第6話 ダストレイク
ダストレイク―とある店
ミゼル:「ちょっと、これ高すぎじゃないの、こんなにあったらエンジンの部品全部新品にできるわよ。中古なんだしもっと負けなさいよ」
気さくなクモ頭:「おいおい、ミゼル。それでもここらへんじゃ破格の安さだぞ、ほかの店ならこれより品質の悪い奴が平気でこれの二倍ぐらいの値段で売られてるんだ。お前さんは昔なじみの客だから特別に安く売ってやってるっていうのに、そんな風に言われちゃおっさんも悲しいぜ。おーいおいおい」
ミゼル:「やめてよね、ダラン。ただでさえあんた顔が気持ち悪いんだから。そんな気色の悪い顔で泣きつづけたら、周りに気分阻害罪で通報されるわよ」
ダラン:「んな、法律あるわけねえだろ。大体ここら辺にいる奴に人の顔どうこう言われたくねえわ」
ミゼル:「ふふ、確かにね。じゃあ、これ、値札通りの値段で買うからほかの部品もつけてよ、これだけいっぱいあるんだから一つくらい持って行ってもいいでしょ」
ダラン:「しょうがねえな、そこら辺にある奴なら好きなの持って行っていいぞ。ただし、一個だけな」
ミゼル:「わーい、さすがダランふっとっぱらー。」
ダラン:「よせやい、恥ずかしい」
ミゼル:「えっとー、どれにしようかなー、迷っちゃうなー」
ダラン:「どれでも好きなの持って行っていいから早くしろよ。あんまり店ん中にいられるとほかの客に迷惑だからな」
ミゼル:「わかってるわよ、えーとねー、じゃあ、これ」
ダラン:「ああ、好きなの持ってけ……ああん」
ミゼル:「じゃあ、これもらってくね」
ダラン:「ちょちょ、まてミゼル、その部品どこから持ってきたんだ」
ミゼル:「え、普通にここにあったけど」
ダラン:「んなわけねえだろ、そんな高価な部品店の奥の隠し部屋に厳重に…………あ、てめえ」
ミゼル:「ふふ、ダラン、私の職業忘れたの。あの程度の仕掛け、宇宙一かわいいトレジャーハンターの私にかかればおちゃのこさいさいよ」
ダラン:「ぐう。ミゼルてめえ、最初からそのつもりだったな」
ミゼル:「ふふ、これ私が買った部品の代金ね。それじゃあこの部品はサービスとしてもらっていくから。じゃあねダラン、また部品が必要になったら寄るからサービスしてよね……チュ」
ダラン:「二度と来るな、この詐欺師がああああああ………………全く、あの小娘は」
ミゼル:「ふふ、ダランのおかげで思ったより出費せずに済んだわ。部品集めが一番手間取ると思ったけど、意外と早く全部集めることができたわね。これでやっとアークシップの修理に取り掛かれるわ」
アークシップ―船内
ミゼル:「……たっだいまー」
アッシュ:「……ミゼルさん、おかえり、なさい」
ミゼル:「あ、うん……ただいま、アッシュ君」
アッシュ:「食事の準備、できてますよ。よかったら食べてください」
ミゼル:「ありがとう、アッシュ君も一緒に」
アッシュ:「僕は食欲がないので」
ミゼル:「そ、そう」
アッシュ:「じゃあ、僕はまた部屋に戻ってベッドで横になってますね」
ミゼル:「う、うん……アッシュ君」
アッシュ:「なん、ですか」
ミゼル:「あんまり自分を責めないでね」
アッシュ:「………………それじゃあ」
ミゼル:(アッシュ君、あれからずっと部屋に閉じこもってる。外にも出たがらないし、部屋の窓もカーテンで閉め切ってる。あんなに外の世界に興味を持っていたのに。たぶん、オルランドさんたちを見捨てて逃げてきたことを気にしてるんだ)
ミゼル:「……どうすればよかったのよ」
ミゼル:(私の判断は間違ってない。あの時、闘争ではなく逃走を選んだのは間違いなく正しい判断。それが最善。そもそも私とオルランドさんは会って数分の中、そんな人たちのためにいちいち命を懸けてたら命がいくつあったって足りない。私はこんなところで死ぬわけにはいかないの。アークシップのローンだってあるし、やりたいことだってまだたくさん……オルランドさんたちがしてくれたことへのお礼は最低限果たした。あとは壊れたエンジンを修理してほとぼりが冷めたころを見計らってアッシュ君をここより安全な場所に連れていって私の役目は終わり。そこからはまたいままでみたいにあちこちのお宝を求めて旅に……)
ミゼル:「ああ、もう」
ダストレイク―ダランの店
ミゼル:「…………ダランっ」
ダラン:「ミゼル、てめえ、さっきあんなことしておきながら舌の根も乾かねえうちに何しにきやがった」
ミゼル:「タランチュー族に舌なんてないでしょ。それよりダラン聞いて、頼みたいことがあるの」
ダラン:「ああん、どうせろくでもねえ頼みだろ、なんでてめえのお願いを俺が聞いてやらなきゃ――」
ミゼル:「お願い、します」
ダラン:「……」
ミゼル:「あなたにしか頼れないの」
ダラン:「…………話ぐらい聞いてやる、言ってみろ」
ミゼル:「ありがとう、ダラン」
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