第36話 序章・完
マーキュリー・シーン:「これは」
ガキィィィィン
アッシュ:「うおおおおおおおおおおおお」
ガキンガキンガキンガキン
アッシュ:(体の中から力がみなぎってくる。さっきまでの体の重さが嘘みたいだ)
マーキュリー・シーン:(どうなってるんだ。神の意図の総量がけた違いに跳ね上がっている)
「一体何が起こってるんだ」
アッシュ:「マーキュリィィィィ」
マーキュリ・シーン:(剣を持っていない腕に神の意図を凝縮した)
バゴンッ
マーキュリ・シーン:「ぐはっ………………やるじゃないか、まさかこの私に一発入れるなんてね。効いたよ、君のこぶし」
アッシュ:「これっぽっちじゃ全然足りない。俺がお前にぶつけたい思いはこんなもんじゃない」
ミゼル:「アッシュ君っ」
マーキュリー・シーン:「へえ、それはそれは、モてる男はつらいね」
アッシュ:「思いのすべてをぶつけてお前をぶっ殺す」
マーキュリー・シーン:「ふ、やれるもんならやってみろよ。くそがき」
アッシュ:「ああ、お望みどおりにな」
ミゼル:(空気が震えてる。すごい濃密な力の凝縮を感じる)
マーキュリー・シーン:「残念だよ。もっと楽しみたかったんだけどね」
ミゼル:「っ」
(やばい。トレジャーハンターの勘が、逃げろって言ってる)
ズシッ
ミゼル:「でも」
アッシュ:「死ねええええええええええええええええええええマーキュリー・シーンんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんん」
マーキュリー・シーン:「ふん」
ドガッ、ガガガガがガガガガガガガガ
ミゼル:(見えないけど、二人の力がぶつかってるのがわかる)
バキバキバキバキ
ミゼル:「ぶつかった力の余波で、周りの景色がどんどん壊れていってる」
アッシュ:「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
バキバキバキバキバキバキバキバキバキバキ
ミゼル:(怒りで周りが見えなくなってる。このままじゃ)
「アッシュ君、やめて。これ以上したらミストレアがっ」
アッシュ:「…………」
ミゼル:「こんなこと、オルランドさんもテレーゼさんも望んでない」
アッシュ:「っ」
マーキュリー・シーン:「………………残念だよ」
ギュュュュュュン
アッシュ:「押し、こまれる」
ミゼル:「アッシュ君」
アッシュ:「ミゼルさん、逃げて」
カルト:「アッシュ……」
ギュュュュュン、ドガァァァァァン
*
ミストレア―外縁
マーキュリー・シーン:「瓦礫の山だな。まあ、元々ガルダーミンクは岩しかない所だからそこまで代わり映えはしないけど」
(アッシュ君に直撃する直前、お互いの神の意図が反発。凝縮された神の意図がその場で大爆発を起こしてミストレア全体を飲み込んだのか)
マーキュリー・シーン:「さすがにこの状況で生きてる者はいないよな………………もう果たせないと思っていた宿願を、ようやく果たすことができたというのに、むなしいものだな」
ツーツー
マーキュリー・シーン:[パルティエナ]
ムーン・パルティエナ:[シン様、いったい今までどこで何をしてたんですか。もう少しこまめに連絡をしてもらわないと、もしシン様の身に何かあったら]
マーキュリー・シーン:[戻ったらすぐにここを出発する、準備をしておいてくれ]
ムーン・パルティェナ:[え……は、はい。わかりました]
マーキュリー・シーン:「…………」
*
???
