第8話 間談

フォトナ村-村長家


トルント・アックス:「ぐ、この我にここまでの深手を負わせるとは、あのじじいいったい何者なのだ……」


トルント・アックス:(こんな人気のない森でずっとベータ教の監視から逃れ潜んでいたのだ。ただの木こりではないと思っていたが、まさかこの我に傷を負わせるほどの使い手だったとは、遅れてきた部下たちに森を捜索させているがいまだあのじじいの情報も逃げたやつらの情報も入ってきてはいない。森の中はじじい達の庭のようなものであるからそれも無理からぬことだが)


トルント・アックス:「森の出口はわが軍で塞いでいる、見つけるのも時間の問題である。だがしかし」


トルント・アックス:(この状況は我にとってあまり喜ばしい状況ではないな。標的を捕らえるのは時間の問題とは言え我の勇敢さと忠義を上に示すため部下を置いて単身乗り込んだ結果がこのざまでは。確実に我の立場は危ういものになってしまう)


トルント・アックス:「生きたまま連行するのが上からの命令であったが、致し方ない。余計なことを言われる前にここはわが手であのじじいと逃げた者どもの口を封じて我の正統なる立場を守るしか――」


女の声:「あなたの方もしてやられたようですね、アックス」


トルント・アックス:「ぬ、誰だ、わが神聖な名を気安く呼ぶ不届き者は」


女:「上官の声を忘れたのですか、私ですよ、アックス」


トルント・アックス:「……あ、あなた様はムーン・パルティエナ騎士補佐官様」


トルント・アックス:(な、なぜ、ここにパルティエナ様が、別任務で長く遠方へ行っているはずだったのに)


トルント・アックス:「た、大変失礼しました。お姿が見えなかったのでつい……」


ムーン・パルティエナ:「構いませんよ、任務終わりに立ち寄っただけですから」


トルント・アックス:「そ、そうでありましたか」


トルント・アックス:(ぬうう、これはまずい、じじいどもを殺して部下たちに口止めをすればすべて解決するはずだったが、パルティエナ様の耳に入れば確実に上に報告される。ここは……)


トルント・アックス:「こんな南の端の辺境の村までわざわざパルティエナ様にご足労いただきこのトルント・アックス、感激の極みでございます。しかし、今回の任務わざわざパルティエナ様がお出向きになられなくても――」


ムーン・パルティエナ:「その傷、相当手ひどくやられたようですが」


トルント・アックス:「え、いや、これは、その……」


ムーン・パルティエナ:「はあ、今回の件に私は一切関係していない。たまたま近くで任務を遂行していたあなたたちの様子を確認した後すぐに現場から離脱した。それでいいですね」


トルント・アックス:「な、そ、それは……」


ムーン・パルティエナ:「相手はかなりの手練れのようです。この任務、私も陰から力を貸しましょう」


トルント・アックス:「あ、ありがとうございます。パルティエナ様のご厚意に報いるようこのトルント・アックス身命を賭してこの任務、必ずや遂行させて見せます」


トルント・アックス:(なんだかよくわからないが乗り切れた、らしい。ベータ教の神よ、感謝します)



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