるところ、M神に仕えているT家はM神に次ぐ存在なのである。生活の中心にM神があるX村の住人が、T家の命令を聞かないことがあるだろうか。殺人の隠匿など彼らにとっては容易いものなのではないだろうか。


◇T家の野望

T家は江戸時代には庄屋として村の信仰と政治を司る立場だった。バブル時代のリゾートマンション建設ラッシュの際には、持っていた土地を高値で売却して一財産を築いたそうだ。そして、現在T家は村の土地を買いあさっているらしい。金に目がくらんだ人間にとって、殺人を犯すことのハードルは低かろう。駅で轢死した男性とT家とには土地の売買に関してトラブルを抱えていたに違いない。


編集部はX村の調査を続行しています。続報をしばし待たれよ。


如水出版 戸川文夫

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