アッシュ:「ここ、は」
男の声:「ここはお前の意識の中、夢の中といっても差し支えない」
アッシュ:「あなたは」
男の声:「私の名前は、わからない」
アッシュ:「わからない」
男の声:「私は想いの残滓。意思はあっても、記憶はないのです」
アッシュ:「記憶が」
男の声:「あるものが願ったのです。あなたたちを助けてほしいと」
アッシュ:「あるもの」
男の声:「そのものの願いを聞き入れた私は。残る力すべてをあなたに預けました」
アッシュ:「あの力はあなたの」
男の声:「はい、私は残る力すべてをあなたに注ぎ込みました」
アッシュ:「ありがとうございます。あなたが力を貸してくれなかったら」
男の声:「お礼を言う必要はありません」
アッシュ:「で、でも」
男の声:「本当に必要はないのです。私があなたに感謝される資格などただのひとつもないのです。なぜなら私は、あなたにさらに酷な現実を与えてしまったのですから」
アッシュ:「酷な現実」
男の声:「すぐにわかります」
アッシュ:「………………」
男の声:「こうして私があなたの意識に直接話しかけているのは、どうしてもあなたに伝えておきたかったことがあるのです」
アッシュ:「伝えたかった事、それは」
男の声:「愛を、他者を信じることを忘れないでください」
*
瓦礫の山
アッシュ:「ここは、どこだ」
ガシャン
アッシュ:「こんな瓦礫の山、知らない。俺は、さっきまでミストレアに、霧で囲まれた、林とか畑とかある、みんなが笑って怒ってけんかして、キュリスさんとかカルトとかがいる村に、ミゼルさんと一緒に…………ここ、どこだよ」
ゴトッ
アッシュ:「これ、は」
(カルトの)
アッシュ:「嘘、だろ…………うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
(ミゼルさん、カルト、キュリスさん、キュルートさん、みんな、みんな)
アッシュ:「どうして、どうして、また、こうなるんだよ………………」
ズシッ
アッシュ:「っ、お前は」
赤い鎧をまとった大男:「探したぞ、我らが同胞よ」
アッシュ:「同胞」
赤い鎧をまとった大男:「共に行くぞ。世界を変えるため、あるべき姿に戻すために」
アッシュ:「……その世界なら、みんな、みんな笑って暮らせるのか。もうこんな悲劇が起こらない世界になるのか」
赤い鎧をまとった大男:「そのつもりだ」
アッシュ:「………………」
赤い鎧をまとった大男:「この手を取れ。それが唯一お前を生かすために散っていった者たちに報いる方法だ」
アッシュ:「…………わかった」
パシン
*
ガシャッ、ガシャン
金髪の女:「…………ここは」
*
六年後
豪華な広間
位の高そうな法衣を着た男:「ではこれよりサテライト任命式を始める」
パチパチパチパチパチパチパチ
位の高そうな法衣を着た男:「今宵誉れ高いスターズの直属騎士という名誉あるサテライトに任命されるのは一人、ベトレイ・アルシュ。前へ」
観衆の男:「ベトレイって、確か六年前マーズ様がどこかから拾ってきたみなしごの事だろ」
観衆の女:「ええ、そうよ。身寄りがなくて孤児院に引き取られたんだけど十二歳の時に難関の兵士試験に合格。その後数々の戦線で功績をあげて、自分を拾ってくれたマーズ様に恩返しがしたいってサテライトに志願して今日めでたくマーズ様直属のサテライトに任命が決まったのよ」
観衆の男:「すげぇな。身寄りもないみなしごだったのに。今やスターズ直属の騎士かよ」
観衆の女:「よっぽどすごい努力したのね」
観衆の男:「こりゃあ、スターズの皆さまも期待が高いだろ。ようやく新しいスターズが誕生するかもしれないんだからな」
コツコツコツ
観衆の男:「あれが、我らエルダント帝国の期待の新人」
観衆の女:「ふふ、結構かわいい顔じゃない」
位の高そうな法衣を着た男:「ベトレイ・アルシェ」
スタッ
位の高そうな法衣を着た男:「今日この日をもってお主をサテライトの位に任命する。それと共にスターズ、マーズ・ドラクリア直属の騎士へと任命する。研鑽を絶やすことなく帝国のため使命を全うするのだ」
灰色の髪の少年:「はっ、ありがたき幸せ。この命、帝国の繁栄と平和のため捧げていくことをベータ教の神に誓い約束します。我が剣で帝国に栄光を」
観衆:「「おおおおおおおおおおおおおおお」」
神の意図 @maow
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