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「新しい職場って祓い屋だったんだな」
「うん、まぁ……」
「すぐに教えてくれなかったのは、俺が何か言いそうだったからか?」
「……それはある。だって就活で落ちまくってやっと見付けた就職先が祓い屋だなんて言ったら、絶対やめろって言うだろ」
「否定はしないな。普通に考えたら怪しすぎるだろ。追い込まれて焦って美味しい文章の求人広告に釣られてついにやばい仕事に手を出したのかくらいは考えたと思うぞ」
「いやうん、確かに俺も最初はそう思ったけどね!?っていうか見てたのかってくらいにその時の俺の行動当ててくるじゃん……」
「本当にそうなのかよ」
「でも」
「でもな」
「うん?」
「白枇さんと黒緒さんって言ったか。あの人たちは信じられそうだな。佑貴見てたらそう思った」
「……そっか。俺が言うのもなんだけど、まじで実力はすごいし信頼もしてる。まぁ人使い荒い時あるけど。っていうか初っ端からそうだったけど。でも今起こっている謎の現象もあの人たちなら何とかしてくれる。だからもう心配しなくて大丈夫だ」
白枇さんたちは蛍斗の次に則光から話を聞いているようだ。その様子を眺めながら、声のトーンを落とした凌河に名前を呼ばれる。
「佑貴」
「ん?」
「前から聞こうと思ってた事があるんだけど」
「何だよ改まって」
「お前って、時々幽霊とか視えてる時あるだろ」
「……え」
小学生の頃に行った肝試しもどきで“変な影”の存在を周りの友達に信じてもらえなかった記憶が甦る。
その時の事と、皆には視えていない何かが視える事は凌河にも話していなかった。
「たまに何もないとこ変に避けるみたいに歩いたり、下手くそな話の逸らし方したり、誰もいない場所を難しい顔して見てる時あっただろ。佑貴は隠してるつもりだったかもしれないけど、近くで見てればわかるよ。何年連んでると思ってんだ」
「そう、だったんだ……」
「だからさ、今だから言うけど、佑貴はそういうのわかってくれる人がいるところで働けるといいなってずっと思ってたんだ」
「えっ」
「信頼出来る祓い屋って事は、あの人たちもそういうの視える人たちなんだろ。今度こそ良い就職先見付けたみたいでよかったな」
「……ありがとう」
まさか凌河がそんな事を思っていたなんて。
バレていたなら凌河にはもっと早く話してみてもよかったかもしれない。
その後、三人からそれぞれ話を聞き終わった白枇さんと黒緒さんは、顔を寄せて二言三言交わしたかと思うと黒緒さんだけ部屋を出ていった。
「あの、黒緒さんはどこに行ったんですか?」
「黒緒には島の史料や歴史を調べに行ってもらいました。現在の状況を概ね把握したので、ここからは分担作業です。私たちは件の祠を見に行きましょう」
「私たち?」
「もちろん。まさか、この件を丸投げするつもりだったわけではありませんよね?依頼料分くらいはしっかり働いてもらいますよ。ではまずはその人魚の祠への道案内からお願いします」
「は、はいっ!わかりました。今すぐにご案内します!」
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